交通事故の過失割合でもめる場合の対処法とは?

執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
しかし、相談を躊躇されて皆様の不安を解消できないことは私にとっては残念でなりません。
私は、柔和に皆様との会話を重ね、解決への道筋を示させていただきます。
是非とも皆様の不安を解消するお手伝いをさせてください。

「過失割合でどうしてもめるのか知りたい」
「交通事故で相手と過失割合でもめて、どうしたらいいいかわからない」

交通事故で過失割合が争点となった場合、相手方ともめる場合が少なくありません。

もっとも、経験上、自動車同士の事故であれば、追突事故のように、追突した車に一方的な前方不注視がある場合等を除き、車双方に過失割合が発生してしまう場合が多いというのが実情だと思います。

本記事では交通事故で相手と過失割合でもめてしまう理由と対処方法のほか、過失割合でもめた際に生じるトラブルや相手との示談交渉での注意点を説明します。

1.交通事故で相手と過失割合でもめるケースとは

交通事故の際には、示談交渉などの中で過失割合がしばしば争われます。

主に以下のようなケースでもめる場合があります。

(1)客観的な証拠が不十分である場合

例えば、信号機のある交差点での出会い頭の衝突事故で、双方が相手方の信号が赤であったと主張する事故、又は交差点の信号がいずれも赤を表示している状態の場合(いわゆる赤赤事故)、ドライブレコーダーや防犯カメラの映像により信号機の色が確認できないと、信号機の色そのものを証明できる証拠がないこととなります。

このように、客観的な証拠が不十分な場合、過失割合でもめることが少なくありません。

(2)自身が支払う損害額が高額の場合

車同士の事故であれば、被害者の自動車だけでなく、加害者の自動車に対しても損傷が生じることになります。

そして、被害者にも過失割合が出る事故の場合、加害者に対し、その過失割合に相当する分の修理費用(又は時価額)を賠償しなければなりません。

特に、被害者が自転車・加害者が自動車で、被害者側に対物賠償責任保険がないという場合があります。

例えば、過失割合が自転車側2割、自動車側8割で、損害額が自転車側1万円、自動車側が10万円だったとします。

この場合、双方の過失割合に相当する損害額を負担することとなりますから、自動車側は8,000円であるのに対して、自転車側は2万円となり、自転車側が12,000円負担しなければならないということとなります。

このような場合、被害者としては、当然、被害事故なのに自分が賠償金を支払わなければならないことに納得されないため、過失割合でもめることとなるのです。

2.交通事故で相手方と過失割合でもめた場合の対処法

以下、交通事故で相手方と過失割合でもめた場合の対処法をご紹介します。

(1)できる限り客観的な証拠を集める

まず、過失割合の交渉の際には、事故状況を直接証明できる証拠や、事故状況を推認できる証拠が重要となります。

代表的なものを見ていきましょう。

#1:ドライブレコーダー・防犯カメラの映像

事故状況そのものを証明できるドライブレコーダーが撮影した映像や、周辺の防犯カメラが撮影した映像は、特に重要だということができます(※こうした映像が入手できる場合は、通常、過失割合でもめることは多くありません。)。

これらの映像は、一定期間経過後に、上書き・削除されてしまうことが多いでしょうから、できる限り速やかに入手しておくことが望ましいでしょう。

事故後、自動車は、修理工場へ移動されてしまう場合が少なくないでしょうから、ドライブレコーダーの映像は、事故直後にスマートフォンで撮影しておく等の方法により、保存しておくべきでしょう。

また、事故現場付近に防犯カメラが設置されており、防犯カメラが道路状況を撮影している可能性があります。

このような映像も、事故そのものを映していれば、事故状況を直接証明することが可能となります。

ただし、経験上、防犯カメラの管理会社から、警察や弁護士からの開示依頼でないと開示できないと言われることも多いです。

#2:自車・相手車の物損資料

ドライブレコーダーの映像のような事故状況そのものを撮影したものがない場合、事故による痕跡が重要な証拠となります。

まず、挙げられるものとしては、自車や相手車の物損資料です。

具体的には、双方車両の損傷写真が挙げられます。

そのためには、入庫先の修理工事において、修理前の自動車の損傷箇所の写真撮影を行っていただき、カラー写真を入手することが大切です(通常、撮影されていると思います。)。

これにより確認できる損傷状況が重要な証拠となり得ます。

例えば、傷は、入力方向から「線から面」「浅くから深く」「薄くから濃く」なるといわれていますので、擦過痕が確認できれば、事故時点での車の動静を証明できる可能性があります。

#3:刑事記録

また、警察によって作成される刑事記録も重要です。

特に、事故後、人身事故扱いにしている場合、実況見分調書というものが作成されます。

実況見分調書には事故現場、路面状況、事故当事者の指示・説明等が記載されることから、過失割合の交渉又は裁判となった際にも有益な証拠となります(本記事の趣旨とは外れますが、交通事故により負傷した場合は、人身事故への切り替え手続を行うべきでしょう。)。

