鼻の後遺障害
自賠法施行令の後遺障害等級表上に定められている鼻の後遺障害に関する基準はひとつだけで、鼻に欠損障害と機能障害の両方が生じていることが基準となります。この基準を満たすことにより後遺障害等級の認定を受けることができます。
ただ、欠損障害と機能障害の両方が生じていない場合でも、鼻以外の後遺障害等級が認定される可能性があります。
鼻の欠損障害生じていて、上記の鼻の後遺障害の基準にあてはまらない場合は、「外貌醜状」として認定を受けることができ、鼻の欠損を伴わない機能障害(嗅覚脱失や鼻呼吸困難等)の場合は、等級表上に定めのない「相当等級」という内容により後遺障害等級の認定を受けることができます。
この「相当等級」とは、等級表上に定められた各後遺障害に該当しなくとも、後遺障害に相当すると考えられる場合に認められる等級です。鼻の後遺障害については、嗅覚脱失や鼻呼吸困難が生じている場合に認定される「第12級相当」と、嗅覚減退が生じている場合に認定される「第14級相当」の2つの相当等級があります。
鼻の後遺障害認定基準
等級 | 後遺障害 |
---|---|
第9級5号 | 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
<相当等級>
第12級相当 | 嗅覚脱失又は呼吸困難が存するもの |
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第14級相当 | 嗅覚減退のみが存するもの |
<外貌醜状>
第7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
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第9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
第12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
鼻の後遺障害の判断基準
等級表上の「鼻の欠損」とは、鼻軟骨の全部又は大部分の欠損をいい、「機能に著しい障害を残すもの」とは、嗅覚脱失又は鼻呼吸困難を指します。この2つに該当する場合は、第9級5号が認定されます。
嗅覚障害の検査方法と基準値
嗅覚障害の検査は耳鼻咽喉科で受けることができます。 一般的に広く行われているのは、①のT&Tオルファクトメーターを用いる検査方法ですが、嗅覚脱失の場合は、②の静脈性嗅覚検査の検査所見により後遺障害の認定を受けることもできます。
①T&Tオルファクトメーター
嗅覚障害の検査は、T&Tオルファクトメーターを用いた検査を行います。
T&Tオルファクトメーターとは、検査キットの名称です。「基準臭」という花のにおいやあまいにおい等の5種類、8段階の濃度の薬品があり、それらを細長い濾紙の先端につけて被験者に嗅いでもらう検査方法です。低い濃度から順に嗅いでいき、何のにおいか認知できるようになるまで濃度を上げていきます。何のにおいか認知できた一番低い濃度を「認知域値」として、オルファクトグラムという記録用紙に記録します。
嗅覚障害程度は、この認知域値がいくつかによって判断されます。
認知域値が2.6~5.5の場合は「嗅覚減退」、5.6以上の場合は「嗅覚脱失」と判断されます。
自賠責保険に後遺障害の認定申請を行う際は、後遺障害診断書にオルファクトグラムを添付します。
認知域値 | |
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嗅覚脱失 | 5.6以上 |
嗅覚減退 | 2.6~5.5 |
②静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)
静脈性嗅覚検査とは、アリナミンを静脈に注入し、注入からニンニク臭を感じるまでの時間(潜伏時間)と、感じなくなるまでの時間(持続時間)を計測する検査方法です。
鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残している場合、鼻の後遺障害等級上では、第9級5号が認められます。一方、「鼻の欠損」は醜状障害としては、「外貌に著しい醜状を残すもの」として、第7級12号が該当します。通常後遺障害が2つ以上残った場合は、「併合」という処理が行われますが、この場合は併合するのではなく、上位の第7級12号のみが認定されます。
また、鼻の欠損の他に顔面に瘢痕等が残っている場合は、鼻の欠損と顔面の瘢痕を併せて、その程度により、「単なる醜状」か「相当程度の醜状」か「著しい醜状」のいずれにあたるかを判断することになります。