交通事故の過失割合が9対1とは?納得できない場合の対処法について

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

交通事故の過失割合が9対1ってどういうこと?」
「過失割合はどうやって決まるの?」

交通事故に遭われた方の中には、示談交渉などにおいてこのような用語が出てきたときに疑問を抱く方もいるかと思います。

本記事では、交通事故における過失割合の決まり方、過失割合9対1の具体的な事例や、納得がいかない場合の対処法を説明します。

この記事を読んで、交通事故の過失割合の考え方を知っていただければ幸いです。

1.過失割合9対1の決まり方

交通事故における過失割合とはどういうものなのか、どのように決められるのかなどについてご説明します。

(1)過失割合とは

交通事故が発生したときに、事故の原因ないし損害の発生・拡大に被害者の過失が関与している場合、損害を与えた側がすべての損害を負担するのは公平ではなく、損害を公平に分担すべきであるという考え方から、過失のある被害者の損害賠償が減額される制度があり、これを過失相殺といいます(民法722条2項)。

過失割合とは、交通事故が発生した場合に、公平の原則と協働の精神から、損害の公平な分担を実現するために、どの程度過失相殺されるべきかを割合で示したものです。

過失相殺の程度(過失割合、具体的に何パーセント過失相殺されるのか)は、法律上明文で定められているわけではなく、これまでの裁判例をもとに、最終的には裁判官が判断することになります。

この蓄積された裁判例は類型化されており、訴訟に至る事件に限らず、訴訟外の示談や各種仲裁・斡旋手続においても参照されています。

このように、交通事故の事件解決には、裁判例を把握して主張を組み立てることが大切になります。

弁護士法人みずきは、数多くの過失割合が問題になる訴訟を経験しており、事務所として知見を多く蓄積しています。

当事務所は、交通事故のご相談を無料で承っておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

(2)交通事故での過失割合9対1の事例

以下では、交通事故での基本過失割合が9対1の事例を、それぞれの自動車、自転車、バイクという異なった車両についてみていきましょう。

基本過失割合の意味は、(3)でご説明します。

#1:自動車対自動車

(別冊判例タイムズ38号105図)

信号機により交通整理の行われていない交差点において、自動車同士が出合い頭に衝突した場合で、一方の自動車が走行していた道路が優先道路である場合は、基本過失割合が9対1になります。

この場合の優先道路とは、道路標識等により優先道路として指定されているもの及び当該交差点において当該道路における車両の走行を規制する道路標識等による中央線又は車両通行帯が設けられている道路をいいます(道路交通法36条2項)。

この場合、優先道路を通行していた自動車の基本過失割合が1になります。

優先道路を通行している自動車には徐行義務はありませんが(道路交通法42条1号かっこ書き)、その場合でも交差点内を通行するときの注意義務(道路交通法36条4項)は依然として要求されています。

また、具体的事故の場面では優先車にも前方不注視、若干の速度違反等何らかの過失が肯定されることが多いことから、このような基本過失割合が設けられています。

#2:自動車対自転車

(別冊判例タイムズ38号245図)

信号機により交通整理の行われていない交差点において、自動車と自転車が出合い頭に衝突した場合で、自転車が走行していた道路が優先道路である場合は、基本過失割合が9対1になります。 

この場合の優先道路の定義は、ケース1と同じです。

この場合、優先道路を通行していた自転車の基本過失割合が1になります。

その理由は、ケース1と同じです。

#3:自動車対バイク

(別冊判例タイムズ38号171図)

信号機により交通整理の行われていない交差点において、自動車とバイクが出合い頭に衝突した場合で、バイクが走行していた道路が優先道路である場合は、基本過失割合が9対1になります。

この場合の優先道路の定義は、ケース1と同じです。

この場合、優先道路を通行していたバイクの基本過失割合1になります。

その理由は、ケース1と同じです。

(3)交通事故における過失割合の判断基準

過失割合を決める事情には様々なものがあり、交通事故があるたびにすべての事情を検討して過失割合を決めるのでは、解決までに時間がかかってしまいます。

そこで、裁判実務では、大量の同種事案を公平かつ迅速に処理するために、類型化・基準化された考え方に従って、過失割合が定められています。

#1: 過去の判例が基準となる

交通事故の過失割合は、過去の判例の積み重ねが基準となっています。

交通事故の過失割合を決める際、多くの場合は「別冊判例タイムズ38号」が示す過失割合の認定・判断基準に依拠し、個々の事案について、当該事故における基本過失割合等と修正要素の有無等を検討することにより認定されています。

この「別冊判例タイムズ38号」は、裁判所が、それまでの裁判例の積み重ねから、民事交通訴訟における過失割合の認定・判断基準についての考え方をまとめたもので、事故類型や事故態様・道路状況等に応じて基準(基本の過失割合)が示されています。

ただし、この基準が絶対的なものというわけではありません。

被害者側は、公平性確保の観点から、基本の過失割合を修正すべき個別具体的な事情を主張することができます。

たとえば、自動車と歩行者との事故については、歩行者(被害者)が幼児・児童・高齢者である場合や、運転者(加害者)が居眠り運転・無免許運転等の重過失が認められる場合には、過失割合は減算修正されます。

