交通事故紛争処理センターとは?業務内容から利点や活用方法まで
「交通事故紛争処理センターというものの利用方法やかかる費用を知りたい」
「交通事故紛争処理センターで納得いくような解決ができる?」
交通事故の被害について調べて、交通事故紛争処理センターという制度のことを知った方もいるかと思います。
交通事故紛争処理センターは、自動車事故の損害賠償についての紛争の解決のために設立され、それら紛争に関する法律相談、和解あっ旋および審査を行っている組織です。
これを利用することにより、裁判を提起するよりも早期に十分な補償を受けられるケースもあります。
本記事では、交通事故紛争処理センター利用の流れや、メリット・デメリットについてご説明します。
この記事を読んで、交通事故紛争処理センターを利用するかどうかを決める参考にしていただければ幸いです。
1.交通事故紛争処理センターとは
交通事故紛争処理センターは、自動車事故の被害者と加害者または加害者が契約する保険会社・共済組合との間の示談についての紛争を解決するために、法律相談、和解あっ旋および審査手続の各業務を無料で行っています。
これらの業務においては、センターが選任した相談担当弁護士が、中立公正な立場で対応にあたります。
なお、センターでは以下のような紛争は対象外であることに注意が必要です。
- 加害者が自動車(原動機付自転車を含む)でない、自転車と歩行者、自転車と自転車の事故による紛争
- 被害者自身が契約している保険会社・共済組合との間の保険金、共済金の支払に関する紛争
- 自賠責保険・共済の後遺障害の等級認定・有無責等に関する紛争
- 求償に関する紛争
- 加害者の保険会社等が不明の場合
センターが行う業務の内容・利用の流れは次のとおりです。
(1)交通事故紛争処理センターの業務内容
センターでは、紛争解決のために、法律相談、和解あっ旋、審査手続の3つの手続が用意されています。
順にご説明します。
#1:法律相談
法律相談では、和解あっ旋を前提とした相談が行われます。
相談担当弁護士が申立人と面接し、その主張の聴取、提出資料の確認を行ったうえで、問題点の整理や助言を行います。
加害者側保険会社等は、その次の期日から出席し、和解あっ旋に移行します。
なお、物損のみの場合や被害者側に代理人弁護士がついている場合は、法律相談を行わず、初回から和解あっ旋の期日となります。
相談の結果、内容が和解あっ旋に適さない場合は、訴訟等の手続や、弁護士会等別の相談機関を紹介し、相談のみで終了する場合もあります。
#2:和解あっ旋
和解あっ旋が適すると判断された場合、センターから加害者側保険会社等に来所が要請され、当事者双方が出席する期日が決められ、和解あっ旋が行われます。
初回から和解あっ旋が行われる場合は、被害者側が、加害者側保険会社等へ、初回期日の連絡・出席の依頼を行う場合もあります。
和解あっ旋期日では、双方が出席の上、相談担当弁護士が交互に双方の主張を聞き、和解のための解決方法をまとめていきます。
この際には、過去の裁判例をもとに裁判になった場合はどのような結果となるかも踏まえ、当事者に対して和解の説得が行われます。
つまり、裁判所の基準をもとにして和解に向けた話し合いが行われるのです。
解決方法がまとまったら、相談担当弁護士は、あっ旋案としてまとめ、当事者双方に提示します。
このあっ旋案を当事者双方が受け入れた場合は和解成立となり、紛争は解決となります。
あっ旋案に対する同意が得られず、和解成立の見込みがない場合には、和解あっ旋は不調となり終了し、当事者双方にそのことが通知されます。
#3:審査手続
和解あっ旋が不調となった通知を受けた場合、その時から14日以内に当事者のいずれかが審査に付すことを申し立てることにより、審査手続に移行します。
この場合、加害者側保険会社等が審査を申し立てる場合に限り、被害者の同意が必要です。
審査手続に移行すると、法律学者、裁判官経験者、経験ある弁護士で構成された審査会での審査が行われます。
この審査においては、争点や事故の状況などについて当事者双方からあらためて説明を受け、審査員の合議により結論を示す裁定が行われます。
被害者は、裁定の告知を受けてから14日以内に、同意または不同意をセンターに回答する必要があります。
被害者が同意した場合、加害者の保険会社等は裁定に拘束されることになっていますので、示談が成立することになります。
被害者が不同意の場合、示談は成立せず、センターでの手続は終了することになります。
#4:コロナ禍における原則電話対応
以上のとおり、センターにおける手続は、出席すべき当事者が来所した上で行われるのが本来の形です。
しかし、昨今の新型コロナウイルスの流行に対する措置として、センターではすべての手続を、センターと当事者を電話でつないで行う方法(電話会議)によることとしました。
令和4年10月現在もこの措置が継続されているため、当面の間、各手続はこの電話会議の方法によることになります。
具体的には、当事者がセンターに来所することはなく、決められた期日にセンターからの電話を受け、そのまま相談担当弁護士や審査員と遠隔でやり取りを行うことになります。
(2)交通事故紛争処理センターの利用の流れ
センターを利用する場合の手続の原則的な流れは以下のようになります。
#1:電話予約
センターを利用する場合、必ず電話での予約が必要になります。
#2:必要書類の準備・送付
予約が受け付けられると、センターから利用申込書・利用規定が送付されます。
被害者は初回期日までに、申立書の作成、関連資料の準備をすることになります。
#3:初回法律相談
