事業を継続するべきか、破産をするべきかのメルクマール

奨学金の返済に困ったときの任意整理以外の3つの対処法

企業は再建によって経営を継続できれば、雇用が確保され、従業員が突然路頭に迷うということはありません。

企業の経営者としても、通常は再建をしたいという方が多いでしょう。

そこで、経営者に再建したいという気持ちがあるならば、まず再建(法的手続としては民事再生手続と会社更生手続があります。)をすることが可能なのかどうかを見極める必要があります。

再建をすることができない場合には、破産をすることを検討しなければなりません。

今回は、会社を再建することが可能かどうかを判断するためのメルクマールについて、少しだけ詳しく説明していくことにしましょう。

1.再建可能性を判断するためのメルクマール

再建をすることが可能かどうかのメルクマールとしては、以下の(1)~(9)ようなものがあります。

(1)運転資金を確保できるのか

会社を再建するためには、運転資金を確保する必要があります。

運転資金をそもそも確保できないのでは、会社の経営を継続することができず、再建をすることはできません。

(2)営業利益を黒字化できる可能性はあるのか

運転資金を何とか確保できるとしても、事業リストラ等により営業利益を黒字化できる可能性がないのであれば、そもそも返済をすることができません。

(3)申立費用を準備できるのか

再建型の手続のうち会社更生手続や民事再生は、裁判所に納める予納金が高額です。

そのため、そもそも事業を継続していく中で、予納金の確保をしていく余力があるのかという問題がでてきます。

(4)得意先が今後も取引を続けてくれるのか

取引先に支払の猶予や債権の圧縮をお願いする場合には、これまでの会社に対する評価、特に中小企業の場合にはこれまでの取引先との人的関係や経営者に対する評価が大きく関わってきます。

また、事業内容の希少性・非代替性があれば、得意先は取引を続けてくれますが、同業他社がある場合には、今後も取引を確保してくれるとは限りません。

また、取引を続けていくために、仕入資金の確保ができているかどうかも重要です。

(5)主力工場などに抵当権を有している債権者が抵当権を実行しないのか

債権者が抵当権を実行し、主力工場などが競売にかけられてしまった結果、製品を製造することができなくなってしまうと、そもそも事業を行なうことができなくなってしまいます。

そのため、抵当権を実行するリスクがないかを事前に検討しておく必要があります

(6)ノウハウを有する従業員が残ってくれるのか

ノウハウを持っている従業員が辞めてしまっては、事業の再建をすることが困難となってしまいます。

そのため、従業員が残ってくれるかどうかも重要です。

(7)事業計画および弁済計画をたてられるのか。

再建型手続(例えば民事再生手続、会社更生手続)は、通常これまでの負債を圧縮して、圧縮した額を計画通り支払い続けるという手続です。

そのため、再建型手続を考えている場合には、年間の売上、利益を予想し、弁済計画を立てることができるかの検討が必要です。

(8)再建計画に対して債権者の同意を得られるのか。

会社更生手続、民事再生手続においては、返済のスケジュールをたてるために、同意を得る必要があります。

逆にいうと、債権者の同意を得られなければ、再建型手続を進めることは困難です。

(9)経営者に再生の意欲があるのか。

最終的には、経営者に再建をする心構えがあるかが最も重要です。

そのため、例えば経営者が高齢で、もはや経営をするつもりが全くない、後継者もいないという場合には無理に再建をする必要はないということになります。

まとめ

上記の(1)~(9)までの事情を考慮し、個別具体のケースに応じて、それぞれの会社が破産などの清算手続きをとるべきか再建型手続をとるべきかを判断することになります。

ただし、上記メルクマールは、あくまでも参考程度にとどめてください。

会社の再建をすべきか、破産などの清算手続をとるべきかについては、上記メルクマールだけでは把握しきれない事情を考慮して慎重に判断する必要があります。

そのため、具体的に会社を破産させるべきか、それとも再建するべきかお悩みの方は、専門的な知識及び経験を持つ弁護士に早急に相談されることをおすすめします。