フランチャイズ契約に必要な契約書とは?加盟契約書作成時に本部が注意すべきことを弁護士が解説

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。

「フランチャイズ契約を締結する際に必要な契約書に記載すべき事項は何か?」
「フランチャイズ契約を締結する際の注意点について知りたい」

本記事では、フランチャイズ契約書に必要な記載事項や、契約締結時の注意点などについて解説します。

この記事を読んで、フランチャイズ契約書の記載事項や契約締結時の注意点を把握し、契約締結後に円滑な事業展開を進めていくための参考となれば幸いです。

1.フランチャイズ契約に必要な書面とは

フランチャイズ契約とは、本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に対して自身の持つ店舗・事業経営のノウハウ、商標等を使用する権利を与え、また、加盟店の事業・経営について統一的な指導、援助を行い、その対価として、加盟店が本部に対して金銭(ロイヤリティ等)を支払う契約のことをいいます。

フランチャイズ契約の締結にあたっては、もちろんフランチャイズ契約そのものの契約書の作成が必要となります。

また、契約締結に先立ち、本部から加盟店に対して提供する法定開示書面と呼ばれる書面の作成も必要になります。

さらに、フランチャイズ本部と加盟店の双方の情報を守るため、秘密保持契約書を別途締結することもあります。

ここでは、これらの書面についてご説明します。

(1)フランチャイズ契約書

フランチャイズ契約の内容は、フランチャイズ契約書によって本部、加盟店それぞれの権利義務関係を定めることによって決められます。

フランチャイズ契約書が、フランチャイズ契約の根幹になるということです。

一般的なフランチャイズ契約書においては、以下のような事項を定めておくことになります。

どれもが重要な事項といえます。

フランチャイズ契約書において定めておくべき事項

  • フランチャイズ権の付与・商標の使用許諾
  • 本部による経営指導の内容
  • 加盟店が支払う加盟金・保証金
  • 加盟店が支払うロイヤリティ
  • 本部が付与するテリトリー権
  • 加盟店による商品購入・仕入れの方法
  • 加盟店が行う広告宣伝の内容
  • 契約期間
  • 加盟店の競業避止義務

これらの事項の概要については、項を改めて解説します。

(2)法定開示書面

法定開示書面とは、フランチャイズ契約書とは別に、本部が加盟店となろうとする者に対し、交付およびその内容の説明をすることが求められている書面のことをいいます(中小小売商業振興法11条、12条など)。

この法定開示書面の作成等が法律上義務付けられているのは、小売業、飲食業の場合に限られており、サービス業については作成の義務がありません。

しかし、契約締結後の加盟店とのトラブルを避けるためには、法律上の義務がなくとも同様の書面を作成しておくのが望ましいでしょう。

法定開示書面によって加盟店への事前の説明を義務付けられている事項としては、次のようなものが挙げられています。

法定開示書面において定めておくべき事項

  • 本部事業者の名称、資本金の額、直近3事業年度の貸借対照表および損益計算表等
  • 直近3事業年度における加盟者の店舗の数の推移
  • 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
  • 加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項
  • 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
  • 経営の指導に関する事項
  • 使用される商標、商号その他の表示に関する事項
  • 契約の期間並びに契約の更新および解除に関する事項

以上は開示が求められる事項の一部です。

開示項目の詳細については中小企業庁が作成したパンフレットにまとめられています(21fyFranchiseStart.pdf (meti.go.jp))。

また、フランチャイズチェーンによっては、日本フランチャイズチェーン協会のWebサイトで実際の法定開示書面を確認することもできます(法定開示書面について|一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会 (jfa-fc.or.jp))。

(3)秘密保持契約書

フランチャイズ契約を締結する際には、情報の漏えいを防ぐため、フランチャイズ契約書とは別に、秘密保持契約を締結することがあります。

本部は、加盟店に対し、事業上のノウハウを提供することになるところ、これを加盟店に悪用されて大きな損害が生じることを防止する必要があるからです。

この場合、加盟店の取引先や、加盟店が従業員を用いている場合には従業員に対しても秘密保持義務を負わせる内容が定めることも少なくありません。

加盟店に対し、従業員や取引先にも秘密保持義務を遵守させるため、それらとの間で覚書を締結させる義務を負わせることもあります。

このように、秘密保持義務については、いくつもの条項を定める必要が生じることがあります。

そのため、フランチャイズ契約から独立して、秘密保持契約を締結することもあるのです。

2.フランチャイズ契約書の主な記載事項

ここでは、フランチャイズ契約書に記載されている一般的な項目についてご説明します。

なお、実際の契約書においては、ここに記載する一般的な項目だけではなく、本部のビジネスモデルに即した個別の事項を定める必要もあることは忘れないでください。

(1)フランチャイズ権の付与・商標の使用許諾

本部が加盟店に対してフランチャイズ店舗を開店する権利を付与する条項です。

これを契約に定めることにより、加盟店は本部が認める商標(ロゴ、マーク、名称等)を使用して店舗を運営することが可能になります。

(2)経営指導

本部が加盟店に対して行う、経営についての援助や指導の内容について定める条項です。

研修や面談等、指導の方法についても定めることがありますが、ここで定めた経営指導を行わない場合、本部がその責任を問われる可能性があるため、その内容には注意が必要です。

