競業避止義務条項の「定め方」

「競業避止義務」とは、企業と一定の関係にある者(個人、法人は問いません。)が、その企業と同種の企業で就業し、または起業する等の競業関係に立たないようにする義務をいいます。

フランチャイズ契約であれば、フランチャイジー(加盟店)がフランチャイズ契約中、またはフランチャイズ契約終了後において、フランチャイザー(本部)と競業する企業に就職し、または自己が事業展開をすること等を禁止する義務ということになります。

このような競業避止義務条項は、フランチャイザーにとって、フランチャイザーとしての顧客や商圏、ノウハウ等の営業秘密を守るために不可欠なものであり、フランチャイズ契約において規定されていることが通常だと思います。

しかしながら、競業避止義務条項は、フランチャイジー側からすると、フランチャイズ契約中、またはフランチャイズ契約終了後の営業の自由を侵害することから、フランチャイザー側とトラブルになる例が絶えません。

当事務所でも、フランチャイジー側から競業避止義務に関するFC相談を受けることは、FC相談全体の中でもかなり多い方だと思います。

そこで、今回は、フランチャイザー側の立場から、後々問題になりにくい競業避止義務条項の「定め方」について説明したいと思います。

競業避止義務条項を定める際のポイント

競業避止義務条項の定める際のポイントとしては、①競業を禁止する期間、②競業を禁止する場所(区域)、及び③競業を禁止する営業の範囲・内容が挙げられます。そして、これらを検討する際には、フランチャイジーのどのようなノウハウを守る必要性があり、それがどの程度あるのか、という点を意識する必要があります。

例えば、過去の裁判例からすると、競業を禁止する期間が2年間を超えると一般的に長いと評価されることが多いと思われます。

また、場所(区域)については、現在、東京都内でしか営業をしていないフランチャイザーが、今後全国展開をする予定がないにもかかわらず、競業を禁止する場所(区域)に限定を設けない条項を定めているのであれば、問題とされる可能性があると思います。

そして、競業を禁止する営業の範囲・内容については、例えば、「SNSを活用したオンライン教育に特色があるフランチャイズ・システム」だとすると、教育事業という同種事業そのものを禁止するよりも、SNSを活用する教育を禁止するというように、フランチャイザーの守るべきノウハウとの関係で競業を禁止する営業の範囲・内容を限定する方が、問題になりにくいと思います(一般的に、禁止する営業の内容・範囲が具体的であればあるほど、問題になりにくいと思います。)。

なお、競業避止義務に違反した際、損害賠償請求等を検討することになりますが、競業避止義務違反による損害額の立証は、一般的にかなり困難です。そのため、競業避止義務違反が発生した場合に備えて、損害賠償額の予定の条項(例えば「乙は、甲に対し、第●条(競業避止義務)…に違反した場合には、損害賠償として●●万円を支払う。」)を設けておくことは重要です(本稿の検討対象外ですが、秘密保持義務違反等との関係でも、損害賠償額の予定の条項は有益だと思います。)。

まとめ

上記のとおり、競業避止義務条項は、フランチャイザーにとって不可欠な条項です。

今後、フランチャイズ展開を考えている方、または、既にフランチャイズ展開をしているものの自社の競業避止義務条項の定め方に不安がある方は、弁護士にご相談されることをお勧めします。