建設アスベスト給付金制度とは?概要や経緯、請求時の注意点を紹介
「建設アスベスト給付金制度ってどんな内容なのか?」
「建設アスベスト給付金制度はどのような経緯で生まれたのか?」
最近施行されたばかりの建設アスベスト給付金制度について、詳しく調べている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、建設アスベスト給付金制度の概要や誕生した経緯、対象者や支給金額、請求時の注意点についてご紹介します。
1.建設アスベスト給付金制度とは
建設アスベスト給付金制度とは、建設現場で働き、中皮腫・肺がん・石綿肺などのアスベストによる病気になられた方やその遺族に対し、一定の要件を満たす場合に国が給付金を支給する制度です。
被害者が受けた精神上の苦痛に対して迅速な賠償を図るために設けられ、令和4年1月19日に完全施行されました。
後にご紹介する厚生労働省が公表している建設アスベスト給付金の対象者に該当している方は、請求手続の準備を行いましょう。
2.建設アスベスト給付金制度ができた経緯
建設アスベスト給付金制度は、建設アスベスト訴訟をきっかけに生まれました。
建設アスベスト訴訟とは、建設業務に従事していた元労働者等とそのご遺族の方々が、石綿による健康被害を被ったのは国にも責任があるとして、国家賠償法に基づく損害賠償を請求した訴訟です。
令和2年12月14日以降、最高裁判所が国の上告受理申立てを受理しないとの決定を行ったことにより、国の責任を一部認めた高裁判決が確定しました。
そして、令和3年5月17日の最高裁判決において、国敗訴の判決が言い渡されたのです。
この判決を受けて、「与党建設アスベスト対策プロジェクトチーム」が検討を踏まえ、同年5月18日に、厚生労働大臣と建設アスベスト訴訟原告団及び弁護団の方々との間で、「基本合意書」が締結されました。
この後、与党において法案化が進められ、同年6月9日に議員立法により「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立し、同月16日に公布され、令和4年1月19日に完全施行されています。
3.建設アスベスト給付金の対象者と給付金
建設アスベスト給付金の対象者と支給金額についてご紹介します。
対象者に関しては、一定の期間に一定の建設作業を行っていた方が対象です。
また、支給金額は病態区分や死亡しているかによって金額が変わります。
給付金の請求資格があるのか、またどのくらいの金額を請求できるのかチェックしてみましょう。
(1)対象者
建設アスベスト給付金は、以下の期間に該当する業務を行っている方が請求できます。
期間 | 業務 |
---|---|
昭和47年10月1日から昭和50年9月30日 | 石綿の吹付け作業に係る建設業務 |
昭和50年10月1日から平成16年9月30日 | 一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務 |
また、石綿関連疾病にかかった労働者や一人親方(労働者を雇用せずに自分自身と家族などだけで事業を行う事業主)、中小事業主(家族従事者等を含む)であることも条件です。
石綿関連疾病には、中皮腫や肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺(じん肺管理区分が管理2~4)、良性石綿胸水などが含まれます。
上記の条件に合致する方は、なるべく早めに手続を行いましょう。
(2)給付金
建設アスベスト給付金は、認定審査会の審査結果によって請求できる金額が変わります。
まず、被害者本人が健在の場合は、以下のとおりです。
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 550万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 700万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 800万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 950万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,150万円 |
病状が重くなるにつれて、請求できる金額も増加します。
次に、被害者が死亡し、遺族が請求する場合は以下のとおりです。
病態区分 | 金額 |
---|---|
石綿肺 (管理2) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理2) 合併症あり | 1,300万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症なし | 1,200万円 |
石綿肺 (管理3) 合併症あり | 1,300万円 |
中皮腫、肺がん、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚、石綿肺 (管理4)、良性石綿胸水である者 | 1,300万円 |
石綿肺(管理2もしくは3)で合併症がない場合は1,200万円で、それ以外は1,300万円請求できます。
4.建設アスベスト給付金制度を利用する際の注意点
建設アスベスト給付金制度を利用する際の注意点についてご紹介します。
特に注意すべきポイントは以下の三つです。
- 請求期限がある
- 必要な書類を全て揃える
- 請求できる被災者の遺族に制限がある
いずれも大切なことなので、頭の片隅に入れておきましょう。
(1)請求期限がある
建設アスベスト給付金には、請求期限があるので注意しましょう。
請求期限は、以下の日から20年経過するまでです。
- 石綿関連疾病にかかった旨の医師の診断日
- 石綿肺に係るじん肺管理区分の決定日のいずれか遅い日
- 石綿関連疾病により死亡したときは死亡日
20年もあるので猶予はありますが、手続に時間がかかるので、忘れないうちに早めの行動を心がけましょう。
(2)必要な書類を全て揃える
建設アスベスト給付金は、厚生労働省労働基準局労災管理課に必要な書類を、配達状況や到着の確認ができる方法(簡易書留やレターパックなど)で送ることにより請求が可能です。
ただし、労災認定を受けた者が利用できる労災支給決定等情報提供サービスを受けているかどうかで、必要な書類が異なります。
不備等があると手続に遅れが生じるため、建設アスベスト給付金請求の手引きをチェックしながら、必須の提出物は全て揃えるようにしましょう。
なお、労災支給決定等情報提供サービスを受けている方は、「建設アスベスト給付金請求の手引き①」を、受けていない方は「建設アスベスト給付金請求の手引き②」をご確認ください。
(3)請求できる被災者の遺族に制限がある
本人が死亡した場合は、遺族が請求することになりますが、全ての遺族が請求できるわけではありません。
建設アスベスト給付金を請求できる遺族は、配偶者(事実婚含む)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹に限られます。
戸籍謄本等で証明する必要があるので、建設アスベスト給付金請求の手引きに従って手続を行いましょう。
なお、遺族が複数いる場合は、配偶者から順に優先権が発生します。
まとめ
建設アスベスト給付金は、建設現場でアスベストにより病気になってしまった方への賠償制度です。
ただし、給付金を受け取るには条件を満たす必要があります。
条件に該当している方は、今回紹介した三つの注意事項を意識しながら、給付金の請求手続を進めましょう。
ご自身が条件に当てはまっているか確認したい場合は、お気軽に弁護士法人みずきまでご相談ください。
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