交通事故の休業損害はいつもらえる?受け取れるまでの流れと計算方法

交通事故の5年後まで後遺症が残ることはある

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

この記事の内容を動画で解説しております。あわせてご視聴いただければと思います。

「交通事故に遭って加害者側に休業損害を請求した場合、いつくらいに休業損害が振り込まれるの?」
「休業損害は、主婦であっても請求できるって本当?」

交通事故で負った怪我の治療のために仕事を休んだ場合、加害者側の保険会社に休業損害を請求することができます。

交通事故における休業損害は、相手方との示談が成立した後に慰謝料等と一緒に支払われるのが原則ですが、示談前であっても書類を揃えて加害者側の保険会社に請求すれば支払ってもらえることがあります。

本記事では、交通事故の休業損害をもらえるタイミング、休業損害以外に請求できる損害、休業損害の計算方法をご紹介します。

1.休業損害がもらえるタイミング

債権者から届いた督促状の入金期限が切れてしまった場合

交通事故における休業損害を含む損害は、原則としては治療終了後または症状固定後に請求ができることになっています。
ただし、事故による休業の必要が明らかであることを加害者側保険会社が認めた場合は、示談が成立する前に請求を行うことで、内払いとして支払を受けることができます。

休業損害が支払われるまでの流れと休業損害をいつまでもらえるのかを順にご説明します。

(1)休業損害が支払われるまでの流れ

加害者側保険会社が内払いをしてくれる場合、交通事故における休業損害を受け取るためには、休業損害証明書を提出して事故が原因で働くことができない事実を証明する必要があります。

そのため、事故の影響で仕事ができないこと、それによって収入が減少したことについての証拠を提出することになります。
例えば給与所得者の方であれば、ご自身の勤め先の担当者に休業損害証明書を書いてもらい、これを提出することになります。
また、前年から継続して働いている場合は、収入に変動がないことを証明する資料として、源泉徴収票の提出も求められることがあります。

このように休業損害が発生していることを示す資料を加害者側の保険会社へ提出すると、通常は1〜2週間後に休業損害の支払が行われます。
仮に休業損害の入金時期が遅い場合は、加害者側の保険会社に連絡しましょう。

必要な資料については、給与所得者、自営業者、家事従事者によって異なります。
この点については、休業損害の算出方法と合わせて後でご説明します。

(2)休業損害をもらえる期間

交通事故の加害者側に休業損害を請求した場合、最長で交通事故が発生した日から症状固定日までの就労不能期間、休業損害を受け取ることができます。
症状固定とは、交通事故によって負った怪我に対して治療などを継続した結果、それ以上の症状改善が見込めなくなった状態を指します。

就労不能期間は、個別事情によって異なる場合もあり、一概に期間を定めることはできません。
しかし、医師から症状固定を言い渡されるタイミングまでの期間は休業損害を受け取ることができるケースが多いです。

また、1か月以内に怪我の治療が完了せず次月も休業損害を請求したい場合は、次月改めて休業損害証明書を提出する必要がある点に注意しましょう。
休業損害証明書を毎月提出し、加害者側の保険会社に休業を証明することができれば、その月の休業損害を受け取れます。

2.休業損害で請求可能な損害項目

交通事故における損害には、積極損害、消極損害、慰謝料があります。
休業損害は、この中の消極損害に含まれます。

順にご説明します。

(1)積極損害

積極損害とは、交通事故が発生しなかったら出費しなかったであろう費用のことです。

以下のようなものが、積極損害にあたります。
・治療費
・入通院にかかる交通費
・入院雑費
・松葉づえ、コルセットなどの装具費用
・車両などの修理費

積極損害を請求するためにはその金額の根拠となる請求書や領収書が必要となります。
加害者側が一括対応するまでの、治療費、など、自費で支払った費用を証明できるものはとっておくことをおすすめします。

(2)消極損害

交通事故の場合の消極損害とは、交通事故が発生していなければ被害者が得られるはずであった利益のことをいいます。

休業損害も消極損害の一つです。
交通事故によって仕事を休まなければいけなくなりその分給与が下がってしまった場合、事故がなければその分も給与を受け取っていたはずですから、給与の下がった分が「得られるはずであった利益」に当てはまります。
休業損害のほかには、「逸失利益」というものがあります。
逸失利益は、交通事故によって後遺障害が残ってしまい労働能力が制限された場合、または、交通事故によって死亡した場合、交通事故がなければ得られたはずの将来の収入のことをいいます。これも、得るはずであった利益を失ったものですから、消極損害である、ということになります。

