免責されない借金
1.免責されない借金とは
免責されない借金のことを非免責債権といいます。
自己破産の手続をし、免責許可決定がされると、借金が帳消しになります。
しかし、例外的に、帳消しにならない借金があります。
これを「非免責債権」といいます。
いずれも借金を帳消しにすべきではないという理由で、非免責債権について7つの類型が破産法253条1項に定められています。
それでは、自己破産をしても、借金が帳消しにならない債権である「非免責債権」について詳しくみていくことにしましょう。
2.7つの非免責債権
(1)租税等の請求権(1号)
租税等の請求権は、公益性が高く、徴収を確保する必要性が高いことから、非免責債権とされています。
租税等の請求権とは公的な請求権です。たとえば、固定資産税や住民税や、健康保険税、年金、一部の水道代(下水道料金)が「租税等の請求権」に該当します。
(2)破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権(2号)
この損害賠償請求権は、加害者に対する制裁、被害者救済のために非免責債権とされています。
「悪意」で加えた不法行為に限定されています。
「悪意」といえるためには、積極的な害意の意思が必要と考えられています。
たとえば、破産者が債務超過を認識した上でクレジットカードを利用して、ショッピングをすることや、金融業者からの借入に際して、無断で妻の名前を保証人欄に記載することが「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当します。
(3)破産者が故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(3号)
この損害賠償請求権は、保護の必要性があることから、非免責債権とされています。
たとえば、企業活動にともなう重大な安全管理上の人の身体に対する被害や、危険運転による交通事故被害者の損害賠償請求権が「破産者が故意または重過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」に該当します。
「重過失」といえるためには、単なるわき見運転では足りません。危険運転致死傷罪が成立するような場合がこれに該当し得ます。
(4)破産者が扶養義務者として負担すべき費用に関する請求権(4号)
親族関係に基づく請求権は、人の生存に不可欠なものであり、借金の帳消しを認めるべきではないことから、非免責債権とされています。
たとえば、養育費や婚姻費用分担義務に基づく請求が「破産者が扶養義務者として負担すべき費用に関する請求権」に該当します。
(5)雇用関係にもとづく使用人の請求権(5号)
雇用関係にもとづく使用人の請求権は、雇用主に対する使用人の請求権を保護する観点から非免責債権とされています。
「使用人」とは、破産者と雇用関係にあるものをいいます。
たとえば、サラリーマンの給料が「雇用関係にもとづく使用人の請求権」に該当します。
ただし、財団債権(破産手続によらずに弁済を受けられる債権)として保護されている債権、たとえば破産手続開始前3か月の給料などは、非免責債権には含まれません。
(6)破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権(6号)
債権者名簿に記載のない債権者は、免責について意見をいう機会を奪われることから、破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権は、非免責債権とされています。
破産者が故意に債権者名簿に記載しなかった債権だけではなく、過失で債権者名簿に記載しなかった債権も「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権」に含まれると考えられています。
他方、過失がなく債権者名簿に記載しなかった債権は「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった債権」には含まれません。
なお、破産の事実を知っている債権者は、免責手続に参加することができるため、債権者名簿に記載されなくても、その債権は免責されることになります。
(7)罰金等の請求権(7号)
罰金等の請求権は、刑罰として破産者に負担させるべきものであることから、非免責債権とされています。
たとえば、罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金、過料が「罰金等の請求権」に該当します。
関連記事