建設業法による規制について詳しく解説
1.建設業法とは
建設業は、産業の基盤や日常生活にも深く関与する重要な産業です。
建設業の特色として、①1件ごとに設計や仕様が異なる受注産業であること、②天候等の影響を受けやすい屋外型の産業であること、③工場生産ではなく、現地で工事が行なわれる非装置型の産業であること、④建設業を担っている企業の大半が中小・零細企業であること、といった他の産業にみられない特殊性をもっています。
そのため、戦後の復興景気時には、不正工事の施工等悪質な建設業者が横行し、建設業界全体の信用をおびやかす事態が発生しました。
このような背景をもとに、昭和24年、建設業法は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者及び下請の建設業者を保護することと建設業の健全な発達を促進するために制定されました。
それ以降、時代の要請にそなえて、度重なる改正が行なわれており、特に昭和46年には、建設業の許可制の採用、請負契約の適正化を中心とする改正が行なわれました。
つい最近でも、近年の建設投資の大幅な減少による受注競争の激化により、ダンピング受注や下請けへのしわ寄せ等が発生を防止するための改正が行なわれています。
2.建設業法の対象となる建設工事に該当する業務
建設業とは、建設工事の完成を請け負う営業をいいます。
建設業法は、建設工事の完成を請け負うことを営業とする者に適用されます。
建設業法では、単に発注者から建設工事を請け負って営業をすることのみならず、下請契約に基づき建設工事を下請して営業をすることも含まれます。
なお、軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者であっても、建設業許可を得る必要まではありませんが、建設業法の適用対象とはなると考えられています。
3.建設業法による規制にはどのようなものがあるか
以下の行為は建設業法に違反する可能性があります。
(1)見積もり条件の提示
不明確な工事内容の提示により下請負人に見積もりを行なわせることや、法令で定められた見積期間よりも短い期間で下請負人に見積もりを行なわせること
(2)当初契約
下請工事に関し、書面による契約を行なわないことや、工事着手後又は工事終了後に契約書面を交付すること
(3)追加・変更契約
追加工事又は変更工事が発生したにもかかわらず、書面による変更契約を行なわないこと
(4)工期変更に伴う変更契約
工期の変更に伴い下請工事の費用が増加したにもかかわらず、書面による変更契約を行なわないこと
(5)不当に低い請負代金・指値発注
- 元請負人の一方的な強要により、合理的な根拠もなく、下請負人の見積額や従来の取引価格を著しく下回る額で下請契約を締結すること
- 工事着手後又は工事終了後に下請負人の協議に応じることなく下請代金の額を一方的に決定し、その額で下請契約を締結すること
(6)不当な使用資材等の購入強制
下請契約締結後に、下請工事に使用する資材・購入先等を指定した結果、下請負人が予定していた購入価格よりも高い価格で資材等を購入させること
(7)やり直し工事
元請負人と下請負人の責任及び費用分担を明確にしないままやり直し工事を下請負人に行なわせて、その費用を一方的に下請負人に負担させること
(8)赤伝処理
下請代金の支払の際に、施行時に発生した建設廃棄物の処理費用、銀行振込手数料等を一方的に下請代金から差し引くこと
(9)工期
元請負人の不十分な施行管理等により下請工事の工期が不足した場合に、元請負人が下請負人と協議をすることなく、他の下請負人の下請負契約を締結したことにより発生した費用を一方的に下請負人に負担させること
(10)支払保留
工事目的物の検査、引渡しが終了後、下請負人に対し、長期間にわたり保留金として下請負代金の一部を支払わないこと
(11)長期手形
支払サイトが120日を超える割引困難な長期手形により下請代金を支払うこと
建設業法に違反する場合には独占禁止法にも該当する可能性があり、その場合、公正取引委員会による調査や排除措置命令等の対象となる可能性があります。
建設業法の違反行為に関する指針としては、国道交通省により「建設業法令遵守ガイドライン」というものが公表されています。
なお、平成24年に国土交通省及び中小企業庁が実施した調査によると、建設工事を下請負人に発注したことのあるケースのうち、建設業法に基づく指導をする必要がないと認められるものは、わずか2.4%にとどまっているようです。
下請負人が元請負人からしわ寄せを受けたケースは約14.6%です。しわ寄せの内容は、「工事着手後に契約」が33.1%で最も多く、ついで「書面による契約締結の拒否」が25.1%、「指値による契約」が25.0%だったようです。
今回は、建設業法の内容、建設業法の適用対象となる取引・業者、建設業法による規制について簡単に説明しました。次回以降、建設業法で禁止されている禁止事項等について詳しく解説していきたいと思います。
建設業法の適用対象となるか、建設業法の適用があるとして、具体的にどのように対処すべきかは、具体的な事案によって異なります。
建設業法にまつわる紛争の可能性がある事業者の方、実際にトラブルになっている方は、一日でも早く弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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