過失割合が10対0の事故において、むちうちだった場合の示談金の相場

執筆者 青山 侑源 弁護士

所属 東京弁護士会

法律トラブルというものは、いつも身近に潜んでいるものです。
はじめのうちは「大したことないだろう」と思っていたことが、そのうち大事になってしまうというケースも多くありますので、少しでも「法律トラブルに巻き込まれたかもしれない」と感じている場合には、お早めにご相談いただくことをおすすめいたします。
法律トラブルへの対処方法や解決方法は、個人の方、法人の方ごとに千差万別ですが、お早めにご相談いただくことで、選べる選択肢も多くなります。
どのような解決方法があなたにとって最適な選択となるのか、一緒に検討していきましょう。

この記事の内容を動画で解説しております。あわせてご視聴いただければと思います。

「過失割合が10対0のときにむちうちの示談金はどのくらいになるのか」
「過失割合が10対0になるのはどのようなときなのか」

交通事故によってむちうちになった方の中には、過失割合が10対0のときの示談金の相場について気になっている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、過失割合が10対0になったときのむちうちの示談金の相場や過失割合が10対0になるケース等についてご紹介します。

1.10対0事故におけるむちうちの計算基準

示談金の相場は計算基準で異なる

示談金の相場は、基準によって異なります。

示談金を算出する際に使われる基準は以下の3パターンです。

自賠責基準 最低限度の補償を目的とした算定基準 120万円が上限
任意保険基準 加害者側の任意保険会社が設ける算定基準 保険会社によって算定基準は異なる
弁護士基準
(裁判基準)
過去の裁判例をもとにした算定基準 一般に上記2つの基準よりも高額となりやすい

加害者が任意保険に加入していない場合は、自賠責基準による最低限度の保障しか受けることができず(不足分は加害者本人に請求することになります。)、確実に受け取れる金額は最も低くなるといえます。

一方、加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険基準で算出した示談金を提案されることになりますが、弁護士基準(裁判基準)の金額よりも少ない金額で提示されるケースが多いです。

弁護士基準(裁判基準)は、過去の裁判例をもとに示談金を交渉することになり、自賠責基準や任意保険基準よりも高い金額を請求することが可能になります。

そのため、最も納得のいく形で示談金を請求するには、弁護士に交渉を依頼し、弁護士基準(裁判基準)での交渉をおすすめします。

少しでも示談金を高くしたい方は、弁護士に相談してみましょう。

2.過失割合が10対0のむちうち事故の示談金相場

過失割合が10対0のときのむちうちの示談金の相場

過失割合が10対0のときの示談金の相場についてご紹介します。

相手方に請求ができるものの一つとして、入通院慰謝料があります。

また、後遺障害等級が認定されると後遺障害慰謝料を追加で請求することが可能です。

それぞれの相場について解説するので、目安として参考にしてみてください。

(1)入通院慰謝料

自賠責基準による入通院慰謝料についてご紹介します。

自賠責基準で入通院慰謝料を計算する方法は以下のとおりです。

【(治療期間もしくは実際に治療した日数×2の少ない方)×4300円】

たとえば、むちうちで治療期間が60日、治療日数が20日の場合、60日>20日×2となるため、この場合の入通院慰謝料は、40×4,300円=172,000円となります。

他方、弁護士基準(裁判基準)により同じケースで算定すると、入通院慰謝料は360,000円となり、自賠責基準と比べて約2倍以上も差が出てきます。

自賠責基準で算出した示談金は最低限の補償になるので、弁護士基準(裁判基準)を採用した場合は、それ以上の金額になることを想定しておきましょう。

(2)後遺障害慰謝料

むちうちの症状でも、場合によっては痛みやしびれが残ってしまうこともあります。

後遺症が残ってしまった場合、後遺障害等級が認定されれば、後遺障害慰謝料を別途請求することが可能です。

むちうちの症状から後遺障害等級が認定されるケースとしては、14級9号または12級13号に該当する傾向があります。

12級 ・自賠責基準:94万円
(2020年3月31日までの事故の場合は93万円)
・弁護士基準:290万円
14級 ・自賠責基準:32万円
・弁護士基準:110万円

