自己破産をしても処分しなくていい財産

自己破産をしても処分しなくて良い財産(自由財産)

(1)自己破産をしても処分しなくて良い財産(自由財産)とは?

自己破産をした場合、原則として破産者の財産は全て処分しなければなりません。

なぜならば、破産手続というのは、破産をする法人(会社)や個人の財産をお金に換えて、債権者に分配する手続だからです。

しかし、個人の破産の場合、全ての財産を処分してしまうと、必要最低限の生活すらままならなくなってしまいます。

個人の破産について、法律は、個人の経済生活の再生を図ることを目的にしていますが、全ての財産を処分することにより生活がままならなくなってしまっては、この目的を達成できません。

そこで、自己破産をしても処分しなくて良い財産として、「自由財産」というものが法律上認められています。

(2)自由財産の種類

自由財産には、以下の5つがあります。

<99万円以下の現金>
預貯金は含まれません。

<差し押さえの対象にならない財産(差押禁止財産)>
テレビ、パソコン、エアコン、タンス、ベッド、衣類などの生活必需品などです。

<破産者が破産手続開始後に取得した財産(新得財産)>
破産手続後に得た給料などです。

<自由財産の拡張がされた財産>
99万円以下の現金、差押禁止財産、新得財産を処分不要とするだけでは、必要最低限の生活ができないと判断される財産です。

<破産管財人により破産財団から放棄された財産>
処分をしようとしても、買い手がつかない財産などです。

なお、放棄するためには、破産管財人が裁判所の許可を得る必要があります。

(3)自由財産の拡張

上記のとおり、①の99万円以下の現金、②差押禁止財産、③新得財産だけでは、必要最低限の生活ができないと判断される財産も自由財産として取り扱われ処分不要とされています。

これは、自由財産の拡張と呼ばれています。

自由財産の拡張の対象となる財産は、各裁判所によって異なります。

(4)東京地裁の運用で処分不要とされている財産

東京地方裁判所では、以下の財産が処分不要とされています。

・残高(複数口座ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金
・見込額(複数口ある場合は合計額)が20万円以下の生命保険解約返戻金債権
・処分見込額が20万円以下の自動車
・居住用家屋の敷金債権
・電話加入権
・支給見込額の8分の1相当額が20万円以下である退職金債権
・支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7
・家財道具

上記のうち預貯金と生命保険解約返戻金については、合計額が20万円を超えると全てが処分の対象財産となるので注意が必要です。

たとえば、A銀行に15万円の預金があり、B銀行に10万円の預金がある場合、合計額が20万円を超えているため、A銀行もB銀行のいずれもが処分の対象となるということです。

このように、東京地裁で、破産手続中に処分をする必要がない財産は、大まかにいうと99万円以下の現金と、20万円以下の資産です。

20万円以上の資産がある方は、そのまま破産の申立をすると、処分をしなければならなくなるため、なるべく現金にしておくという方策をとることが考えられます。