アパレル会社の会社破産の特殊性とは?手続の流れや進めるときの注意点について

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

社会に支持される法律事務所であることを目指し、各弁護士一人ひとりが、そしてチームワークで良質な法的支援の提供に努めています。

「アパレル会社を経営していて破産手続を考えている」
「破産するしかないと考えているが先のことが不安」

会社破産を思い立った際に会社経営者の方が不安に思う点は、従業員への対応、債権者への対応、事業停止の時期など様々です。

アパレル会社の場合、主に企画・生産を行い百貨店や小売店等に販売している会社もあれば、他メーカーの商品を仕入れてPR販売することを主としている会社、企画から販売に至るまですべてを自社で行っている会社など、様々な業態があります。

業態に応じて多数の百貨店や小売店等が取引関係にある、在庫の種類や数量や保管場所が多種多様であるなどの特徴があります。

この特徴を踏まえて申立準備を進めていく必要があります。

本記事では、アパレル会社の破産手続で注意すべきポイントと、会社破産手続の主な流れについてご説明します。

1.アパレル会社の破産手続で注意すべきポイント

アパレル会社が破産をするにあたって注意するべきポイントは、在庫品の管理や売掛金の回収など、業態に応じて異なります。

たとえば、在庫品については、在庫は誰のものなのか、保管場所の問題、季節商品の価値の劣化、ブランド品による販売制限などがあげられます。

また、出荷済みの商品があり、まだ代金を受け取っていない場合には、売掛金が発生しているのが通常です。

申立準備段階では、これらを適切に対応して会社財産の流出、劣化を止め、申立に必要な費用や将来の破産財団を確保することが重要になります。

(1)在庫商品を整理する

破産手続の申立準備は、会社資産を把握し、申立費用を確保し、会社資産を散逸・劣化させないよう注意して対応する必要があります。

そのためには、在庫商品を早期に把握し、場合によっては換価換金する必要があります。

まず、会社が保有している在庫について、種類、品名、数量、仕入れ価格などを一覧にしながら確認していきます。

生産も担っているアパレル会社の場合は、完成品の衣類だけでなく、仕掛品や原材料などがあるケースもあります。

また、本社1箇所に保管されているケースもあれば、百貨店などの複数店舗に保管されている場合など、業態によって物品の種類や保管場所は様々です。

破産手続をとることが外部に知れ渡ると、在庫商品は債権者による持ち出しなど散逸の危険が生じることもあるため早期に管理できる状態にする必要があります。

場合によっては、在庫が多く保管場所が確保できない、保管料が嵩むなどの事情により、換価換金し現金にした方がいいケースがあります。

換価作業は、廉価で処分してしまうと破産手続に大きな影響を与えてしまう可能性があるため、申立代理人弁護士主導のもと行う必要があります。

さらに、アパレル会社の場合、商品の取引形態によっては会社資産ではないことも考えられます。

所有権留保、動産譲渡担保、委託販売の対象となっていないかの確認が必要です。

契約書上判然としないことも少なくないため、この点も、弁護士と確認しながら対応していくことをお勧めします。

(2)在庫を処分する時に注意すべきポイント

在庫の処分は、裁判所に廉価処分と見做されると破産手続に大きな影響を与えてしまうため、申立代理人と相談しながら慎重に行う必要があります。

基本的には、買取業者に査定を出してもらい、高く値がついたところに販売することになります。

在庫一掃セールをする、同業者に大量に一括処分するといった手法が有益な場合もあります。

この他、季節商品・ブランド品・キャラクター品の処分には特に注意が必要です。

季節商品は季節を逃すと価値が下落することから、早期に着手する必要があります。

ブランド品やキャラクター品は、ライセンス契約があり販売先が制限されていることがあります。

各内容に留意しながら売却の算段をしていく必要があります。

(3)売掛金を回収する時に注意すべきポイント

百貨店や小売店等にアパレル会社の場合、売掛金の回収を早期に進めなければなりません。

売掛金の回収は、会社の経営難が知れると難航することもあるため注意が必要です。

百貨店や小売店等に売却した商品については、事業停止後は返品や交換などの普段提供できるアフターサービスが見込めない状況となります。

そのため、百貨店や小売店等は、破産手続の準備中であることがわかると、取引基本契約の解除や特約または商慣習による返品を主張してきたり、売買契約が成立していないため売掛金を支払う必要がないというような主張をしてくることがあります。

