著作物の複製、二次的著作物の利用について
1.著作物の複製(著作権法21条)
「複製」は、著作権に含まれる権利のひとつで、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により、著作物を有形的に再製することをいいます。
著作権者の経済活動に密接に関連するため、最も重要な権利といえます。
- CD-R等にソフトウェアをコピーすること
- CD-R等に格納されたソフトウェアをインストールすること
- 言語変換ソフトを使用してソースコードをオブジェクトコードに変換すること
- 実行中のプログラムのメモリダンプ(メモリの内容を出力すること)
このような「複製」は、ライセンサの許諾がない限り、ユーザは行えません。
ライセンサに無断で行った場合、差止請求(著作権法112条)や損害賠償請求(民法709条、著作権法114条)の対象となります。
(1)プログラムの著作物の複製物の所有者による複製(著作権法47条の3)
プログラムの著作物の複製物(CD-R等)の所有者は、自身のPCで利用するために必要と認められる限度において、例外的に著作権者の許諾なく、「複製」をすることが可能です。
例えば、以下のような行為は、著作権者の許諾がなくとも可能です。
- バックアップのための複製
- ハードディスクへのインストール
- プログラムの実行時に生じ得るソースコードからオブジェクトコードへの変換
- デバッグの際のダンプ(バグの内容の出力、手直し)
なお、ソフトウェアの機能変更、独自の機能追加は、複製物の所有者であっても許容されない場合が多いです。
(2)保守・修理のための一時的複製(著作権法47条の4)
保守、修理のために必要と認められる限度において、ソフトウェアを記録媒体へ一時的に記録することは、許容されます。
(3)情報解析のための複製(著作権法47条の7)
情報解析(大量の情報の抽出、比較、分類等の統計的な解析をいいます。)を行うことを目的とする場合、必要と認められる限度において、記録媒体への記録は許容されます。
しかし、ソフトウェア自体、ユーザが情報解析を行うために作成されたもので、データベース化されているときには、許容されません。
(4)著作物の利用に伴う複製(著作権法47条の8)
PCの使用や通信時の情報処理を円滑、かつ、効率的に行うために必要と認められる限度で、著作物を記録媒体への記録することが許容されます。
例えば、ウェブサイト上の映像をブラウザで視聴することや、ネットワークを介して特定少数の端末からアクセスして、当該ソフトウェアを利用することは、許容されます。
2.二次的著作物の利用(著作権法28条)
・「二次的著作物」とは、著作物を翻訳、編曲、変形、脚色、映画化その他翻案(大筋をまね、細かい点を造り変えること)することにより、創作した著作物をいいます。
原著作者と二次的著作物の著作者のいずれも、「二次的著作物」に関する権利を有します。
・IT分野における「二次的著作物」は、翻案(元のソフトウェアをベースにすること)により作成されたソフトウェアをいいます。
ライセンサの許諾がある場合、翻案により作成されたソフトウェアの権利は、ライセンサ(原著作者)とユーザ(二次的著作物の著作者)がいずれも有することになります。
・ユーザが、ライセンサに無断で翻案によりソフトウェアの作成を行った場合、差止請求(著作権法112条)や損害賠償請求(民法709条、著作権法114条)の対象となります。
まとめ
既存のソフトウェアをバージョンアップする場合、バージョンアップ後のソフトウェアは、二次的著作物となります。
バージョンアップ後のソフトウェアを複製する場合、バージョンアップを施したエンジニアのみならず、既存のソフトウェアを開発したエンジニアにも許諾を得る必要があります。
各ソフトウェアにバージョンアップはつきものですから、エンジニアの権利関係(法人、個人)が同一でない場合は、注意が必要です。
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