有期労働契約に関する労働契約法改正
有期労働契約に関する改正労働契約法によって、今年2018年4月1日から、実際に有期労働契約の無期労働契約への転換の申込みなど影響が出てきていると思われます。
もっとも、改正労働契約法の施行自体は5年以上も前であり、聞いたことはあるもののまだ対策を採られていない企業もまだあるのではないかと思います。
そこで、改正のポイントを改めて確認していきましょう。
1 改正のポイント~3つの新たなルール
- 無期労働契約への転換
- 「雇止め法理」の法定化
- 不合理な労働条件の禁止
2 ①無期労働契約への転換(第18条)
有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者に無期労働契約転換の申込権が発生します。
労働者から申込権の行使(口頭でも可)があれば、会社はこれを承諾したとみなされ、無期労働契約に転換します。
転換の時期は、申込み時点での有期労働契約が終了する翌日からです。
なお、有期労働契約とその次の有期労働契約との間に、契約が無い空白期間が6ヶ月以上あるとき(クーリング期間)は、通算期間に含めません。
解雇権濫用法理が適用されるため、解雇について、「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない場合」には、解雇は無効となります。
労働条件は、別段の定めがない限り、従前の有期労働契約と同一となります。別段の定めとは、労働協約、就業規則、個別の合意などです。
3 ②雇止め法理の法定化(19条)
雇止めとは、会社が有期労働契約の更新を拒否することです。
「有期」ですから、民法上の原則としては、更新の拒否に特段の理由は要されません。
しかし、これに制限をかけるのが判例上構築されてきた「雇止め法理」です。
雇止め法理とは、有期労働契約であっても解雇権濫用法理を類推適用することで、合理的理由のない雇止めは無効と判断されることをいいます。
改正労働契約法では、これが明文化されました。
- 過去に反復更新された有期労働契約で、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
- 労働者において、有期労働契約の契約期間の満了時に契約更新されるとものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
これらのいずれかに該当すると、従前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されることになります。
4 ③不合理な労働条件の禁止(20条)
改正労働契約法は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、契約期間が有期か無期であるかによって不合理に労働条件に差をつけることを禁止するものです。
対象となる労働条件は、一切の労働条件及び待遇です。
- 職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)
- 当該職務の内容及び配置の変更の範囲
- その他の事情
を考慮して、個々の労働条件ごとに判断されます。
では、よくある、定年後、有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件について、定年前の他の無期契約労働者の労働条件との間に相違を設けることは、どのように考えるべきでしょうか。
定年後も定年前と同じ業務内容で責任も変わらないなどであれば、労働条件に相違があることは不合理と判断されるでしょう。
もっとも、一般的には、定年後は、業務内容や責任の範囲に縮小が伴っているでしょうから、一定の相違が生じていても、特段の事情がない限りは不合理とは判断されないと考えられます。
もっとも、通勤手当、食堂の利用、安全管理などについての相違は、特段の理由が無い限り、不合理な労働条件となると解されています。
以上のように、今回取り上げた改正労働契約法の基本的な考え方は、有期契約労働者保護の観点からの改正でした。もっとも、労働者のモチベーションを上手く引き出すことにもつながるため、上手に対応すれば会社にもメリットはあります。
まだ改正労働契約法に対応していない企業の方は、今後の対策を検討されるにあたり、一度弁護士へ相談されることをお勧めします。
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