こういった主張は必ずしも譲らなければならないというわけではありません。

まずは合理的な説明をして売掛金の回収を試みる必要があります。

そのうえで、難航する場合は返品を受けて在庫の換価に動くといった対応が必要となります。

会社破産の申立準備にあたって、売掛金や在庫の処理はもっとも慎重に行うべき点のうちのひとつです。

アパレル会社の破産は、百貨店や小売店等のように利害関係人が多数いる、在庫の種類・数量・保管場所が多種多様であるなどの点が特殊なところと言えます。

ここまではアパレル会社の破産特有の注意すべきポイントについてご紹介しました。

ここからは、会社破産の流れについてご説明します。

2.会社破産の主な流れ

法人破産の流れについてご紹介します。

主な流れは以下のとおりです。

(1)弁護士への相談・依頼

会社破産は、事業停止や解雇の話など、どのようなスケジュールで進めるのかを最初に入念に調整する必要があります。

そのため、事業継続か停止かを悩み始めたら早いうちに弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

(2)破産手続開始申立ての準備

弁護士との契約が済むと、申立の準備が始まります。

破産申立は弁護士が代理して行うことになります。そのため、会社の実印や銀行印、通帳、決算報告書、賃金台帳、事業所の鍵など、会社の資産状況に関する資料や換価手続に必要となる物は弁護士が会社から引き継ぐことになります。

申立準備段階で行うのは主に以下のような作業があります。

  • 受任通知(介入通知)の送付
  • 破産手続開始申立書の作成、書類の収集
  • 財産の保全、引継の準備
  • 従業員への対応
  • 事業所、店舗などの明渡し
  • 取締役会、理事会の承認決議
  • 必要に応じて裁判所との事前相談

(3)破産手続開始の申立・破産管財人の選任・破産手続開始決定

申立準備が整ったら、管轄の申立に破産手続開始の申立をします。

申立をすると、破産管財人を選任し、裁判所は破産手続の開始決定を出します。

(4)破産管財人による管財業務の遂行

破産管財人は選任されると申立書類を精査し管財業務を開始します。

会社代表者や申立代理人弁護士に対しては、破産管財人から以下のような要請がくることもあります。

  • 破産管財人との打合せ
  • 書類、資料の収集、作成への協力
  • 現地調査等への同行、立会

(5)債権者集会・配当手続・破産手続の終結

破産手続の開始決定から約3か月後に債権者集会という期日が設けられます。

申立人は債権者集会に出廷する必要があり、申立代理人は申立人に同行します。

債権者集会は、破産管財人が破産管財業務に関わる重要事項について意思決定をして、債権者に対して破産手続の進行について報告をする場です。

事案に応じて、1回のみで終了する場合、何度か期日を重ねる場合があります。

債権者集会は、債権者も出席することができます。

しかし、金融機関や消費者金融などの債権者が債権者集会に出席してくることはほとんどありません。

そのため、多くのケースで債権者側の出席はないまま進行する傾向にあります。

その後、破産財団が形成される場合は配当手続が行われ、破産手続は終結します。

破産手続申立から破産手続の終了までにかかる期間は最短3か月程度ですが、管財業務の進行に応じて、半年から1年程度を要することもあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

本記事ではアパレル会社の破産手続の特殊な点と注意すべきポイント、そして会社破産の主な流れについてご紹介しました。

破産した場合に従業員はどうなるのか、ご自身はどうなるのか、債権者はどうなるのか、多くの会社代表者の方にとって破産は未知の手続のため、不安に思う方は多いです。

当事務所の弁護士が皆さまの悩みにお答えしつつ、どのような対応をするのかが最適なのかをご提案します。

そもそも破産するかを迷っているという方も含め、まずは当事務所の弁護士にご相談いただければと思います。

執筆者 花吉 直幸 弁護士

所属 第二東京弁護士会

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