(3)加盟金・保証金

加盟金は、加盟店となろうとする者がフランチャイズチェーンに加入する時に、本部が受取る対価です。

加盟金を返還しない旨を定めることが多く、また、「契約金」や「入会金」等といった名称が用いられることもあります。

保証金は、フランチャイズ契約から加盟店に生じる債務を保証する目的で本部に預けられる金員です。

保証金は預り金であるため、契約の終了時等に残債務分を差し引いて加盟店に返還することが定められることが多いです。

(4)ロイヤリティ

ロイヤリティは、商標等の使用許諾等に対して、本部が加盟店から受け取る対価として支払われる金員のことです。

契約書には、加盟店が本部に支払う内容、支払時期、金額などを記載することになります。

金額については、固定された金額や加盟店の「売上げの●●パーセント」というように変動する形で定められることもあります。

(5)テリトリー権

本部が、加盟店に対して、その販売地域を指定することをテリトリー制といいます。

加盟店の出店場所から一定の地理的範囲の場所に本部等が新規出店しないことを定めた権利をテリトリー権といいます。

契約書に加盟店に対するテリトリー権の付与を定めることにより、加盟店を契約に誘引することができますが、テリトリー権の範囲等について争いが生じる可能性もあるため、定め方には注意が必要です。

(6)商品購入・仕入れ

加盟店が、本部を通じて商品の仕入れを行うべき旨を定めることがあります。

フランチャイズチェーンとしての品質水準やイメージの統一等の観点から、本部は、加盟店に対し、商品や食材の購入先を、特定の業者に指定することが少なくありません。

(7)広告宣伝

フランチャイズチェーンのイメージの統一等を図る観点から、多くの場合、本部は、フランチャイズチェーン全体の広告宣伝を、独占的に行うよう定めます。

そして、加盟店自身が個別の広告宣伝を行う際の条件を定めて、独自の広告宣伝活動を制限します。

また、本部が行う広告について、加盟店に対して広告分担金を負担させ、その金額や支払方法を定めることもあります。

(8)契約期間

フランチャイズ契約の契約期間や契約の更新について定めます。

契約期間満了後は、その契約を更新しない限り契約終了となりますが、多くの場合、「●●か月以内に終了の申し出がない限り従前の内容と同内容で自動的に更新される」といった自動更新条項を定め、本部と加盟店の両者の手続にかかる負担の軽減を図る内容を定めています。

(9)競業避止義務

多くのフランチャイズ契約においては、競業避止義務を定めることになります。

ここにいう競業避止義務とは、契約期間中および契約終了後一定の期間は、フランチャイズ事業と同種または類似する業種の事業を行ってはならない加盟店の義務をいいます。

加盟店にフランチャイズ事業におけるノウハウ等の営業秘密を悪用されてしまうと本部に多大な損害が生じる可能性がありますので、競業避止義務は極めてとても重要なものとなります。

また、本部の立場としては、義務違反に対する違約金の条項を定めて置き、義務の実効性を高めることも検討するべきでしょう。

この競業避止義務に関する本部と加盟店間のトラブルの相談を受けることが特に多くありますので、慎重に定める必要がある事項です。

3.フランチャイズ契約において注意すべきポイント

本項では、フランチャイズ契約を締結するにあたり、主に本部が注意すべきポイントについてご説明します。

(1)契約期間の定め方や更新・解約に関する条項

加盟店として迎えたのに、早期にフランチャイズチェーンから撤退し、独立しようとする者が現れることがあります。

しかし、本部としては、ロイヤリティなどの対価を継続的に得られるように担保する必要があると同時に、ノウハウの流出を避け、フランチャイズチェーンの価値を維持する必要もあります。

そこで、契約書上、加盟店に対し、契約期間の途中で解約する場合には違約金を支払う義務を負わせ、かつ、加盟店が契約から離脱するタイミングを限定することにより、早期離脱する加盟店の数を減らすよう定めます。

一方で、収益性や素行の悪さ加減が度を越している加盟店をいつまでも加盟させていると、フランチャイズチェーン全体のイメージや収益に悪影響が及ぶ可能性があります。

そうならないために、契約の更新の方法(自動で更新されるのか、合意する必要があるのか等)や更新手続ができる期間、更新費用等を定め、当該加盟店を契約から離脱させるか否かを本部が決断するタイミングを作ることになります。