予約によって決められた期日に出席し、相談担当弁護士による面接相談が行われます。
この時、申立書や関連資料を提出することになります。
相談の結果、和解あっ旋に進むことになった場合は、和解あっ旋の期日が決められます。
#4:和解あっ旋
決められた期日に、被害者・加害者側保険会社等の双方が出席し、和解あっ旋期日が開催されます。
この期日は1か月弱の間をおいて複数回行われることもあります。
双方があっ旋案に同意すれば和解成立により手続は終了します。
#5:審査申立て
和解あっ旋が不調に終わった場合、被害者が希望するときは審査会への審査申立てを行います。
#6:審査手続
審査会による審査を経て裁定が行われます。
被害者が裁定に同意した場合には示談成立により、不同意の場合はセンターでの取扱終了により、それぞれ手続が終了します。
2.交通事故紛争処理センター利用のメリット
センターを利用するメリットには、以下のようなものがあります。
(1)無料で利用できる
センターの手続を利用する際に、手数料は必要ありません。
訴訟等、裁判所を通した手続を行う際には印紙、郵券など、裁判所に手数料等を納める必要がありますが、センター利用の場合は不要です。
金銭的な負担がないのは大きなメリットといえるでしょう。
(2)裁判手続よりも迅速な解決を期待できる
センターのウェブサイトにある統計によれば、資料が整えば、人身事故の場合は3回の期日で70%以上、5回の期日で90%以上が和解成立となり、物損事故の場合は通常2回で取り扱いが終了しているとされています。
(参照:法律相談、和解あっ旋および審査の流れ | 交通事故紛争処理センター (jcstad.or.jp))
期日が複数回行われる場合、その間隔は、1か月程度ですので、上記の統計に従えば、人身事故の場合、70%以上が3か月程度、90%以上が5か月程度で終了するということになります。
訴訟になれば半年以上の期間がかかることに比べると、センター利用の方が解決までの時間が短いといえます。
実際に当事務所でセンターを利用した事件でも、申立から3か月程度で解決に至っているものが大半です。
(3)公平な判断を受けられる
センターの手続においては、相談担当弁護士、審査会が中立的な立場に立って、和解のあっ旋、審査手続を行います。
また、その際には過去の裁判例をもとにした案が作成されることになります。
そのため、裁判手続と同様、客観的に妥当な判断を受けることができます。
加害者側の保険会社を相手にする場合、被害者との間には知識等に差がありますが、センターを利用する場合は、上記のとおり中立的な相談担当弁護士からの助言も受けられますので、直接交渉する場合の不利をある程度解消することもできます。
(4)被害者側に有利に扱われる場合がある
審査手続が行われる場合、裁定結果に不満があっても加害者側保険会社は不同意とすることができません。
被害者側に有利な裁定結果となった場合に、それが覆される心配がない点は被害者を有利に取り扱っているということができます。
3.交通事故紛争処理センター利用のデメリット
センターの利用については、以下のようなデメリットもあります。
(1)被害者自身による申立ては負担が大きい
センター利用の場合、申立書の作成、資料の準備を行う必要があります。
資料については損害に関するものをすべてそろえることになり、不足していると不利なあっ旋案等が出されることにもなりかねません。
資料の準備が十分か、被害者自身で判断するのはなかなか難しいものがあります。
また、被害者自身で手続を進める場合、現在の電話会議の方法による運用でも、平日日中に行われる期日において電話で連絡をとりあう時間を確保する必要があります。
仕事がある場合、その時間の確保も困難なことがあります。
(2)センター利用に適さない場合がある
センターの手続においては、双方の過失割合についての主張が大きく食い違っているケースや、後遺障害等級に争いがあるケースなど、細かな事情についての紛争となっており利用に適さないケースがあります。
場合によっては、加害者側保険会社等との間での争点がセンターでの解決に適しているかどうかを判断するのが難しいケースもあります。
このような場合、せっかく資料をそろえて申し立てたものの相談のみで終了してしまったという事態になる可能性もあります。
4.弁護士への依頼によるデメリットの解決
以上のように、センターを利用する場合も、被害者自身には負担となったり、利用が適しているか判断がしづらかったりするというデメリットがあります。
これらのデメリットについては、弁護士に依頼することにより解決することができます。
弁護士に依頼すれば、申立書等の準備も期日への出席も被害者に代わって行うことができます。
また、経験豊富な弁護士であればセンター利用が適しているかについても専門的知識を生かして判断し、センター利用も含めた適切な手段を選ぶことができます。
センターを利用するか迷っている場合は、少なくとも、一度弁護士に相談されることをおすすめします。
まとめ
本記事では、交通事故紛争処理センターの手続、利用の流れ、メリット・デメリットについてご説明しました。
センターでの手続は、中立的な判断を受けることができ、裁判手続に比べ、迅速・簡易なものといえます。
しかしながら、申立書等の準備や出席など、被害者自身の負担は必ずしも小さいとは言えません。
センターを利用してよいのかの判断も含め、交通事故の経験のある弁護士に一度相談されることをおすすめします。
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