債務整理をした後にローンを組むには?弁護士が注意点や対処法を解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「債務整理の後だけど、自動車を購入したい」
「債務整理で生活が落ち着いたので、新しく家を購入したい」

このような理由から、債務整理の手続が終了した後に新しくローンを組むことを検討されることがあると思います。

債務整理後でも一定の期間が過ぎればローンを組むことが可能になります。

この記事では、債務整理後のローンの組み方や注意点について紹介します。

1.債務整理の手続別・ローンが組めない期間

債務整理を行うと、新たなローンが組めないと聞いたことはありませんか?

これは事実で、債務整理後は一時的にローンを組むことができなくなります。

しかし、一定期間が経てばまたローンを組めるようになるのです。

債務整理後、最長で以下の期間はローンを組むことができません。

任意整理 完済から5年
自己破産 破産手続開始決定の日から10年
個人再生 個人再生手続開始決定の日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方

2.債務整理をすると一定期間ローンが組めない理由

どうして債務整理をすると、一定期間は新たなローンが組めないのでしょうか。

延滞等の事実や債務整理を行った事実は、信用情報機関に事故情報として登録されています。

事故情報を取り扱う信用情報機関には株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)の3つがあります。

ローンの申込みを受けた金融機関はこれらの信用情報機関に照会を行います。

過去の債務整理の情報は下記の期間、信用情報機関に登録されています。

債務整理の手続方法 CIC JICC KSC
任意整理 完済から5年 受任通知の送付日から5年(2019年9月30日以前の契約)
完済から5年(2019年10月1日以降の契約)
完済から5年
個人再生 完済から5年 完済から5年 手続開始決定日から10年か、完済から5年のいずれか遅い方
自己破産 免責許可決定確定日から5年 免責許可決定確定日から5年 手続開始決定日から10年

事故情報が残っている場合、新たなローンの申込みをしても返済を続けていく能力に疑いがあるとされて審査に通らなくなってしまうことになります。

これがいわゆる「ブラックリスト入り」した状態です。

3.債務整理後にローンを申し込む際のポイント

債務整理を行った後は、前記のとおり事故情報が信用情報機関に登録される、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態となっていますが、一定期間が経過すれば情報は削除されます。

つまり、一定期間が経てば、ローンの審査に通る可能性があります。

次に挙げる点に注意して、債務整理後のローン申込みを考えてみましょう。

(1)事故情報について開示請求を行う

まずは、保管期間の経過により事故情報が削除されたかどうか、確認しましょう。

信用情報機関は、信用情報が登録されている本人からの開示請求によって信用情報を開示する仕組みを設けています。

これを利用することにより、登録されている内容を閲覧し、ローンを申し込む前に事故情報が消えているかを確認しておくと安心です。

開示請求の方法については、以下のとおりです。

信用情報機関 情報開示請求の方法 開示請求手数料
CIC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
JICC インターネット、郵送、窓口で受付 インターネット、郵送:¥1,000
窓口:¥500
KSC 郵送のみ受付 ¥1,000

これらの方法については、各信用情報機関のホームページに詳しく記載されています。

どの信用情報機関に事故情報が登録されているか分からない場合も多いので、念のため3つの機関すべてに開示請求をしておくとよいでしょう。

(2)債務整理を行った金融機関とは別の金融機関に申し込む

以前債務整理を行った金融機関は、新規のローンを断る可能性があります。

信用情報機関が情報を削除していても、金融機関自身が過去の債務整理についての情報を保管している可能性が高いためです。

債務整理を行った金融機関以外なら、信用情報機関の情報と現在の収入状況や勤務先などをローンの審査時に確認することになります。

過去の債務整理と関係のない金融機関には、信用情報機関の事故情報が消えていれば債務整理の事実はわかりません。

そのため、別の金融機関を選べば新たなローンの審査は通りやすくなるでしょう。

なお、それでもローンの審査が通過しない場合もあります。

例えば、現在無職で新たな就職先が決まっていない、収入が安定していない場合、重篤な病気の場合などはローンの審査に通過しにくいので注意しましょう。

(3)家族と協力しペアローンを組む

債務整理後に住宅ローンを検討されるなら、家族の協力を得て「ペアローン」を組むのも一つの方法です。

ペアローンとは、夫婦や親子で1つの物件に対してそれぞれが住宅ローンを契約する方法です。

例えば夫婦でペアローンを組む場合、夫も妻も金融機関と住宅ローンの契約をし、お互いがお互いの連帯保証人となります。

金融機関側からすると、一つのローンで債務者が二人になるので、単独でローンを申し込んだ場合より審査に通りやすくなります。

夫婦それぞれが住宅ローンの控除を受けられるというメリットもあります。

一方で、片方の債務者が亡くなった場合は、その方が借りていた分しか団体信用保険が適用されないといったデメリットもあります。

ペアローンを検討する場合にはこうしたメリット・デメリットを総合的に判断したうえで進めるようにしましょう。

(4)信用力や経済力の再建をアピールする

債務整理は借金の減額または免除により生活を立て直し、借金に頼らない生活をするために行うものです。

生活の立て直しなどを頭に入れて生活することによって、ローンを組もうとする場合に有利になることもあります。

例えば、会社に長く勤務することは、社会的信用を上げることになります。

年収の高い仕事は返済能力が高いとみなされますし、勤続年数が長ければ長いほど信用が大きくなります。

一つの会社に長く勤務している人は、収入が高く安定しており返済を継続できると判断されるのです。

また、生活に余裕を持たせ、貯金をすることができればそれを頭金に充てることができます。

頭金が多めに用意されているとその分返済金額は減りますし、返済能力がある、十分な預金を蓄えることができるという証拠になります。

このように、債務整理後に経済的再建ができていることは、ローン審査にも好影響を与えるのです。

まとめ

債務整理を行った後に新たなローンを組めないことは事実です。

しかし、一定期間が経過すれば、信用情報機関に登録された事故情報は削除されます。

債務整理を行っても、しっかりとその後の生活を安定させ、収入を得ていれば住宅ローンも車のローンも組めるようになるのです。

事故情報が削除されるまでの期間に頭金を貯金したり、安定した職を得る努力をしておくと、新たなローンの審査が通過しやすくなります。

お一人で借金のお悩みを抱え込むよりも、その悩みを解決するために弁護士への早めのご相談をおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。