著作物とはどういったもの?著作者に認められる権利について
著作権法は、著作物に関する権利やこれに隣接する権利の保護を図ることで、「文化の発展に寄与することを目的とする」法律です(法1条)。
1.著作物とは
著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます。
アイデアそのものではなく、それを創作的に表現しているもので、かつ、芸術性があることが要件です。
具体的には、下記のようなものが例示されています(法10条)。
- 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
- 音楽の著作物
- 舞踊又は無言劇の著作物
- 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
- 建築の著作物
- 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
- 映画の著作物
- 写真の著作物
- プログラムの著作物
2.著作者に認められる権利
「著作者」とは、「著作物を創作する者」をいいます。
複数の者が共同で著作物を創作した場合は、その複数の者が、著作物についての共同著作者となります。
(1)例外としての職務著作(法15条)
会社内では、会社のイニシアチブで従業員が職務上、著作物を創作することが多くあります。
この場合、例外的に、著作者は、その法人となることがあります。 これは、従業員が創作したものでも、その著作物に関する社会的な責任は会社が負うこととなる社会的実態に基づく制度です。 職務著作が成立すると、従業員ではなく、その法人が著作者となり、著作者人格権や著作権を有することになります。 |
著作者には、著作物を創作したときに、著作者人格権と著作権が帰属します。
これには特別な手続を要しません。
(2)著作者人格権
著作者の著作物に対する人格的利益をいいます。
法律上は、公表権、氏名表示権、同一性保持権が定められています。
この中でも、同一性保持権とは、著作者の意に反して創作物の改変をされない権利をいいます。
著作者人格権は、著作権とは異なり、譲渡することができません。
(3)著作権
著作者の財産的利益を保護する権利です。
財産的利益ですから、譲渡の対象となります。
したがって、ソフトウェア開発やホームページ製作の契約上、ユーザー側としては著作権の譲渡を盛り込む方が有利といえます。
著作権は、次の支分権から構成されます。
複製権、上演・演奏権、上映権、公衆送信権、公の伝達権、口述権、展示権、頒布権、譲渡件、貸与権、翻訳権・翻案権、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利 |
3.著作権の制限
著作物を著作権者の許諾無く利用すると、著作権侵害となります。
著作権侵害を避けるには、著作権者に許諾料を支払うなどによって許諾を貰うことが必要となります。
もっとも、一定の場合には、著作権者の許諾なしに著作物を利用することができます。
そのいくつかを説明します。
(1)引用(法32条1項)
公表された著作物は、一定の要件の下で引用して利用することが出来ます。
- 公表された著作物であること
- 引用であること(明確に区別でき、主従関係あることとする見解もある)
- 公正な慣行に合致すること
- 報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われること
(2)検討の過程における利用(法30の3)
例えば、キャラクターを利用した新商品の企画に際して、そのキャラクターの著作権者から許諾を得る前に、プレゼン資料の中にそのキャラクターを掲載する行為は、著作権者が新商品の企画に許諾をしていれば、許されます。著作物の利用の必要性が認められるためです。
- 著作権者の許諾を得て、又は裁定を受けていること
- 検討の過程における利用が目的であること
- その必要性が認められること
(3)私的使用のための複製
「個人的に又は家庭内その他これに順ずる限られた範囲内において使用する」ために著作物を複製することは、例外的に認められています(法30条1項)。
したがって、会社内で業務上、書籍の著作物をPDF化して管理する行為は、この例外には当たらず、著作権侵害となる可能性が高いでしょう。
4.侵害に対する救済
ここまでは、誤って著作権を侵害しないための内容でした。
それでは、貴社の著作権が侵害された場合は、どのような救済措置があるのでしょうか。
(1)差止請求権
著作権等を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対して、その侵害の停止又は予防を請求することができます(法112条1項)。
「侵害」とは、著作権者に無断で著作物を複製したり(著作権侵害)、著作物を無断で改変されたり(著作者人格権侵害)した場合であり、著作物の毀損などは含まれません。
(2)損害賠償請求権
著作権等が侵害された場合、民法上の規定(709条)に基づき、損害賠償を請求することができます。
通常、損害賠償請求をなす場合、請求者に損害及び損害額の証明について責任があります。
もっとも、著作権等の侵害の場合、損害額の推定規定があります(法114条)。
そのため、実際に損害額を証明できなくとも、推定規定により算出された損害額に基づき損害賠償請求を行うことが出来ます。
これは、著作権等の侵害の場合、侵害行為がされても著作物の利用は可能であることから積極的に損害が生じることは考えにくく、むしろ将来的な損失(侵害行為が無ければ得られたであろう利益の減少)が実際の損害と考えられます。しかし、将来的な損失は算出が困難であることによります。
社内で日常的に行われていることやこれから企画されていることが、他社の著作権等の侵害に該当しないか、また、他社の行為が貴社の著作権等を侵害していないか、お悩みの中小企業の方は、一度弁護士にご相談されることをお勧めします。
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