自賠責保険の通院の慰謝料はどのくらい?計算方法や請求方法を紹介!
「自賠責保険の通院の慰謝料はどうやって計算するのか」
「自賠責保険に請求するにはどうしたらいいのか」
事故の被害者の中には、通院にかかった慰謝料を自賠責保険に請求しようと考えている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、自賠責保険の通院に関する慰謝料の計算方法や請求のやり方をご紹介します。
1.自賠責保険の通院に関する慰謝料の計算方法
自賠責保険に対して、通院に関する慰謝料を請求する際には、以下のポイントを押さえる必要があります。
(1)対象日数
交通事故で怪我をした場合、治療費や休業損害とは別に、入通院慰謝料(傷害慰謝料)を受け取ることができます。
自賠責保険の入通院慰謝料は、対象日数あたり4,300円です。
これは、令和2年4月1日以降に発生した事故の場合であり、令和2年3月31日までに発生した事故の場合は、4,200円となります。
つまり、基本的に、慰謝料金額は、4,300円×対象日数 で計算できます。
そして、入通院慰謝料の対象になる日数かどうかは、被害者の傷害の態様、実際に通院し た日数等を考慮して算定されます。
通常は、「実際に通院した日数の2倍」か「治療を開始した日から治療を終えた日までの 総日数」のうち、日数の少ない方を、対象日数として算定します。
(2)計算の例
実際に例を挙げて確認しましょう。
全治療期間は200日、実際に通院した日数は80日だとすると、全治療期間は200日、通院日数の2倍は、80日×2=160日 です。
この場合、実際に通院した日数の2倍の160日の方が全治療期間よりも少ないため、対象日数には160日が採用され、入通院慰謝料は「4,300円×160日=688,000円」となります。
(3)上限額
最後に、傷害による損害の支払限度額が、120万円であることに注意が必要です。
すなわち、たとえば、治療費 + 休業損害額 + 入通院慰謝料額 が120万円を超えたとしても、自賠責保険からは最大120万円しか受け取れません。
2.自賠責保険に請求する方法
自賠責保険に治療費や慰謝料を請求するには、複数の方法があります。
(1)一括対応の場合
自賠責に慰謝料等を請求したい場合、一般には、加害者の任意保険会社が一括対応をしてくれる場合が多いです。
一括対応とは、本来被害者が自賠責保険に請求すべき分についても、加害者の任意保険会社が窓口となり、各医療機関に対して治療費を直接支払いしてくれることをいいます。
一括対応の場合、被害者が同意書に署名すれば、加害者の任意保険会社が被害者の通院先と連絡を取り治療費の支払いをしてくれます。
そのため、ご自身で自賠責保険会社に治療費や慰謝料を請求する必要はありません。
しかし、この場合、被害者は示談成立後に休業損害や慰謝料の支払いを受けることになるため、示談に時間がかかる場合には、慰謝料等の受取がなかなか実現せず、休業が続く場合には生活が困窮してしまうこともあります。
また、被害者の過失割合が大きいと指摘されていたり、事故と治療との間の因果関係がないのではと指摘されていたりすると、加害者の任意保険会社が一括対応をしない場合があります。
そのような場合には、被害者が治療費を立替え、回収のために事後的に自賠責保険に請求せざるを得ないこともあります。
このような場合には、被害者請求という方法を採ることができます。
(2)被害者請求をする
被害者請求とは、被害者自身が必要書類を集めて、加害者が加入している自賠責保険会社に対して直接補償を求めることです。
#1:被害者請求をするメリット
①加害者の承諾なしに利用できること
まず、被害者請求は、加害者の承諾なく利用することができます。
そのため、加害者が任意に治療費等の支払に応じない場合や、任意保険に入っていない場合等に、被害者請求を利用するメリットがあります。
②示談成立前でも利用できること
また、被害者請求は、示談成立前であっても利用することができます。
そのため、すでに支出した治療費等を早期に回収したい場合には、被害者請求を利用するとよいでしょう。
③被害者保護の観点から有利になる可能性があること
そして、次のような争点がある場合にも、被害者保護の観点から被害者に有利に取り扱われる可能性がありますので、被害者請求を利用すべきといえます。
- メンタル面の疾患など、事故と受傷の因果関係がないのではないかと加害者の任意保険会社が考えているケース
- 車両に軽微な損傷しか残っておらず、事故の衝撃も軽微であろうことから、被害者に治療を必要とする怪我はないのではないかと加害者の任意保険会社が考えているケース
- 被害者にも過失があると指摘されているケース
#2:手続の流れ
被害者請求の手続きの流れは、おおむね以下のとおりです。
・加害者の自賠責保険会社から書類を取り寄せる
↓
・必要書類を保険会社に提出する
↓
・審査、保険金の振込
#3:必要書類の収集
入通院慰謝料請求のために揃えなければならない書類は、以下のとおりです。
- 支払請求書兼支払指図書交通事故証明書(人身事故)
- 印鑑登録証明書
- 事故発生状況報告書
- 診断書、診療報酬明細書、施術証明書及び施術費明細書
