債務整理をした後にローンが組めるのはいつから?審査通過のポイント

債務整理をしたあとローンが組めるのはいつから?審査通過のポイント

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

債務整理をすると「車や住宅の購入時にローンが組めないのでは」と不安になりますよね。

確かに、債務整理をすると一定期間ローンの審査を通過できなくなります。

この記事ではなぜ債務整理をするとローンが組めなくなるのか、また、債務整理をした後にいつからローンが組めるようになるのかなどについて詳しく解説します。

債務整理をした後、ローンへの影響が一定期間あることは事実ですが、それ以降一切ローンが組めなくなるわけではありません。

少しの間我慢をすることになっても、経済的再生に必要な場合や債務整理をするメリットが大きい場合には、前向きに手続を進めることを考えるべきです。

1.債務整理による影響

債務整理後は住宅や車のローンを組めなくなりますが、ほかにもカードローンやクレジットカードの審査にも通過できなくなります。

なぜなら、延滞や債務整理の事実は信用情報機関に「事故情報」として登録されてしまい、審査対象者の返済能力が十分でないとみなされてしまうからです。

債務整理による影響について、チェックしておきたいポイントは以下の2つです。

チェックポイント
  • 事故情報が信用情報機関に登録される
  • クレジットカードやキャッシングが利用できなくなる

それぞれ順番に解説していきます。

(1)事故情報が信用情報機関に登録される

延滞や債務整理をした事実は「信用情報機関」に登録されます。

信用情報機関とはローンの契約情報や取引情報など、加盟店から登録された個人の情報などを管理および保有している機関です。

日本における信用情報機関としては、以下の3つがあります。

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

ほとんどの消費者金融や金融機関、信販会社などはこの3つの信用情報機関のうちいずれかに加盟しています。

個人からローンの申込みがあると、加盟店は審査のために信用情報機関に照会をします。

その時点で申込者の信用情報に延滞等の事実や債務整理などの「事故情報」を発見した場合、貸倒れのリスクを回避するために審査を否決することになります。

以上のような仕組みで、債務整理をするとローンを組めなくなるのです。

一般的に、この状態は「ブラックリスト入り」と呼ばれます。

(2)クレジットカードやキャッシングが利用できなくなる

信用情報機関の加盟店が個人の信用情報を照会するのは、ローンの契約時だけではありません。

たとえば、クレジットカードの新規発行時や増額時の審査でも信用情報機関への照会が行われます。

つまり、債務整理をしたあとはクレジットカードを利用することができなくなるのです。

なお、利用中のクレジットカード会社を債権者として債務整理の対象に含めた場合には、当然ながら強制解約されます。

もし債務整理に含めなかったとしても、いずれはカードの更新時に行われる再審査によって利用停止や強制解約になる可能性があるので、注意しておきましょう。

2.債務整理後いつからローンを組めるのか

債務整理をするとローンが組めなくなりますが、信用情報機関に事故情報が登録されているのは一定期間だけなので、将来的にはローンを組めるようになります。

もう一度ローンを組めるようになるまでにかかる時間は、債務整理の手続方法によって異なります。

ただし、最低でも5年はかかると理解しておきましょう。

債務整理の手続方法別に、信用情報機関から事故情報が削除されるまでに、最長でどれくらいかかるかについてまとめると、以下の表のようになります。

手続方法 事故情報削除までの時間
任意整理 完済から5年
自己破産 破産手続開始決定の日から10年
個人再生 個人再生手続開始決定の日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方
再計算すると過払金が生じていた場合 すぐにローンを組める

それぞれ詳しく確認していきましょう。

(1)任意整理は完済から5年

「任意整理」とは裁判所を介さずに、債権者である金融機関と直接交渉して借金の総額を減らす方法です。

債務が発生した時まで遡って金利を再計算することで利息をカットしたり、月の分割支払金額を下げたうえで返済期間を延長したりします。

なお、実際に和解交渉をするのは弁護士や司法書士などの代理人です。

任意整理を行った場合、信用情報機関から事故情報が削除されるのは、債務の完済から5年後です。

ただし、JICCは、2019年9月30日以前の契約については、任意整理のための受任通知が送られた日から5年後に事故情報を削除する運用となっています。

そのため、任意整理なら最短で手続の開始から5年、最長で完済後5年経てばローンを組むことが可能です。

(2)個人再生と自己破産は最長10年

債務整理のうち、「個人再生」と「自己破産」は裁判所を通して借金の減額、あるいは免除を行う方法です。

この場合、事故情報の履歴が削除されるまでにかかる期間は信用情報機関によって以下のような違いがあります。

信用情報機関 自己破産 個人再生
株式会社シー・アイ・シー(CIC) 免責許可決定の確定日から5年 完済から5年
株式会社日本信用情報機構(JICC) 免責許可決定の確定日から5年
(ただし、2019年9月30日以前の契約は破産手続開始決定日から5年)
完済から5年
(ただし、2019年9月30日以前の契約は個人再生手続開始決定日から5年)
全国銀行個人信用情報センター(KSC) 破産手続開始決定日から10年 個人再生手続開始決定日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方

KSCの加盟店の多くは銀行系の金融機関なので、銀行が取り扱うことの多い住宅ローンや銀行系マイカーローンだと個人再生と自己破産をした後10年はローン審査に通過できません。

