免責制度

破産手続とは、債務者の財産から破産債権者に公平かつ最大の満足を与えることを主たる目的としています。

しかし、経済的に破綻した個人の多重債務者が債務の免責を求めて破産手続の申立をする破産手続では、配当に利用できる債務者の財産は一般に僅かであるため、債権者は全く配当を受けられない場合が多いです。

したがって、個人の多重債務者の破産手続では、破産債権者に対する債務について責任を免れて、破産者の経済的更生を図ること(免責制度)が重要な破産手続の目的となっています。

1.免責許可の申立

個人の多重債務者の破産手続では、配当される場合は殆どなく、むしろ免責制度による不利益が想定されるため、債権者による破産申立はまれで、債務者が自己破産の申立をする場合がほとんどです。

そして、破産法上、自己破産の申立により、債務者が反対の意思を表示しない限り、免責申立がされたものとみなされることになっています。

免責申立がされたものとみなされるのは、債務者の通常の意思を勘案し、免責許可申立を債務者が忘れるといったことを防止するためだといわれています。

(1)免責許可の申立後

免責許可申立後、免責手続は、裁判所の調査(管財人がいるときは管財人の調査・報告)、破産債権者等の意見申述期間の設定、裁判所の免責許可決定の順序で行なわれます。

(2)免責許可と不許可

審理の結果、免責不許可事由が無ければ、必ず免責の許可がされます。

免責不許可事由としては、債権者を害する目的での資産を隠すこと、浪費(ブランド品の購入、贅沢な飲食や旅行)・賭博(競馬、パチンコなどのギャンブル)などの射幸行為、免責許可申立前7年以内の免責取得などがあります。

一般に、免責許可の比率は高いです。

しかし、浪費、賭博等の免責不許可事由が認められ、免責許可申立が取り下げられることもあります。

免責不許可事由があれば、不許可決定をすることになりますが、不許可事由があっても、軽微なものであれば、裁量により免責を許可することができ、これを裁量免責といいます。

裁量免責の可能性を検討の際には、破産者が債務を負った事情、免責不許可事由の性質、重大性、破産債権者の態度や意見、破産者の経済的再生に向けた努力や意欲、破産手続への協力の有無や程度などといった事情が総合的に考慮されることになります。

<免責不許可事由についてはこちら>

2.免責許可決定の効果

破産者は原則として、破産債権者に対する債務の全部について責任を免れます。

(1)非免責債権

ただし、一部の債権は非免責債権とされ、免責の効果は及ばないとされています。

非免責債権としては、租税・罰金、破産者の害意により加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、破産者の故意・重過失により加えた人の生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、扶養料や婚姻費用分担の請求権などがあります。

(2)保証人に対する効果

免責の効果は、破産者のみに及び、破産者の保証人には及びません。

保証というのは、債務者の資力が危うくなったときを考慮して利用されるものであるため、免責の効果が保証人にまで及ぶとすると、そもそも保証の意味がなくなってしまうからです。

(3)復権

破産手続開始により、破産者は資格の制限がされます。

破産者は弁護士・公認会計士・弁理士・税理士等になれず、後見人、法人理事等の資格が否定されています。

免責許可決定が確定されると、資格制限が解消されます。