休業損害を計算する方法とは?適切な金額を請求する三つのポイント
「休業損害はどのように計算するのか?」
「納得のいく金額の休業損害を請求するにはどうしたらいいのか?」
事故の被害者の中で、休業損害を請求しようと思っている方の中には、どのくらいの金額になるのか気になっている方もいるのではないでしょうか。
本記事では、休業損害を計算する上で知っておくべき計算基準と計算方法、適切な金額を請求するためのポイントについてご紹介します。
1.休業損害を計算するための三つの基準
休業損害を計算する上で、三つの計算基準があることを押さえましょう。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 裁判所基準
各基準がどのようなものかチェックしておきましょう。
(1)自賠責基準
自賠責基準は、法令(自動車損害賠償保障法施行令)で決められた基準のことです。
自賠責基準で算定される金額は、基本的には、裁判所の基準で算定される金額よりも低くなります。
自賠責基準では、1日あたりの休業損害を原則6100円で計算するため、自賠責基準での休業損害の計算式は以下になります。
日額6100円 × 認定休業日数 (令和2年4月1日以降に発生した事故についての基準です。) |
たとえば、休業日数が5日だった場合、6100円×5日=30500円となります。
(2)任意保険基準
任意保険基準は、任意保険会社が設けた基準のことです。
事故に遭うと、多くの場合、被害者と加害者側の任意保険会社とで示談交渉を行います。
示談の際に、任意保険会社は、自らが設けた基準をもとに休業損害を算定し、提示します。
任意保険基準は保険会社によって異なり、一般的に公開されていません。
ただ、自賠責基準よりは金額が高くなるように設定していると考えられます。
(3)裁判所基準
裁判所基準は、弁護士が過去の裁判例をもとに、示談交渉や裁判において用いる基準のことです。
三つの基準の中で、最も高い金額を請求できるケースが多いでしょう。ただし、裁判所基準による休業損害は、弁護士に交渉を依頼しなければ、請求することは困難です。
裁判所基準では、被害者の事故前の収入を基に一日あたりの基礎収入額を算出して、休業損害を計算します。
自賠責基準の休業損害よりも裁判所基準の休業損害の方が高額となるケースが多くありますので、休業損害を請求する際は、弁護士に依頼して相手方保険会社と交渉することをおすすめします。
弁護士法人みずきも示談交渉のお手伝いをしています。
交通事故の無料相談も承っておりますので、まずはご連絡ください。
2.休業損害を計算する方法
休業損害を計算する方法についてご紹介します。
計算方法は被害者の立場によって異なります。
本記事では、給与所得者、事業所得者、家事従事者の3つのパターンでの計算方法を紹介します。
それぞれ具体的な計算方法を解説しますので、該当するパターンを参考に計算してみてください。
なお、ここでは、裁判所基準を用いた計算方法を前提としています。
(1)給与所得者
勤め先から給料をもらっている会社員やアルバイトの方は、給与所得者に該当します。
給与所得者の場合、休業損害の計算式は以下のとおりです。
一日あたりの基礎収入 × 休業日数 |
一日あたりの基礎収入は、「交通事故直前3か月分の収入の合計額 ÷ 90(日)」で計算することが多いです。
たとえば、直前3カ月分の収入が90万円で、休業日数が30日だった場合、基礎収入は、90万円÷90日で算出されますので、休業損害の請求額は、90(万円)÷90(日)×30(日)=30万円となります。
交通事故の直近3か月分の給与の金額は、勤務先の会社に作成してもらった休業損害証明書をもとに証明しなければなりません。休業損害証明書は、書式を各保険会社から入手し、勤務先の会社に記入してもらいましょう。
ただし、弁護士が交渉を行う場合は、一日あたりの基礎収入を算定する際、90日ではなく、稼働日数で割ることが多いです。
稼働日数で割った方が一日あたりの基礎収入が高くなるからです。
(2)事業所得者
経営者やフリーランスなど自分で事業を営んでいる事業所得者は、前年の所得額を基準に、休業損害を算定することになります。
前年所得額を365日で割った金額を基礎日額として、以下の計算式で、事業所得者の休業損害を算定します。
(前年の所得額 +固定経費)×寄与率÷ 365日 × 休業日数 |
寄与率とは、本人自身の稼働による利益の割合をいいます。
また、休業中に支出を余儀なくされた固定経費についても、休業損害として認められます。
ちなみに、給与所得者とは異なり、休業損害証明書を作成できないため、他の方法で所得や減収を証明しなければなりません。
一般的には、事故の前年度の確定申告書等により証明します。
(3)家事従事者
専業主婦・主夫は家事従事者に該当し、労働による収入を得ていなくても休業損害の請求が可能です。
事故によって家事ができなくなった場合や支障が生じた場合も、休業損害を請求できるのです。
家事従事者の場合、厚生労働省が発表している賃金センサスの女性労働者の平均年収を参考に基礎収入額を決定します。
つまり、家事従事者の休業損害の計算式は以下のとおりです。
賃金センサスの女性労働者の全年齢学歴計平均年収÷365日 × 休業日数(入通院日数等) |
専業主夫であっても、女性労働者の全年齢平均が基準になります。
家事従事者であることは、住民票や家族構成表等の家族構成がわかる資料を提出することにより証明します。
3.適切な休業損害を請求する三つのポイント
適切な休業損害を請求するためのポイントをご紹介します。
特に気を付けるべき点は、以下の三つです。
- 休業損害証明書にミスがないか確認する
- 実際の収入を把握する
- 弁護士に相談する
納得できる金額を受けられるように意識しておきましょう。
(1)休業損害証明書にミスがないか確認する
休業損害証明書に記入ミスがないか確認しましょう。
勤め先によっては、休業損害証明書を作成した経験がない場合もあります。
必ずしも正確に記入してもらえるとは限らないので、記入ミスや漏れがないか確認することが重要です。
特に、有給休暇を休業日数にカウントしていないなどの休業日数の間違いや、事故前の収入額の記入ミスなどは入念にチェックしておきましょう。
不安であれば、弁護士にミスがないか確認してもらうことをおすすめします。
(2)実際の収入を把握する
特に給与所得者は、実際のご自身の収入を把握することも大切です。
過去の給与明細をチェックすれば、一日あたりどのくらいの収入を得ているのか知ることができます。
実際に得ている収入をもとに休業損害を計算し、どのくらいの提示金額であれば妥当なのかを把握しておきましょう。
(3)弁護士に相談する
より適切な休業損害を請求するには、弁護士に相談しましょう。
これまで休業損害の計算式をご説明してきましたが、交渉において素直にそのまま話が進むことは多くはありません。
自賠責基準は、原則として1日当たり6100円ですが、弁護士に相談すれば、より高額の休業損害を請求できる場合もあります。
まとめ
休業損害の計算方法には、三つの基準がありますが、弁護士に依頼し裁判所基準で交渉をすすめることをおすすめします。
被害者の立場によって計算方法は異なるので、該当するパターンの式を参考に計算してみてください。
弁護士法人みずきでは、無料で交通事故に関する相談を受け付けておりますので、休業損害の請求を弁護士に依頼しようと思われている方はお気軽にご連絡ください。
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