神経系統の機能又は精神の障害
自賠法施行令に定められている後遺障害等級認定基準は、体の部位や障害の種類を基準として、35個の「系列」に分類されています。その中でも、皆さんが一番ピンとこない系列が、おそらくこの「神経系統の機能又は精神の障害」でしょう。確かに名称としての馴染みはあまりないかもしれませんが、この系列にあてはまる症状はとても多いです。例えば、交通事故による怪我として最も多い、むちうち・捻挫等の疼痛(痛み)等の感覚障害もこの系列です。
したがって、自賠責保険の統計上では、この系列で後遺障害等級の認定を受けている人が最も多く、平成25年度のデータによると、全体の46%を締めています。
「神経系統の機能又は精神の障害」には、その名のとおり「神経系統の機能障害」と「精神の障害」の2つがあります。
「神経系統の機能障害」については、外傷により脳に障害を負ったときや、捻挫や骨折、牽引損傷等により、神経が直接又は間接的に刺激、損傷された場合に生じることが多いです。
「精神の障害」については、「器質性精神障害」(高次脳機能障害)と「非器質性精神障害」の二つがあり、「器質性精神障害」とは、「外部からの物理力が加わって身体組織が変化を起こし、異常状態が発生するもの」と定義付けられています。簡単にいうと、脳外傷を伴う精神障害のことです。これに対し、「非器質性精神障害」は、脳外傷を伴わない精神障害のことを指しますが、自賠責の実務上では、脳外傷を伴う精神障害であっても、XPやMRI等の画像により客観的に判断することができない場合は、「非器質性精神障害」とされます。「非器質性精神障害」の代表的なものとしては、「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」があります。なぜわざわざ「神経系統の機能障害」と「精神の障害」をひとつの系列にまとめているかというと、この二つの障害は併発することがあり、密接な関係にあるためです。
ここでは、「高次脳機能障害」、「非器質性精神障害」、「疼痛等感覚障害」、「脊髄損傷」、「むちうち・捻挫」について説明します。