#4:目撃者の証言

なお、よく相談の際に、目撃者がおり、「私が証言しますよ」などと言っている、目撃者の連絡先も教えてもらっている等の話をされることがあります。

こうした目撃者の証言も証拠となり得ます。

もっとも、記憶は、時間とともに変容していくものです。

特に、専ら目撃者の証言に基づいて事故態様を証明しようとする場合は、できる限り速やかに目撃者の証言を書面化(作成日や、目撃者が事故を目撃した時の目撃者の位置、その際の周辺の状況等、できる限り事故当時の生々しさを残しておく。)しておくことが望ましいといえます。

(2)弁護士に相談・依頼する

上記のような証拠を取得できたとしても、適切に主張ができなければ交渉を有利に進めることができません。

また、弁護士ではないと取得できない証拠もあります。

弁護士に相談・依頼することで、過失割合の交渉を有利に進めることができる場合は多いといえるでしょう。

3.過失割合でもめた場合生じるトラブル

それでは、過失割合でもめた場合生じるトラブルとしては、どのようなものが挙げられるでしょうか。

いくつか見ていきましょう。

(1)示談にかかる時間が長引く

示談交渉は、双方の損害額と過失割合が決まり次第、成立することとなります。

過失割合に争いがある場合は、解決までの時間がかかる場合が少なくありません。

(2)代車費用の負担が増える

修理工場から、「過失割合が決まってからでないと修理に着工することができない」と言われたために、修理が進められていない例もありますが、これは誤りです。

特に、修理を進めずに、修理工場から代車費用を借りている場合、代車費用のみがかかっており、裁判でも回収することが難しくなってしまいます。

まずは、修理を行っていただき、一旦全額を立て替えるか、修理工場に待っていただくことが必要でしょう。

4.相手方と過失割合の交渉する際の注意点

それでは、相手方と過失割合の交渉をする際の注意点としては、どのようなものが挙げられるでしょうか。

(1)過失割合に関する証拠は早期に提示する

まず、過失割合に関する証拠は、早期に提出しましょう。

例えば、自車の写真を提供しておらず、事故態様が相手方において違った見方がされてしまっている場合もあります。

容易に入手できるものについては、早期に解決するためにも、早期に提出されることをおすすめします。

(2)相手方の保険会社に過失割合の根拠を説明してもらう

相手方の保険会社の担当者に対して、過失割合の根拠を説明してもらいましょう。

過失割合は、実務上、別冊判例タイムズ38号(令和4年10月現在)という書籍の記載を前提として交渉が行われています。

「過去の裁判例に照らして」等という説明になっていない説明をされている方も少なくありませんが、通常、別冊判例タイムズに基づいた過失割合の提示がされている場合が多いです。

ですので、相手方の保険会社から過失割合の話が出てきた場合は、別冊判例タイムズの該当箇所のコピーを貰う等して、そもそも前提としている事故状況に誤りがないか、基本となる過失割合に誤りがないか(不当な主張がされていないか)確認をするべきでしょう。

(3)過失割合は警察が判断するものではない

「警察にゼロヒャクの事故と言われた」と言われ、警察の意見にこだわってしまう方も中にはいます。

しかし、経験上、警察官は、民事の過失割合に詳しいことはありません。

また、被害者に代わって過失割合の交渉を行うこともできませんから、警察の意見にこだわるべきではなく、警察官の見解だけによって過失割合の交渉を有利に進めることはできないというべきでしょう。

(4)相手方の保険会社の担当者に必要以上に強く当たることは控える

過失割合の交渉の際、保険会社の担当者に必要以上に強く当たることは控えましょう。

まれにですが、保険会社の担当者に対し、自分は悪くないと強く当たれば、過失割合の交渉を有利に進めることができると思われる方もいるかもしれません。

しかし、これは明確な誤りであり、過失割合は事故状況から客観的に決まるものです。

必要以上に強い対応を行っていると、保険会社の担当者から弁護士に委任される場合もあります。

弁護士は、感情的な申し出をされた場合、裁判を提起するでしょうから、裁判対応が必要となる等の負担が増えることもあります。

また、あまりにも過剰な対応は、交通事故被害者といえども、加害者又は保険会社担当者に対する強要罪又は恐喝罪となり得ますから、注意が必要です。

(5)事故後の対応は原則として過失割合に影響しない

「事故後、謝罪されなかった」や「事故後、加害者が立ち去ろうとしたため、引きとめた」といった話をされることが少なくありません。

この点、過失割合は、事故が発生した原因への寄与度によって決定するものです。

このような事故後の態度・行動は、過失割合では考慮されないこととなります(特に悪質なものが怪我に対する賠償の際、慰謝料の算定の上で考慮される可能性があるにすぎません。)。

まとめ

本記事では、交通事故で相手と過失割合でもめるケースと対処方法のほか、もめた場合生じるトラブルや相手との過失割合の交渉時に注意することをご紹介しました。

経験上、保険会社の担当者は、過失割合について契約者のためになっていないようなものが少なくないように思われます。

専門家である弁護士に相談することで、相手と過失割合でもめた状況でも、事故直後から示談成立まで被害者に寄り添い、被害者が納得のいく解決ができるでしょう。

冷静に落ち着いて対処できるよう、弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 大塚 慎也 弁護士

所属 埼玉弁護士会

弁護士相談は敷居が高い、そういう風に思われている方も多いかと思います。
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