後遺障害10級、慰謝料相場と逸失利益について

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

この記事の内容を動画で解説しております。

あわせてご視聴いただければと思います。

「後遺障害10級に該当するのはどのような場合か」
「10級に該当する場合、慰謝料はどのくらいもらえるのか」
「逸失利益はどのように算定されるのか」

本記事では、後遺障害10級とされる具体的な症状や、10級と認定された場合の慰謝料相場、逸失利益の計算方法、弁護士に相談するメリットについてご説明いたします。

この記事を読むことで、後遺障害10級にあたるのはどのような場合か、その場合にもらえる慰謝料・逸失利益の金額を知ることができ、今後の保険会社との交渉に向けてお役立てできれば幸いです。

1.後遺障害10級

まずは、後遺障害10級の概要について見ていきましょう。

(1)後遺障害10級とは

交通事故の被害にあって後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害の等級に応じた賠償金を受け取ることができます。

後遺障害の等級は、自賠法の等級表(もっとも重い1級からもっとも軽い14級に分かれています。)にあてはめて等級認定がなされます。

(2)後遺障害10級の認定条件

後遺障害等級の10級は、以下のいずれかに該当する場合に認定されます。

①10級1号(「1眼の視力が0.1以下になったもの」)

事故によって片目の視力が、眼鏡やコンタクトレンズ等で矯正した状態で0.1以下に低下した場合に認定されます。

②10級2号(「正面を見た場合に複視の症状を残すもの」)

複視とは物が二重に見えてしまう症状で、正面を向いた際に複視が生じる場合に認定されます。複視は、乱視とは異なり、眼球のピントを調整する筋肉や神経の部分についての障害です。

③10級3号(「咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの」)

咀嚼機能あるいは言語機能のいずれかに障害が認められる場合に認定されます。

  • 咀嚼機能障害の基準

ごはんや魚など一般的な食材は食べることができるが、噛むのに力がいる食材、例えばせんべいなどについては食べるのが難しくなる程度とされています。

  • 言語機能障害の基準

以下のいずれかの発音ができなくなった状態とされています。

口唇音/ま行音・ぱ行音・ば行音・わ行音、ふ
歯舌音/な行音・た行音・ら行音・ざ行音・しゅ・じゅ・し
口蓋音/か行音・が行音・や行音・ひ・にゅ・ぎゅ・ん
咽頭音/は行音

④10級4号(「14歯以上に対し歯科補綴(しかほてつ)を加えたもの」)

永久歯のうち14本以上が損傷し、差し歯やブリッジ等の治療が必要となった場合に認定されます。

⑤10級5号(「両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの」)

両耳の聴力が低下し、以下のいずれかに該当する場合に認定されます。

  • 両耳の平均純音聴力レベルが50デシベル以上
  • 両耳の平均純音聴力レベルが40デシベル以上であり、最高明瞭度が70%以下

⑥10級6号(「1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの」)

耳を接しないと大声でも聞き取れないほど片耳の聴力が低下した場合に認定されます。具体的には、片耳の平均純音聴力レベルが80デシベル以上、90デシベル未満の場合に認定されます。

⑦10級7号(「1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの」)

片手のおや指か、おや指以外の2本の指の機能を失った場合に認定されます。

「機能を失った」といえる基準として具体的には次のとおりです。

  • 指先から第1関節の間で2分の1以上を欠損する。
  • 指の根元か第2関節の可動域が、通常の2分の1以下に制限される。
  • 親指を立てるなどの動作や、親指を手のひらにつける動作のいずれかの可動域が、通常の2分の1以下に制限される。
  • 神経麻痺が原因で、ものに触れる感覚や痛覚などを完全に喪失する。

⑧10級8号(「1下肢を3センチメートル以上短縮したもの」)

事故による粉砕骨折等によって、片足の長さが事故以前よりも3センチ以上5センチ未満短くなってしまった場合に認定されます。

⑨10級9号(「1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの」)

片方のおや指またはおや指以外のすべての指を失った場合に認定されます。

⑩10級10号(「1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」)

肩、肘、手首の3関節のうち、いずれか1つの関節の可動域が、通常の半分以下に制限された場合に認定されます。

⑪10級11号(「1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」)

