遅延損害金の利率の上限はいくらまで?計算方法や対処法について解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「遅延損害金って利息とは違うの?」
「遅延損害金の利率の上限ってどれくらいなの?」

遅延損害金は利息と同じだと思われがちですが、内容は異なります。

遅延損害金とは、支払期限を過ぎた債務に対して発生する損害賠償金のことです。

本記事では、遅延損害金と利息の違いや計算方法、遅延損害金が発生しないようにするためのポイントなどをご説明します。

1.遅延損害金の利率とは?

1.遅延損害金の利率とは?

遅延損害金は支払期日までに返済しなかった場合に、その翌日から発生する損害賠償金の一種です。

ここでは遅延損害金とは何か、利息との違いについてご説明します。

あわせて、2020年4月1日に施行された改正民法により、法定利率が引き下げられた点についても解説します。

(1)そもそも遅延損害金とは?

遅延損害金とは、借入れについて債権者と約束した支払期日までに返済ができず、滞納が生じた場合に、返済できていない元本分に対して一定の割合で発生する損害賠償金です。

民法419条1項本文は、「金銭の給付を目的とした債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。」と定めています。

この規定は、借入れなどの金銭の給付を目的とした債務について「遅滞」(=滞納)が発生した場合には、その時点の法定利率によって計算した金額が損害賠償額となる、としたものです。

この部分では法定利率となっていますが、のちにご説明するとおり、債権者と約束した利率(「約定利率」といいます。)がある場合にはそちらが優先されます。

つまり、この規定により、借入れを支払期日までに返済ができなかった場合には、法定利率または約定利率にしたがって、賠償すべき損害(=遅延損害金)が発生することになるのです。

(2)遅延損害金と利息の違い

遅延損害金は、「遅延利息」や「延滞利息」と呼ばれることもあります。

しかし、その実態は、上記のとおり一定の利率で発生することになる損害賠償金であり、厳密には利息とは異なります。

遅延損害金は、滞納に対する一種のペナルティであるため、その利率は、当事者の合意で定める約定利率の場合、利息よりも高く設定されるのが特徴です。

滞納が長期にわたれば、その分遅延損害金の額も大きくなり、支払が困難となることもあるため注意が必要です。

(3)法定利率とは?

さきに少し触れたように、遅延損害金の利率には「法定利率」と「約定利率」があります。

法定利率とは、法律に定められている利率のことです。

一方、約定利率とは当事者間の合意により定める利率のことで、通常の場合は契約書に明示されることになります。

民法419条1項ただし書では、「約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。」と定めています。

この規定により、約定利率が定められている場合は、法定利率より優先して適用されることになります。

なお、2020年4月1日に施行された改正民法において、民法上の法定利率は年3%とされ、以降3年ごとに見直しが行われることが定められました。

本記事の執筆時点(令和4年4月)の法定利率は年3%のままとなっています。

この改正前は、商行為以外によって生じた債権の利率である民事法定利率が年5%、商行為によって生じた債権の利率である商事法定利率が年6%でした。

民事と商事で区別された法定利率は撤廃され、一律年3%に引き下げられた、ということになります。

この改正には附則によって経過措置がとられています。

附則の17条によって、民法改正が行われた2020年4月1日より前の時点で滞納が生じている場合、改正前の法定利率が適用されるということは覚えておくとよいでしょう。

2.利率から遅延損害金を計算するには?

2.利率から遅延損害金を計算するには?

遅延損害金は返済するまで増え続け、返済が遅れるほど遅延損害金が積み重なっていく仕組みです。

一方、遅延損害金の利率には上限があります。

ここでは遅延損害金の計算方法についてご説明します。

(1)遅延損害金の計算方法

遅延損害金を実際に計算してみましょう。

遅延損害金の計算式は以下のとおりです。

遅延損害金=借入残高 × 遅延損害金の利率(年利) ÷ 年間日数(閏年の場合は366) × 遅延日数

たとえば、借入残高が50万円、遅延損害金の利率が20%、延滞日数が30日の場合は以下のとおりになります。

50万円×20%÷365×30日=8219円

(2)遅延損害金の利率の上限

いくら約定利率が法定利率より優先されるからといって、債権者が制限なく自由に利率を設定できるわけではありません。

なぜなら、利率の上限が定められているからです。

金銭を目的とした消費貸借上の債務を履行しなかった場合の賠償額について、利息制限法上の上限利率の1.46倍を超える部分は無効となると定められています(利息制限法4条)。

利息制限法1条の定める上限利率とその利息に対応する遅延損害金の上限利率は以下のとおりです。

元本の額 利息の上限(利息制限法1条) 遅延損害金の利率の上限(利息制限法4条)
10万円未満 年20.0% 年29.2%
10万円以上100万円未満 年18.0% 年26.28%
100万円以上 年15.0% 年21.9%

また、上記の規定には例外があり、消費者金融等から借り入れた場合は、遅延損害金の利率は最大で20%と定められています(利息制限法7条1項)。

3.遅延損害金が発生しないようにするには?

3.遅延損害金が発生しないようにするには?

そもそも返済が遅れないようにすれば、遅延損害金は発生しません。

しかし、何らかの理由で返済が遅れてしまい、遅延損害金の支払が難しくなることもあるでしょう。

その場合は早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

ここでは、遅延損害金が発生しないようにするにはどうしたらよいかについてご説明します。

(1)金融機関の窓口に相談する

返済が遅れそうになったらすぐに担当窓口に相談しましょう。

返済期日よりも前に相談することで、遅延損害金の発生を抑えられるかもしれません。

支払が難しい理由や支払見込日を伝えましょう。

金融機関によっては、支払期日を延ばしてくれたり、支払額の一時的な減額に応じてくれたりする場合もあります。

ちょっと遅れそう、滞納額が多額になっていないという場合は金融機関に対して相談することをおすすめします。

(2)弁護士にアドバイスを求める

借金の滞納により遅延損害金が増えるだけでなく、借入額そのものの返済が難しいこともあるでしょう。

この場合は、債務整理を検討した方がよいかもしれません。

債務整理について詳しく知りたい方は、弁護士に適切なアドバイスを求めることをおすすめします。

債務整理は借金の減額や免除を受けられる反面、デメリットもあります。

下記の債務整理のメリット・デメリットについてまとめた記事をご覧ください。

借金を減額できる制度とは?メリットとデメリットを解説

まとめ

本記事では、遅延損害金の利率や計算方法、遅延損害金の発生を回避するための方法などについて解説しました。

遅延損害金は、債務の支払が遅れたことに対する損害賠償金のことです。

約束の支払期限から日にちが経つほど遅延損害金が増え、返済が厳しくなるケースも考えられます。

債権者に返済期限の猶予を求める方法もありますが、弁護士に相談して解決につながることもあります。

遅延損害金の支払をはじめとする債務の返済が難しいとお考えの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。