認定される等級が12級か14級かで、請求できる金額に大きな差が出るので、どちらの等級に該当する可能性が高いのか確認しておきましょう。

なお、以下の記事で14級に認定される基準についてまとめているので、詳しく知りたい方はご参照ください。

後遺障害14級はどのくらいの金額を請求できる?計算式と目安の慰謝料

3.10対0の過失割合が生じる可能性のあるケース

過失割合が10対0になる可能性があるケース

過失割合が10対0になる可能性があるケースについてご紹介します。

以下のケースに該当する場合に被害者の過失が0になる可能性が高いです。

  1. 加害車両のセンターライン越え
  2. 加害車両の信号無視
  3. 追突
  4. 被害者が歩行者や自転車

(1)センターライン越え

通常の道路交通において、逆走というのは非常に危険な行為です。

そのため、対向車がセンターラインを越えて走行した場合に起きた事故は、センターラインを越えた側が過失割合10になるケースがほとんどです。

ただし、路上駐車車両を避けるためなど、センターラインを超えることが予見できる場合には被害者側にも一定の過失が生じる場合があるため、注意が必要です。

(2)信号無視

信号は交通安全のために信頼されるべきものです。

そのため、交差点で一方が信号を守り、もう一方が信号無視をして起きた事故の場合は、信号無視をした側が過失割合10になります。

右左折用の矢印信号の場合でも同様です。

(3)追突事故

追突事故も10対0の典型例の一つです。

追突した側の車の過失割合が10で、追突された車は無過失となります。

後方車は前方車と十分な車間距離をとらなければならず、前方不注意により追突した場合は、後方車の過失割合が10となります。

ほかにも、駐車中に追突されたり、信号待ちで停車中に追突されたケースは過失割合が10対0となることが多いです。

ただし、追突された側が急ブレーキをしたり不適切なハンドル操作をしたことが原因で起こった場合は、被害者にも一定の過失が認められます。

(4)被害者が歩行者や自転車

被害者が歩行者や自転車の場合は、自動車側の過失割合が10になる可能性が高いです。

たとえば、以下のようなケースは自動車側が大きな責任を負うことになります。

  • 歩行者・自転車が青信号の横断歩道を渡っているとき
  • 歩行者が信号機のない横断歩道を渡っているとき

青信号で渡っている歩行者・自転車や信号機のない横断歩道を渡っている歩行者は、基本的には過失は0になる傾向があります。

ただし、双方が青信号のときや歩行者・自転車が信号無視をしたとき、また横断歩道ではない場所を渡っているときに事故に巻き込まれた場合は、被害者にも一定の過失が認められることがあるので注意しましょう。

4.過失割合10対0の事故時の注意点

過失割合が10対0のときの注意点

過失割合が10対0のときに注意しなければならないことがあります。

被害者に過失がない場合は、被害者が加入している任意保険は示談交渉に介入することがありません。

そのため、被害者自ら加害者側と示談交渉を行うことになります。

示談交渉では、過失割合が10対0の場合でも、加害者側の保険会社は示談金を抑えようと不利な提案をしてくることがあるので、場合によっては増額交渉が必要です。

相手保険会社が提案した示談内容にその場で了承するのは控え、納得がいかない場合には弁護士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

過失割合が10対0になるケースはいくつかありますが、被害者に過失がない場合でも示談交渉が必要です。

たとえ被害者側の過失割合が0でも、相手の保険会社はなるべく支出を抑えるために、被害者にとって有利な内容を提示することは少ないです。

示談内容に納得がいかない場合は、その場で応じるのではなく、一度持ち帰って冷静に見直すようにしましょう。

少しでも有利に示談交渉を進めたい方は、弁護士に相談するのがおすすめです。

弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で受け付けているので、示談金でお困りの方は遠慮なくご相談ください。

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執筆者 青山 侑源 弁護士

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