股関節、膝、足首の3関節のうち、いずれか1つの関節の可動域が、通常の半分以下に制限された場合に認定されます。

2.後遺障害10級を認定されると追加で請求できる賠償金

後遺障害慰謝料、逸失利益が挙げられます。

以下、具体的に、見ていきましょう。

(1)後遺障害慰謝料

交通事故の被害に遭ってケガを負ってしまった場合、加害者に対しては「入通院慰謝料」を請求することができますが、後遺障害10級と認定された場合、「入通院慰謝料」のほかに、「後遺障害慰謝料」を請求することができます。

それでは、どれほどの慰謝料が支払われるのでしょうか。

①自賠責基準による後遺障害10級の慰謝料相場 

自賠責保険では、後遺障害の等級に応じた定額が定められており、10級と認定された場合には187万円が支払われることとなります。

②任意保険基準による後遺障害10級の慰謝料相場

任意保険基準は、各保険会社の内部基準によるため保険会社によって異なりますが、一般に公開している保険会社の基準を参考にすると、200万円ほどとされています。

③弁護士基準(裁判基準)による後遺障害10級の慰謝料相場

弁護士基準(裁判基準)では、裁判になった場合の基準で算定され、10級では550万円とされています。

このように、後遺障害慰謝料だけでも自賠責基準や任意保険基準と比べて2倍以上も差が出てきますので、加えて入通院慰謝料も併せると、最終的に受け取ることができる金額は3倍以上も差が出てくることが見込まれます。

(2)逸失利益

後遺障害として認定を受けた場合、慰謝料のほかに、逸失利益を請求することもできます。

逸失利益とは、後遺障害を負ったことによって事故前にはできていた労働ができなくなり、収入が減少するために失われる利益のことをいいます。

サラリーマンや自営業のように実際に収入を得ている人に限らず、専業主婦や未成年の学生など無収入の方についても逸失利益は認められる傾向にありますが、個々の事案によっては、労働能力が減少したとはいえないとして、労働能力喪失率について争わる可能性もあります。

(3)逸失利益の計算方法

逸失利益は、次の算式によって計算されます。

逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

ライプニッツ係数とは、将来的に受け取るはずの収入を前倒しで受け取る際に発生する中間利息を控除するための指数です。

労働能力喪失率は、後遺障害10級の場合は原則としては27%とされていますが、個々の事案によっては、上下することもあります。

例えば、30歳で年収400万円の人が事故の被害に遭い、後遺障害等級10級と認定された場合で算定すると、次のように計算されます。

400万円(基礎収入)×27%(労働能力喪失率)×22.1672(ライプニッツ係数)=23,940,3576円

3.後遺障害10級で弁護士に相談するメリット

弁護士に相談することのメリットとしては、後遺障害認定申請のサポートを受けられるということと、受け取る賠償額の増額が見込まれることが挙げられます。

(1)後遺障害認定申請のサポートを受けられる

そもそも後遺障害に該当するかしないか、後遺障害に該当するとしてどの等級に該当するかによって、慰謝料や逸失利益の金額に大きな影響を与えます。

そのため、交通事故によって後遺症が残ってしまったという場合には、症状に応じた適切な等級で認定を受けることが極めて重要です。

後遺障害の等級認定においては、主治医による後遺障害診断書の記載はかなり重要ですが、医師は交通事故における後遺障害の認定手続に精通しているとは限りません。

弁護士であれば、症状に応じた適切な等級の認定を目指して、後遺障害診断書の記載についても具体的なアドバイスをすることができます。

また、既に後遺障害10級の認定を受けている場合でも、より上位の等級の可能性はないのかどうかを見極めたうえで、異議申立を行うべきかどうかについてアドバイスをすることもできます。

(2)受け取る賠償額が増える可能性がある

上記で述べたように、後遺障害10級に該当する場合の慰謝料は、保険会社の基準と弁護士基準とでは、大きな差があります。

弁護士であれば、加害者側に対しては裁判基準で慰謝料の請求を行っていくことになるため、弁護士費用を加味しても最終的に受け取ることになる慰謝料額や逸失利益の額は大きな増額が見込まれます。

まとめ

本記事では、後遺障害10級に該当する症状のほか、後遺障害慰謝料の相場、逸失利益の計算方法、弁護士に相談することのメリットについてご紹介しました。

後遺障害等級が適切に認定されるかどうかによって、受け取ることができる賠償額は大きく異なります。

専門家である弁護士であれば、適切な後遺障害等級の認定や賠償額の算定について、具体的なアドバイスをもらえるため、一度弁護士に相談することをおススメします。

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執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
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どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。