(3)過払金が生じていることが再計算でわかった場合

2010年6月17日以前から借金をしている場合は、過払金が発生している可能性があります。

もしも引き直し計算によって過払いになっていた場合にはすでに完済されているということになるため、すぐにローンを組むことができます。

ただし、次のようなケースでは、信用情報機関に事故情報として記録され、ブラックリスト入りしてしまう場合もあるので注意しておきましょう。

  • 引き直し計算をして過払金を差し引いても負債が残った場合
  • 過払金が発生していないほかの債権者にも弁護士が受任通知を送付する場合

過払金が発生している可能性がある人は、借入期間や借入残高などを覚えている範囲でなるべく弁護士に伝え、ブラックリスト入りしない方法ですすめられるのが望ましいといえます。

3.債務整理後にローン審査を受ける際の注意点

信用情報の回復後の注意点

債務整理の事実等の事故情報は、一定の期間が経過すれば信用情報機関から削除されます。

しかし、事故情報が削除されたあとでも、必ずローンの審査が通るわけではありません。

ローンを利用する会社によっては、半永久的に審査に通過しない場合や借金の履歴があると信用力が低いとみなされる場合もないとはいえないからです。

ここからは、債務整理後にローンを組むため、審査を受けるにあたって注意すべき点について解説します。

(1)信用情報の開示請求をし事故情報がないか確認する

事故情報が削除されるタイミングは、信用情報機関や債務整理の手続によって異なります。

また、金融機関と信用情報機関の連絡がうまくいっていないことにより、事故情報の保管期間経過後も記録が残っている場合もあります。

そこで、ローンの審査を受ける前に自分自身の信用情報を開示しておくとよいでしょう。

情報を開示すれば審査に影響を及ぼす情報が登録されているかどうか確認可能です。

各信用情報機関に対する情報開示請求の方法についてまとめると、以下の表のようになります。

信用情報機関 情報開示請求の方法 開示請求手数料
株式会社シー・アイ・シー(CIC) インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
株式会社日本信用情報機構(JICC) インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
全国銀行個人信用情報センター(KSC) 郵送のみ受付 ¥1,000

出典:情報開示とは|指定信用情報機関のCIC
信用情報の確認 |日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関
本人開示の手続き | 全国銀行個人信用情報センター | 一般社団法人 全国銀行協会

債務整理をした債権者がどの信用情報機関に加盟しているかわからない場合は、3つの機関全てに開示請求をする必要があります。

もし、保管期間が経過しているにもかかわらず情報が残っていた場合には、その金融機関に連絡し、信用情報機関への情報登録をしてもらわなければならないこともあります。

(2)債務整理をした金融機関や貸金業者は避ける

債務整理の対象に含めた金融機関や貸金業者を利用することは避けるべきです。

なぜなら、事故情報を社内で管理している場合があるからです。

この場合、信用情報機関から事故情報が消えていたとしても社内でブラックリスト対象者(通称:社内ブラック)として記録されています。

この場合、系列会社へ事故情報が共有されていることも考えられます。

社内ブラックになっている場合は、半永久的にローンの審査に通らない可能性があると考えておくことも必要です。

そのため、債務整理をした金融機関や貸金業者、および系列会社にはローン申込みの対象から外した方がよいでしょう。

(3)頭金をなるべく多めにする

与信に関する一般的な事柄だと思いますが、債務整理後に家や車など高額な商品を購入するためにローンを組むのであれば、頭金が多いほど信用力が高いといえると思います。

ローンの審査では頭金なしの状態よりも、頭金が少しでもある人のほうが有利なので、債務整理後は先のことを見越した貯金を心がけましょう。

(4)借金がない状態にしておく

債務整理後にローンを組むためには、借金を避けることも重要です。

なぜなら、ローンの審査では年収や勤続年数などのほか、借金の有無も確認されるからです。

とくに住宅ローンは、年収に対して年間返済額が占める割合を示す返済比率を重視していると思いますので、住宅ローン以外の借金が多いほど審査に不利になると思います。

教育ローンや車のローンなど利用目的や返済額が明確な借金であれば、それ以外の借金より影響は大きくありません。

しかし、消費者金融やクレジットカードのキャッシングなど、資金使途が不透明な借金は審査担当者によい印象を持たれません。

もとより債務整理は借金の影響を少なくして生活を立て直し、借金に頼らない生活を送るようにするためのものです。

住宅ローンの審査のために限らず、債務整理後一定期間が経過し、カードローンを組んだりクレジットカードを利用したりできるようになったからといって、安易に利用するのはおすすめできません。

まとめ

債務整理をしたことや延滞があったことは、事故情報として信用情報機関に登録されるため、ローンを組むことは困難になります。

しかし、債務整理によって借金の負担が軽減できるメリットは経済的再起に向けて非常に大きく、事故情報が登録されるのも一定期間です。

一時的に不便にはなりますが、再び借金を増やすことがなくなるため、返済に集中できるとも言えます。

債務整理をしたとしても、いずれはローンを組めるようになるので、ローン審査に通過しやすくなるためにも頭金を貯める努力をすることが経済的再起に向けて重要です。

ローンへの影響が一時的なものだと理解しておくと、債務整理をするために一歩踏み出せるようになるのではないでしょうか。

一定期間の与信上のデメリットを受けるとしても、借金の悩みから1日でも早く解放され、経済的に再起することをおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。