水産加工会社などの冷凍室を保有する会社の破産の特殊性
冷凍室を保有しているような会社が破産をする場合、冷凍機などで冷却に用いるアンモニアやフロンなどの熱媒体(「冷媒」といいます。)を適切に処理し、事故や環境を汚染することのないように注意しなければならないところに特殊性があります。
以下では、具体的にどのような危険があるのか、またどのような処理をすべきか等について、簡単に説明していくことにします。
主な冷媒の処理方法
(1)冷媒としてアンモニアが使用されている場合
アンモニアは、窒素と水素の化合物で、可燃性と毒性を持っており、人が吸入することによる呼吸器障害や、皮膚や眼球などに付着する等して傷害を負う危険性があるといわれています。
事業を停止して、冷凍設備の電源を切ってしまうと、アンモニアが漏れ出て人の健康に被害を与えたり、場合によっては爆発するなどして近隣住民に被害を及ぼす危険があります。
そのため、事業を停止する前に、アンモニアを除去する「抜き取り」という作業をすることが必要となります。
量にもよりますが、抜き取りに数百万円以上を要した事例もあるようです。
そのため、申立前に抜き取り作業にどれぐらいの費用がかかるかどうかの見積もりをとること、抜き取り作業を行なえるように十分な資金を確保しておくことが必要です。
(2)冷媒としてフロンが使用されている場合
フロンは、正式にはフルオロカーボンといい、フッ素と炭素の化合物です。
無色無臭の気体又は沸点の低い液体で、無毒で不燃性です。
フロンは、オゾン層を破壊し、地球温暖化に寄与していることから、特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律で規制されています。
この法律の「フロン類」に該当する場合、廃棄の際には都道府県知事の登録を受けたフロン回収業者にフロン類を引き渡すこと、その際にフロン類の回収、破壊等をするのに必要な費用を負担することが必要ですので、処理に必要な資金を確保しなければなりません。
なお、フロン類を適切に処理せず、みだりに放出させた場合には、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科されるおそれがあるので注意が必要です。
(3)冷媒として液体窒素が使用されている場合
液体窒素は、文字通り液体状態の窒素をいいます。
液体窒素は-196℃で沸騰し気化します。
液体窒素を貯めている容器を密閉すると、蒸発した窒素ガスが容器内で圧縮されていき、やがて高圧に耐えることができなくなった容器が破裂を起こす可能性があります。
また、容器を解放して、空気に触れると、空気中の酸素が液化し、液体窒素が液体酸素に置き換えられることもあるようです。
液体酸素は、有機物に触れるだけで、爆発を起こすため非常に危険です。
このように液体窒素を冷媒としている場合には、近隣住民の身体に危険を及ぼすおそれがあります。
そのため、破産会社の工場内における冷却材として、液体窒素のタンクを使用しているような場合には、タンク内に窒素が残留しているかどうかは不明であっても、タンクの撤去をするための資金を確保して、適切にタンクを撤去する必要があるといえます。
今回は、水産加工会社などの冷凍室を保有する会社が破産をする場合の特殊性について説明をしました。
水産加工会社が破産する場合には、上記の点以外にも問題になる点があり、早めに対処をすることで問題点を適切にクリアすることができます。
水産加工会社などの冷凍室を保有する会社の破産を検討されている方はお早目にご相談されることをおすすめします。
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