拘束条件付取引②(販売価格の制限)

フランチャイズ契約では、フランチャイズ・チェーン全体の統一性が保たれていることが重要であるため、本部側が加盟店側による取引方法を拘束することがあり、以前の記事において、対面販売という販売方法の拘束について取り上げました。

今回は、商品又はサービスについて統一価格を設定するという販売価格の制限について取り上げたいと思います。

1.独占禁止法違反

商品又はサービスについて統一価格を設定するという販売価格の制限は、例えば、本部側が加盟店側に商品を供給し、加盟店側がその商品を販売するという業務形態を採用している場合は、「再販売価格の拘束」(独占禁止法19条、2条9項4号)に該当するおそれがあるといえます。

また、加盟店側が、サービスを提供する内容の業務形態を採用している場合は、「拘束条件付取引」(独占禁止法19条、2条9項6号、一般指定12項)に該当するおそれがあります。

このように、本部側が独占禁止法に違反した場合、フランチャイズ契約が当然に無効となるわけではありませんが、加盟店側に対する不法行為責任が成立し、損害賠償責任を負うこととなることや、公正取引委員会から課徴金が課せられる可能性があることに注意が必要です。

この点、FCガイドライン3(3)によれば、「統一的営業・消費者の選択基準の明示の観点から、必要に応じて希望価格の提示は許容される」とされています。

そのため、加盟店側を拘束しない希望小売価格の設定や、加盟店側に対する本部側の価格に対する助言については、一般的に違法ではないと考えられております。

したがって、本部側は、フランチャイズ・チェーン全体の統一性を保つために希望小売価格の設定や価格の助言を行う場合には、希望小売価格があくまでも本部側として推奨するものであって強制されるものではないこと、希望小売価格や助言に応じない場合に、加盟店側が不当な不利益を負うことにならないよう注意が必要です。

2.裁判例(福岡高裁平成25年3月28日判決)

最後に、本部側による値下げ販売禁止の要請が「再販売価格の拘束」として独占禁止法に違反するか問題となった裁判例をご紹介します。

(1)事案の概要

コンビニエンスストアの加盟店が、米飯・チルド等の毎日納品され、短期間で鮮度が失われる商品について、独自の判断で値下げ販売を行っていたところ、本部側から口頭で値下げ販売をやめるよう強く求められ、加盟店側がそれに応じなかったことから、本部側から契約解除等の不利益な取扱いの示唆等がなされていたことが「再販売価格の拘束」に該当しないかが問題となった事案です。

(2)裁判所の判断

福岡高裁は、「推奨価格以外の価格で商品を販売しようとする加盟店に対し、その販売による影響や長年の経験に照らして店舗経営上の不利があると判断していることを伝え、これを中止するように求めたとしても、それが直ちに販売価格の強制であるとか自由な意思決定の妨害であるとみるのは相当ではなく、本件契約に基づく上記の助言、指導の範囲であれば、許されると解される。」とした上で、上記本部側の対応は、フランチャイズ契約に基づく助言、指導の範囲内の行為であるとして、独占禁止法に違反しないとしました。

まとめ

今回ご紹介した裁判例では、本部側の独占禁止法違反が否定されましたが、常に今回ご紹介した裁判例と同様に、「再販売価格の拘束」に該当しないことにはならないことに注意が必要です。

独占禁止法違反が認められた場合の本部側の不利益は、少なくありません。加盟店側に対する対応に疑問点や不安がある場合には、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。