民事再生手続における債権者説明会はどのタイミングでどのように実施すべきか
民事再生手続は、債権者の過半数及び債権額の2分の1以上の同意を得た再生計画案をもとに、再生計画が進められていく手続です。
そのため、再生手続を行う者(以下、「再生債務者」といいます。)は、債権者の再生手続等に関する不信感等を減らし、信頼を得た上で、今後の再生手続についての債権者の理解と協力を得る必要があります。
そのため、債権者に対する情報提供は欠かせないと言って良いです。
今回は、債権者に対する情報提供の場として実施されている「債権者説明会」について、債権者説明会とは何なのか、必ず開催する必要があるのか、開催するとしてどのようなタイミングと場所で行うべきか、どのような内容を説明したら良いのかについて説明していくことにします。
1.債権者説明会とは
債権者説明会とは、文字通り、債権者への情報提供をする趣旨で、開く説明会のことをいいます。
法律上は、債権者説明会では、再生債務者の業務及び財産に関する状況又は再生手続の進行に関する事項について説明するものとされています。
この「債権者説明会」とよく似たものとして、民事再生法には「債権者集会」というのが定められています。
債権者集会は、再生手続が進行した後、今後どのように返済をしていくかを定めた再生計画案について債権者の賛否を問う手続で、申立から通常5ヶ月で実施されます。
このように、債権者集会と債権者説明会とは全く異なります。
2.債権者説明会は必ず実施しなければならないのか
債権者集会は、法律上、必ず実施しなければならないものとされています。
他方で、債権者説明会については、法律上は、必ず実施しなければならないものとはされていません。
しかし、上記のとおり民事再生手続では債権者の理解と協力を得る必要がありますから、実際には必ず実施するべきものであるといえます。
もちろん、再生債務者が個人であり、債権者数も数人程度に過ぎないような例外的な場合には、債権者の意向を確認した上で、債権者説明会の開催を省略する場合もあります。
3.債権者説明会を実施するタイミングと場所
(1)実施するタイミング
そして、債権者説明会は、債権者の不安を早期に払拭して、その協力を得る必要があるといえます。
そのため、債権者説明会を実施するタイミングとしては、再生手続の申立をしてから、数日内に開催するべきであるといえるでしょう。
(2)実施する場所
説明会の場所を確保する必要があります。
そのため、出席する債権者数を予測し、十分に余裕を持った収容人数の会場を予約する必要があります。
会場は、再生債務者の会社内ではなく、貸会議室やホテルなどの外部施設を利用することが多いです。
説明会の会場については、派手な宴会場などは避けて、また混乱をなるべく避けるために個人名や弁護士事務所名義で予約するのが良いでしょう。
民事再生手続を行うには、債権者の理解・協力は不可欠ですから、債権者に対しては、申立をした時点において、申立の事実をFAX等でお知らせすべきですが、このお知らせと同時に、説明会の日程、場所についてお知らせすると再生債務者にとっても、また債権者にとっても簡便でしょう。
そのため、再生手続申立時点で、説明会の会場は予約するなどの早期に対応する必要があります。
債権者が全国にいるという場合には、その趣旨が形式上の説明ではなく、債権者からの理解と協力を得るという目的にあることからすると、一箇所だけではなく、何箇所かで債権者説明会を開くという機会を設けるなどの工夫も必要となるでしょう。
なお、上記のとおり、債権者説明会の実施をすべきかについて法律上は任意なのですが、債権者説明会を実施した場合には、その結果の要旨を裁判所に報告しなければならないとされています。
4.説明する内容について
上記のとおり、債権者説明会では、生債務者の業務及び財産に関する状況又は再生手続の進行に関する事項について説明するものとされています。
そのほかにも、適宜、再生債務者の主たる事業の内容、役員・従業員数、売上高、負債総額、なぜ再生手続を申立したのかについての経緯、清算貸借対照表の概要、再生手続についての説明、再生手続のスケジュール、どのように再建をしていくのかの基本方針の説明、今後の取引条件について説明すると良いでしょう。
上記内容を説明するにあたっては、口頭での説明だけでは理解を得にくいでしょうから、再生手続の開始決定の写しや再生手続にについてわかりやすく説明をした資料を配布することもしなければなりません。
ここでひとつ気をつけなければならないのは、申立の段階では、債権者に対する配当比率が不明確ですから、断定的な回答や言い回しをして、債権者の過度な期待や誤解を与えないようにすることが必要です。
5.説明会前に準備する事項について
上記の内容を説明するために、債権者説明会の実施の前には、前もって準備をしておくことが必要です。
具体的には、会場予約、説明会の案内文作成と債権者に対するFAX等での通知、代表者の挨拶内容の準備、債権者からの質問に備えて想定問答集の作成、配布資料の準備、受付準備(出席者チェック用名簿の作成、受付スタッフの確保)、着座位置の決定などの準備です。
まとめ
今回は、民事再生手続における債権者説明会ついて説明をしました。
債権者説明会を行う場合には、上記の点以外にも問題になる点があります。
早期かつ適切に対処をすることで、円滑に民事再生手続を行なうことができます。
民事再生手続を検討されている法人役員の方は、なるべくお早目に弁護士にご相談されることをおすすめします。
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