他方、夜間や幹線道路での事故の場合、や歩行者に過失(事故の直前直後の横断等)がある場合には、過失割合は加算修正されます。

このように、過去の判例を基準として基本過失割合を当てはめつつ、個別具体的な事情に応じてそれを修正することにより、具体的・最終的な過失割合が定められます。

「別冊判例タイムズ38号」も、同書に掲載されている過失相殺は、あくまでも事故類型ごとに想定した事故態様に応じた一応の目安を示しているものであって、紛争の解決に当たっては、事案の個別・具体的な内容に応じて、適宜修正要素等も加味しながら、妥当な過失相殺率を求めるべきである、としています。

#2: 具体的な過失割合は話し合いによって決まる

#1でご説明したように、過失割合については類型化が行われており、これに当該事故を当てはめることによって、その事故における当事者の過失割合を決めることができるようになっています。

しかし、当該事故についての具体的な過失割合を決めるには、当該交通事故の相手方との話し合いが必要になります。

自身の過失割合が小さければ小さいほど、相手方に請求できる損害賠償額は大きくなりますから、交通事故の当事者は、自分に有利なように事故状況を説明します。

また、そもそもお互いが説明している事故状況が違うと、どの類型にあてはめればよいか自体を決めることができません。

保険に加入していれば保険会社の担当者が交渉してくれることもありますが、事実を主張するのは当事者である以上、解決にはなりません。

保険会社の担当者も交通事故を専門に扱ってはいますが、過失割合の修正要素などの話になると相手を説得するのは難しいこともあるのです。

相手方が強硬的な場合、ご自身側の保険会社の担当者が、解決のために、譲歩した過失割合を検討するよう提案してくることもあります。

このように交渉が困難なことがありますが、具体的な過失割合は、話し合いによって決まるのです。

2.被害者側に過失があると損害賠償金が減額される

被害者本人に過失が認められる場合に、過失割合が加算されることについては、当然とされており、被害者が死亡して相続人が損害賠償請求する場合には、被相続人である被害者本人の過失も斟酌されます(最判昭和31年7月20日民集10巻8号1079号)。

もっとも、過失割合が定められて行われる過失相殺の「過失」とは、「被害者の社会生活上の落度ないし不注意を含む被害者側の事情」を意味するため、ここにいう被害者側の範囲が問題になります。

この被害者側に含まれる者に過失があると、被害者本人の過失と同一視され、損害賠償金が減額されます。

一般に、「被害者側」の過失とは、「被害者と身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられるような関係にある者の過失」をいいます(最判昭和42年6月27日民集21巻6号1507頁)。

「被害者側」の過失が斟酌されるのは、加害者がいったん被害者に損害の全額を支払った後に被害者側に求償するという求償の循環を避ける必要があること、及び、被害者が取得した損害賠償を実質的に被害者側の人間が費消することになるのは公平の理念に反すること等が実質的な理由です。

このため、代表的には、次に挙げる者の過失が、被害者側の過失として斟酌され得ると考えられています。

しかし、実際の事故において、その者が「被害者側」に含まれるかどうかは、個々の事案により異なりますので、注意が必要です。

被害者側に含まれるもの

  • 監督義務者である父母
  • 配偶者・内縁配偶者
  • その他の親族
  • 雇用関係にある被用者
  • 保母等
  • 同僚、友人

たとえば、親族が運転する車に同乗していた者の怪我に関する損害賠償金は、運転していた親族の過失が、「被害者側の過失」として斟酌されることになります。

この場合、被害者側にあたるか否かは、同居の有無や生計を一にしているか、同乗に至る経緯等、具体的な身分関係ないし生活関係を総合判断し、実際上求償の循環が行われるか等の観点から一体性が判断されます。

3.過失割合9対1に納得がいかない場合の対処法

相手方に過失割合が9対1といわれ納得がいかない場合は、次の各点を参考にしてみましょう。

(1)弁護士に相談する

早めに弁護士に相談することをお勧めします。

たとえば、証拠について、周囲に防犯カメラが設置されていて映像が残っているかもしれないという場合、それが決定的な証拠になり得るかどうか、どのように保存すればよいかなどについて相談することができます。

また、仮に、すでに相手方から過失割合が9対1と提示されていたとしても、事故の状況を弁護士に説明し、弁護士からその過失割合が妥当かどうかのアドバイスを受けることができます。

さらに、弁護士に依頼すれば、当事者では気が付かない証拠等を見つけたり、修正要素の検討を通じて、より有利な過失割合を認めさせたりすることができる場合があります。

このように、弁護士に依頼することのメリットは多くありますので、早めに弁護士に相談することをお勧めします。

(2)修正要素を主張するための具体的な根拠を準備する

客観的な証拠を集めることは、過失割合に関する交渉を有利に進めるために重要なことです。

ドライブレコーダーや周囲の防犯カメラなど、事故状況が撮影された映像があれば、事故状況についての争いを有利に進めることができる可能性があります。

また、目撃者がいれば、その証言を得ることも重要な証拠になります。

もし映像や証言者がいないときは、車両の損傷状況から、事故が起きた時のお互いの車両の位置や速度などを推定できることがあります。

このように、個別具体的な事故に即した修正要素を主張するために、具体的な証拠を収集し、準備することが大切です。

まとめ

本記事では、交通事故で加害者側の保険会社から過失割合9対1を提示された場合の決まり方や過失割合に納得がいかない場合の対処法もご紹介しました。

交通事故において過失割合は、損害賠償額を請求する際に重要となる材料ですので、納得がいかない場合は弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきでは、交通事故に関する相談を無料で承っております。お気軽にご相談ください。

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執筆者 実成 圭司 弁護士

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