特定商取引法に基づく表示について解説
事業者がインターネット上で広告して、消費者から申込みを受ける取引は、「通信販売」に該当するため、特定商取引法に基づく表示が必要となります。
1.具体例
(1)事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
事業者の氏名は、商業登記簿上の商号を用います。
業務責任者は代表取締役である必要はありません。
従業員でも大丈夫です。
個人で事業を営んでいる場合でも、通称や屋号の記載は認められていません。
(2)メールアドレス
電子メールで広告を行う場合には、メールアドレスの記載が必要です。
(3)販売価格(役務の対価)
「各商品の購入ページにおいて表示する価格」
各商材に応じて価格が異なることが通常ですので、販売時に表示する価格を参照いただくことが多いです。
(4)対価以外に必要となる費用
「各商品の購入ページにおいて表示する」
送料等、購入者の負担となる費用が対象となります。
販売価格と同様に、購入ページにおいて表示することが一般的です。
(5)代金(対価)の支払時期、方法
「支払時期は利用規約に定める」
支払時期は利用規約に詳細な規定が存在することが多いため、このように表示します。
「支払方法は、クレジット決済とする。」
支払方法はすべて明記します。
一部の支払い方法しか記載しないということは認められていません。
(6)商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
商品の場合
「代金決済手続の完了後速やかに発送する」
役務の提供の場合
「代金決済手続の完了確認後直ちに」
ウェブ上のサービスであれば、市場において代金決済と同時の提供が求められるため、タイムラグが生じるとの誤解のないよう「直ちに」と表示することが一般的です。
(7)返品の特約
「本サイトで販売する商品については、購入手続完了後の返品又はキャンセルを受け付けておりません」
返品を受け付けていないことを明示しない場合、購入者は、商品到着後8日以内であれば、申込みをキャンセル又は契約の解除、返金を求めることができます。
(8)ソフトウェアの動作環境
「動作環境及び必要スペックは、購入ページにおいて表示する」
商品がソフトウェアの場合、動作環境の表示が必要となります。
購入ページでは、OSの種類、CPUの種類、メモリの容量、ハードディスクの空き容量を明記します。
2.インターネットオークションの出品者
事業者は、営利の意思をもって反復継続して取引を行う者をいいます。
インターネットオークションにて、個人が出品するようなケースであっても、出品者が営利の意思をもって反復継続して取引を行う者にはあたることがあります。
営利の意思をもって反復継続して取引を行う者にあたるか否かは、商品の種類、数量、金額をもとに総合的に判断されます。
判断の目安は、以下のとおりです。
(1)商品の種類
同一の商品か(物の種類によって、メーカーやブランドが共通することで同一商品といえる場合、同種の品目であるだけで同一の商品といえる場合があります。)
(2)数量
過去1ヶ月に200点以上、または、一時点において100点以上の商品を新規出品している場合
(3)金額
落札額の合計が、過去1ヶ月に100万円以上である場合
また、営利の意思をもって反復継続して取引を行う者にあたるか否かは、インターネットオークション以外の場における取引も含めて総合的に判断がなされます。
そのため、路面店で物販する事業者が、試験的に単発でインターネットオークションに出品するケースでは、出品した数量や金額にかかわらず、原則として、営利の意思をもって反復継続して取引を行う者にあたり、特定商取引法に基づく表示が必要となります。
3.表示事項
インターネット上で広告する「通信販売」では、消費者は広告の表示を手がかりに選択を行ないます。
そのため、消費者が判断を誤らないために、事業者は、特定商取引法に基づく表示を行ないます。
必要となる表示は以下のとおりです。
- 販売価格(役務の対価)(送料についても表示が必要)
- 代金(対価)の支払い時期、方法
- 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
- 商品(指定権利)の売買契約の申込みの撤回又は解除に関する事項(返品の特約がある場合はその旨含む。)
- 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
- 事業者が法人であって、電子情報処理組織を利用する方法により広告をする場合には、当該販売業者等代表者または通信販売に関する業務の責任者の氏名
- 申込みの有効期限があるときには、その期限
- 販売価格、送料等以外に購入者等が負担すべき金銭があるときには、その内容およびその額
- 商品に隠れた瑕疵がある場合に、販売業者の責任についての定めがあるときは、その内容
- ソフトウェアに関する取引である場合には、そのソフトウェアの動作環境
- 商品の売買契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨及び販売条件
- 商品の販売数量の制限等、特別な販売条件(役務提供条件)があるときには、その内容
- 請求によりカタログ等を別途送付する場合、それが有料であるときには、その金額 電子メールによる商業広告を送る場合には、事業者の電子メールアドレス
(参照:消費者庁・特定商取引法ガイド)
広告スペース等の都合により、上記の表示事項を掲載できない場合もあります。
そのような場合は、メール等により「遅滞なく」上記の表示事項を提供することを表示して、かつ、実際に消費者から請求があった場合に「遅滞なく」提供できる措置を講じている場合には、上記の表示事項を一部省略することができます。
インターネットオークションにて、特定商取引法に基づく表示が頻繁に問題になるのは、オークションという形式が、短期間に消費者による申込みが殺到する構造であるため、「遅延なく」上記の表示事項を提供することが困難であることが要因です。
そのため、インターネットオークションにて出品する事業者は、適切に特定商取引法に基づく表示をするよう心がけるべきといえます。
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