(2)加盟金やロイヤリティなどの算定根拠

加盟店は、本部に対し、契約書に定められた加盟金やロイヤリティを支払います。

加盟金は多額なことが多いため、一体何の対価なのか、金額や支払方法、支払時期はどのように定められているのかを、本部は、加盟店に対し、契約締結前に説明する必要があります。

また、加盟店が契約から離脱する際には、加盟金が返還されるのかどうかが争いになることがあります。

一般に、加盟金は返還しないものと定められていますが、本部によっては、条件を付加して返還すると定める場合もあるため、加盟店にしっかり説明を行い、説明を行ったことを含めて契約書に残しておくようにするとよいでしょう。

ロイヤリティの算定方式は、売上高や利益に応じて変動する方式や、決められた固定金額を支払う方式など、ビジネスモデルにより様々です。

また、ロイヤリティという名称ではなく、他の名称で加盟店が定期的に支払うべき金額を定めることもあるため、支払うべき費目や、算定の期間、算定根拠、金額を、加盟店に説明するようにしましょう。

(3)テリトリー権の有無や範囲

テリトリー権の有無や範囲は、本部と加盟店の間の交渉により決せられます。

テリトリーの定め方は、特定の地域には他店を一切出店させない方式や、期間を限定して出店させない方式、本部は出店できる方式、既存の店舗に出店する優先権を与える方式などがあります。

繰り返しになりますが、本部や加盟店の事業展開に大きな影響を与えますので、テリトリー権の有無・内容やテリトリー権の範囲を定めるには十分な検討が必要です。

(4)中途解約・違約金の要件や定め方

中途解約は、経営上の問題がある場合に行うだけではなく、災害にあったときや、体調不良になったときなど、加盟店側に責任のない出来事を原因として行われる可能性もあります。

そこで、中途解約時の解約金や違約金は適切な水準なのか、どのような増減額条件があるのか等を、契約前に確認しておく必要があります。

あまりにも高額な解約金や違約金は法律上無効になる可能性があります。

また、中途解約について定められることの多い解約予告期間などについても加盟店にはあらかじめ説明しておきましょう。

4.フランチャイズ契約について弁護士に相談するメリット

弁護士法人みずきでは、さまざまな事業者のフランチャイズ契約にかかるサポートを行っています。

フランチャイズ契約について弁護士に相談するメリットは何か、本項では3点ご紹介します。

(1)個別事案に応じた契約書作成のアドバイスが受けられる

インターネット上には、フランチャイズ契約書のひな形が多く紹介されています。

このようなひな形は、契約書に記載すべき一般的な項目を把握するためには有用です。

しかし、ひな形をそのまま自社の契約書として採用してしまうと、実情に対応できない項目があったり、自社のビジネスモデルに対するリスクに適合しない項目立てになったりするなど、契約書の記載自体がトラブルの原因になる可能性があります。

そこで、フランチャイズ契約に精通した弁護士に対し、自社のビジネス内容や発生しうるリスク等を詳細に相談したうえで、個別的に契約書を作成することが大切になります。

このように弁護士に相談しつつ、自社用にカスタマイズされた契約書を作成することには、問題を回避してビジネスを展開できるメリットがあります。

(2)すでに作成したフランチャイズ契約書のリーガルチェックが受けられる

リーガルチェックとは、契約書の内容を法的な観点から検証することをいいます。

リーガルチェックでは、たとえば、法令違反がないか、意図した効果が実現するか、想定されるリスクに対処できるか等を調査検討しますので、トラブルを未然に防ぐことに役立ちます。

自社のフランチャイズ契約について弁護士に相談すると、すでに手元にある契約書のリーガルチェックを受けることもできますので、修正の要否を検討したり、将来発生し得るトラブルに備えたりすることができるというメリットがあります。

(3)加盟店との法的紛争の際にも適切な対応ができる

本部と加盟店との間で紛争が生じた場合、弁護士に相談することで、契約書や法令等を基礎として、適切な対応をとることができます。

弁護士が介入したからといって必ず裁判などの大ごとになるわけではなく、むしろ、弁護士が相手方と交渉することによって裁判外で早期に鎮静化させることを期待できる場合が多くあります。

法的な紛争が生じそうな段階で、なるべく早く、弁護士にご相談になることをおすすめします。

まとめ

本記事では、フランチャイズ契約書の記載事項や契約締結の際の注意点などについて解説しました。

加盟店との間の法的リスクを適切に把握し、契約書には過不足のない条項を盛り込むことが重要です。

フランチャイズ契約書の作成について検討されている方は、専門家である弁護士に一度相談することをおすすめします。

弁護士法人みずきは、フランチャイズ契約について多くの案件を取り扱っております。お気軽にご相談ください。

執筆者 実成 圭司 弁護士

所属 第二東京弁護士会

皆さまのご相談内容を丁寧にお聞きすることが、より的確な法的サポートにつながります。会話を重ねながら、問題解決に向けて前進しましょう。