- 通院交通費明細書
- 休業損害証明書、源泉徴収票、事故前年分の確定申告書、家族全員が記載された住民票等
上述のとおり、被害者請求は、加害者の自賠責保険の保険会社に対し行います。
そのため、被害者は、加害者がどの保険会社の自賠責と契約しているかを知る必要があります。
この点、加害者の自賠責保険の保険会社名及び証明書番号は、交通事故証明書の「自賠責保険関係」「証明書番号」の欄に記載されています。
#4:被害者請求を行う際の注意点
①期間制限は3年
請求できる期間は、被害者等が加害自動車を所有等する者を知った日の翌日から数えて、3年以内です(自動車損害賠償保障法19条、16条1項、2条3項)。
②物損は対象外
車両の修理費用や、衣服、携帯電話の破損など、物損は補償の対象外です。
③労災保険や健康保険などからも給付を受ける場合
たとえば通勤途中に交通事故に巻き込まれた場合、被害者は、加害者に対し損害賠償請求権を取得すると同時に、労災保険にも給付請求権を取得します。
しかし、このとき、公平の観点から、先に労災給付がされた場合には、国が、被害者の加害者に対する損害賠償請求権を労災給付額の限度で取得し(求償といいます)、また、被害者が、加害者から先に損害賠償を受けた場合は、国は労災保険の給付をしないこととされています。
つまり、治療の際に健康保険や労災保険などの社会保険から給付を受けた場合、その金額は差し引いて支払われることになります。
もっとも、仮に、国の労災給付の金額と、被害者が自賠責保険に被害者請求する残りの金額(通院交通費、休業損害、慰謝料等)の合計額が、自賠責の傷害部分の上限額(120万円)を超える場合、被害者請求が優先することになります。
そのため、上限額の120万円から、まず被害者が被害者請求分(通院交通費、休業損害、慰謝料等)の給付を受け、その残りがあれば、労災給付の求償分に充てられるということになります。
④自賠責保険からの補償は最低限の金額
自賠責保険は、交通事故被害者のための最低限度の補償を目的としています。
そのため、自賠責保険から補償される金額は、最低限に設定されています。
これに対し、過去の裁判例を参考にした裁判基準(弁護士基準)では、より高額の慰謝料を得ることができます。
もっとも、裁判基準(弁護士基準)で慰謝料額が認められるためには、弁護士への依頼が必要になります。
弁護士法人みずきがお手伝いさせて頂きますので、どうぞご連絡ください。
(3)政府保証事業を利用する
ひき逃げされて相手の車が不明の場合や、加害車両のドライバーは特定されていても自賠責に未加入であったという場合、被害者は、加害者の自賠責保険に救済を求めることができません。
しかし、このような場合にも被害者を救済する必要があるため、被害者は、政府の保障事業に賠償を請求することができます。
この請求は、損害保険会社の窓口であれば、どこでも受付しています。
なお、保険代理店では受付していませんので、ご注意ください。
#1 物損は対象外
自賠責保険と同じように、物損は補償の対象外です。
#2 労災保険や健康保険などからも給付を受ける場合
また、被害者請求の項で述べた以下の点は、政府保証事業を利用する場合にも同様に当てはまります。
たとえば通勤途中に交通事故に巻き込まれた場合、被害者は、加害者に対し損害賠償請求権を取得すると同時に、労災保険にも給付請求権を取得します。
しかし、この場合、公平の観点から、先に労災給付がされた場合には、国が、被害者 の加害者に対する損害賠償請求権を労災給付額の限度で取得し(求償といいます)、 また、被害者が、加害者から先に損害賠償を受けた場合は、国は労災保険の給付をし ないこととされています。
つまり、治療の際に健康保険や労災保険などの社会保険から給付を受けた場合、その 金額は差し引いて支払われることになります
まとめ
本記事では、自賠責保険の通院に関する慰謝料の計算方法や請求方法についてご説明しました。
基本的に、慰謝料金額は、4,300円×対象日数で計算できます。
しかし、傷害による損害の支払限度額が、120万円であることに注意が必要です。
たとえば、治療費+休業損害額+入通院慰謝料額が120万円を超えたとしても、自賠責保険から は最大120万円しか受け取れません。
自賠責に請求する方法は複数ありますが、加害者の承諾なしにできることから、被害者請求を利用することをおすすめします。
たとえば、交通事故の加害者が支払いを拒んでいる場合でも、被害者請求をすることにより、加害者側の自賠責保険から入通院慰謝料を受け取ることができます。
もっとも、被害者請求を申請するためには、多くの書類を提出しなければならず、時間の制限もあります。
このため、身体的にも精神的にも困難な状態にある被害者にとって、おひとりで手続きを進めるには負担が重すぎる面があるといえます。
そこで、加害者の任意保険会社に対してのみならず、加害者の自賠責保険会社へ治療費や慰謝料などを請求することをご検討されている方には、弁護士がお手伝いさせていただきます。
弁護士法人みずきに、是非ご相談ください。
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