個人再生を利用する際に、手放さなくてよい「住宅」とは?

1.手放さなくてよい住宅とは

個人再生をする場合のメリットとしては、住宅資金特別条項というものを利用することによって債務者がマイホームを手放さずにすむということがあります。

これは、個人再生をする場合に個人の債務者が、生活の本拠である「住宅」を手放さずに経済的再生ができるようにするため特別に認められています。

そのため、生活の本拠といえない建物については「住宅」とはいえず、この住宅資金特別条項を使うことができるわけではありません。

「住宅」といえるためには、

①個人である債務者が所有する建物であること
※所有には共有している場合も含まれます②債務者の自己の居住に利用する建物

③建物の床面積3分の1以上に相当する部分であること

④①~③の要件を満たす建物が複数ある場合には、これらの建物のうち、再生債務者が主として居住する用に供する一の建物であること、

という4つの要件をすべて満たすものをいいます。

個人の債務者が所有する以下の7つの建物(①)を通し、「住宅」といえる場合、「住宅」といえない場合を説明します。

(1)所有建物を店舗として利用している場合

所有建物のすべてを店舗として利用している場合には、自己の居住に利用しする(②)とはいえないため「住宅」とはいえません。

お店が居宅をかねている場合で、その居宅の床面積の3分の1以上を自己の居住に利用している場合(②、③)には、「住宅」といえます。

この場合、床面積の3分の1以上を居宅として利用していることを示すために間取り図などを提出することになります。

(2)他人に所有建物を貸している場合

転勤などのように所有建物を一時的に貸しているといえる場合、転勤終了時に自己の居住に利用する(②)ということがいえます。

このような場合(一時使用の賃貸借契約が締結されている場合)には、「住宅」といえるでしょう。

このように、他人に所有建物を貸している場合には、契約内容次第で「住居」であるかどうかが決まります。

(3)離婚の際の合意で、離婚後も元妻と子どもが所有建物に住んでいて、債務者自身は住んでいない場合

この場合、債務者が自己の居住に利用することを予定していません。

そのため、生活の本拠とはいえず、「住宅」とはいません。

ただし、離婚の際の合意内容で、元妻と子どもが転居をするまでの一時的な場所として利用して、転居後は債務者が利用する場合は、自己の居住に利用する(②)といえ、「住宅」といえる場合もあります。

(4)投資用に購入したが、入居者が現れないため現在は自宅として使用している建物の場合

自己の居住に利用する(②)建物として生活の本拠となっているので、「住宅」といえます。

(5)債務者名義で住宅を購入したが、当初から債務者以外の家族だけが居住しており、債務者自身は今後住む予定がない場合

この場合は、債務者自身は今後も住む予定がないため、自己の居住に利用する(②)とはいえません。

そのため「住宅」とはいえません。

(6)所有建物を二世帯住宅として使用している場合

この場合は、債務者の居住部分が床面積の3分の1以上(②、③)であれば「住居」といえます。

(7)建物を2つ所有していて、双方を自宅として利用している場合

どちらかが生活の本拠といえるかによって決まります(④)。

これは生活の本拠である住宅を手放さなければ経済的再生をするのに十分であると考えられているからです。