3.休業損害の算出方法とポイント

後遺障害の逸失利益の計算方法

休業損害は、以下の計算方法で算出することができます。
「基礎収入(日額)× 休業日数」
ただし、基礎収入の算出方法は職業に応じて異なるため、ご自身のケースに合わせて計算方法を変える必要があります。

給与取得者、自営業者、家事従事者のそれぞれの場合の休業損害の計算方法を順にご紹介します。

(1)給与取得者の場合

サラリーマンやアルバイトによって収入を得ている給与取得者の場合、原則、交通事故の直近3か月の給与額を用いて基礎収入額を算定します。

休業損害の計算式は、
「交通事故直近3か月の給与合計額 ÷ (90日 または 稼働日数)※① × 休業日数」となります。
下線を引いた①の部分が基礎収入の計算部分です。

交通事故の直近3か月分の給与の金額は、勤務先の会社に休業損害証明書を作成してもらい証明することになります。

そのほか、前年度から収入があったことを示すために、前年の源泉徴収票の提出も求めらることが多いです。

基礎収入の計算において、弁護士が交渉する場合は稼働日数で割ることが多いですが、交渉の際にこれを認めるかどうかは保険会社次第のところがあります。

(2)自営業者の場合

経営者やフリーランスなどの自営業者の場合は、交通事故が発生した前年の所得額を基準にして1日あたりの基礎収入額を算出します。

この場合の休業損害の計算式は、
「交通事故前年の所得額 ÷ 365日 × 休業日数」となります。

一般的に、自営業者が交通事故の前年の所得額を証明するには、確定申告書の控えや課税証明書を提出することになります。
確定申告をしていない場合は、銀行口座の取引明細や帳簿類などを用いて証明することになります。

また、減収があることを明らかにするためには、事故後の会計書類などの提出が求められることになります。

(3)家事従事者の場合

交通事故における休業損害は、専業主婦(夫)や兼業主婦(夫)などの家事従事者であっても受け取ることができます。
家事従事者の場合、年齢に応じた賃金センサスの平均収入を参考に基礎収入額が決まります。

また、専業主夫の場合であっても女性の賃金センサスが用いられる点に注意が必要です。

兼業主婦(夫)の場合は、実際の収入額と賃金センサスを参考にした平均収入を比較した上で、高い方を基準とするのが通常です。

家事従事者であることを明らかにする資料としては、非課税証明書などの被害者自身の収入の資料のほか、同居のご家族の収入の資料、住民票などの提出が求められることになります。

4.弁護士に相談する2つのメリット

弁護士基準で損害賠償を請求する方法

休業損害の対応は、専門家である弁護士へご相談ください。

(1)適正な額の休業損害を請求できる

交通事故において、休業損害の対応を弁護士へ相談することで、適正な額の損害を請求することができます。

休業損害は、職種に応じて休業損害証明書や確定申告などの必要書類が異なったり、算出方法が複雑だったりする場合があります。
計算方法を間違えたり、基準にするべき基礎収入額を誤ったりすると、休業損害の金額が適正に算出できない可能性があります。

専門家である弁護士に相談することで、それらの複雑な計算を一任することができますので、一度ご相談ください。

(2)手続をスムーズに進められる

休業損害の対応を弁護士へ依頼することで、交通事故の対応をスムーズに進めることができます。

休業損害の請求において必要書類の抜け漏れがあると、最悪の場合本来受け取れるはずの休業損害を受け取れない可能性があります。
必要な書類に関する指示や準備、手続などを経験豊富な弁護士に相談することで、手間をかけずに対応することができます。

休業損害のご相談は、弁護士へお任せください。

まとめ

交通事故で負った怪我などの治療のために仕事を休んだ場合、加害者側の保険会社に休業損害を請求することができます。

損害賠償は、一般的に加害者側と示談が成立した後に受け取ることができますが、休業損害は請求することで示談成立前に受け取ることができます。

休業損害の請求における必要書類や算出方法は、職種などによって異なりますので、スムーズに対応を進めるためにも専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

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