遅延損害金は契約書に記載がない場合はどうなる?改正の要点について
「遅延損害金ってそもそもどういうもの?利息とは違う?」
「契約書に遅延損害金についての記載がなかったら支払わなくてもいいもの?」
借入れの契約をする際、あるいは、分割払いでの売買契約を結ぶ際など、契約書に遅延損害金に関する記載があると、以上のような疑問を覚えることもあるのではないでしょうか。
遅延損害金は、金銭を支払うことを内容とする債務について、その支払いが遅れたことによる損害を賠償するものです。
契約書に記載がない場合でも法律上決められた利率の金額を支払う必要があります。
本記事では、遅延損害金の概要、契約書に記載がない場合の遅延損害金、2020年に行われた遅延損害金の利率に関する民法改正のポイントをご紹介します。
1.遅延損害金とは
遅延損害金とは、金銭債務について、債務者が履行を遅滞(支払が遅れることをこういいます。)した際に、債権者の損害を賠償するために支払う一定の金銭(=損害賠償金)のことをいいます。
遅延損害金は、支払いが遅れた時、つまり支払期日の翌日から支払いの遅れが解消されるまで一定の利率で発生し続けます。
例えば、消費者金融からの借金について支払期日までに返済ができなかった場合、期日の翌日から約束の返済分を支払うまで遅延損害金が発生し続けることになります。
また、遅延損害金は、遅延利息とも呼ばれることもあることから、利息と混同されやすいものです。
遅延損害金と利息の違いや遅延損害金の計算方法について順にご説明します。
(1)遅延損害金と利息の違い
繰り返しになりますが、遅延損害金とは、借金などの金銭債務の履行を遅滞した場合に生じる損害賠償金のことをいいます。
これは、支払いが遅れた時から発生するもの、ということになります。
一方、利息とは、借金をした場合に元本の利用対価として発生する金銭のことをいいます。
こちらは契約の定め方にもよりますが、通常、お金を借りた時から発生するものです。
このように、遅延損害金と利息は性質や発生の時期が異なります。
法律上、借金の遅延損害金や利息には以下の上限が定められています。
借入額 | 10万円以内 | 10〜100万円 | 100万円以上 |
遅延損害金(利息制限法4条1項) | 29.2% | 26.28% | 21.9% |
営業的金銭消費貸借契約の遅延損害金(利息制限法7条1項) | 20% | ||
利息(利息制限法41条) | 20% | 18% | 15% |
営業的金銭消費貸借とは「債権者が業として行う金銭を目的とする消費貸借」のこと(利息制限法5条1項)をいい、消費者金融等の金融機関からの借入れはこれにあたります。
つまり、金融機関からの借入れの場合、遅延損害金の利率の上限は、上記の表のとおり20%になります。
借金の返済が遅れた場合、支払期日の翌日から借金を返済するまでの間、遅延損害金が発生し続けます。
遅延損害金の上限は利息よりも高く設定されているケースが多いため、支払期日を過ぎても借金を返済せずにいると、支払うべき金額は増加し続けることになってしまいます。
(2)遅延損害金の計算方法
遅延損害金の計算方法は、滞納額 × 1日当たりの遅延利率 × 遅延日数となります。
たとえば、滞納額が100万円、遅延損害金の年率が20%の場合を考えてみましょう。
この場合、1日当たりの遅延利率は、20% ÷ 365日 ≒ 0.054%となります。
そうすると、1日に発生する遅延損害金の金額は、100万円 × 0.054% = 540円です。
この場合、延滞が続くと1日に540円ずつ余計に支払わなければならない金額が増えていくことになります。
1か月延滞すれば遅延損害金は1万6200円にまで増えてしまいます。
遅延損害金が決して無視できないものであることがわかると思います。
遅延損害金の利率は、債務者と債権者の合意による利率(「約定利率」といいます。)が法律で定める利率(「法定利率」といいます。)を超えている場合は、約定利率が優先され、約定利率を定めていない場合、約定利率が法定利率を下回る場合は法定利率を用いることになります(民法419条1項)。
通常、当事者間の合意で約定利率を決める際は、契約書や規定に遅延損害金の利率を記載することになります。
金融機関からの借入れについて、約定利率を確認する場合は、契約書や約款を確認するとよいでしょう。
2.契約書に記載がない場合の遅延損害金はどうなる
遅延損害金は、契約書等に定めがない場合でも支払う必要があります。
すでにご説明したとおり、約定利率を定めていない場合、約定利率が法定利率を下回る場合は、法律で定められている法定利率が適用されます。
法定利率は現行の法律では年3%となっています(民法404条2項)から、これを超える約定利率がない場合には法定利率が適用されることになります。
なお、法定利率については、民法改正によって年5%だったものが年3%へと引き下げられ、これが2020年4月1日に施行されました。
そのため、法定利率が適用される場合、2020年3月31日までに履行遅滞があったときは年5%、2020年4月1日以降に履行遅滞があったときは年3%の法定利率がそれぞれ適用されます。
3.遅延損害金の改正に関する要点
上記2でもご説明しましたが、2020年4月1日施行の民法改正によって遅延損害金に関する条文には変更がありました。
遅延損害金についての改正の要点を3点ご紹介します。
(1)法定利率の引き下げ
民法改正により、以前は年5%だった遅延損害金の法定利率は、年3%に引き下げられました。
ただし、この改正には附則による経過措置がとられており、2020年3月31日以前に履行遅滞が生じていた場合の遅延損害金は年5%のままとなります(附則17条3項)。
これにより、遅延損害金の法定利率が年3%となるのは、2020年4月1日以降に履行遅滞が発生した場合、ということになります。
(2)緩やかな変動制
改正により、3年を1期として1期ごとに法定利率を見直す変動制が導入されました(民法404条3項)。
変動制では、法定利率に変動があった期のうち直近のものにおける基準割合とその期における基準割合の差に相当する割合が1%以上となった場合に1%刻みで加減して法定利率を定めます(民法404条4項)。
上記の基準割合とは、過去5年分(各期の初日の属する年の6年前の1月から前々年の12月まで)の各月の短期貸付けの平均利率の合計を60で割って計算した割合として法務大臣が告示するものをいいます(民法404条5項)。
(3)商事法定利率の廃止
改正以前は、法定利率が民法上5%であったのに対し、株式会社間の取引など商行為によって生じた債務は年6%の利率が定められていました。
2020年4月1日施行の民法改正に伴い、商事法定利率が廃止され、商行為による債務にも民法に規定されている法定利率が適用されることになりました。
改正時、法定利率は3%に統一された、ということになります。
まとめ
借金などの金銭債務の履行が遅れてしまうと、遅延損害金と呼ばれる損害賠償金を支払う必要があります。
遅延損害金を計算するための利率には、債務者と債権者の合意により決められた約定利率と法律上定められている法定利率があります。
当事者間で契約書などに遅延損害金に関する記載があり、そこで定められた約定利率が法定利率を超えている場合は、約定利率が適用されます。
契約書に遅延損害金に関する記載がない場合は、法定利率が適用されることになります。
2020年4月1日施行の民法改正により、大きく3点の変更がなされました。
特に法定利率が3%となった点は大きな改正ですが、履行遅滞となった時期によっては従前の年5%の利率が適用されますので注意が必要です。
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