交通事故から5年後まで後遺症が残る場合の対処法

交通事故から5年後まで後遺症が残ったときの対処法!後遺障害等級も解説

執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

私は、法律とは、人と人との間の紛争、個人に生じた問題を解決するために作られたツールの一つだと考えます。法律を使って紛争や問題を解決するお手伝いをさせていただければと思いますので、ぜひご相談ください。

「交通事故から5年経ってもまだ痛みが出るときがある場合はどうしたらよい?」
「交通事故から5年後でも後遺症と認められることはあるの?」

交通事故の被害で怪我を負い、治療を続けてある程度まで症状がよくなっていっても、数年後まで痛みが続いてしまった場合はどうすればよいのか気になる方は多いのではないでしょうか。

交通事故から5年後でも事故時から継続して怪我の痛みが残っている場合は、申請をすると後遺症と認められる場合があります。

この記事では、交通事故で後遺症と認められるケース、事故から5年経過している時の対処法などについて紹介します。

1.交通事故による後遺症とむちうち

交通事故の5年後まで後遺症が残ることはある

交通事故により怪我をすると、数年後まで痛みが続くこともあります。

怪我の治療を続けても症状の改善が見込めなくなった状態を一般的に症状固定といい、その際の症状を後遺症といいます。

交通事故から長期間が経過しても後遺症が残っている場合もあります。

そもそも後遺症とは何か、その次に、後遺症になりやすい怪我の一つであるむちうちについて見ていきましょう。

(1)後遺症とは

後遺症とは怪我の治療後に残ってしまった症状を指します。

具体的には、医師から治療をしても症状の改善が見込めない症状固定となったと診断されれば、残った症状は後遺症ということになります。

「症状固定」と診断された場合、その時点で治療は終了となり、以降の治療費を加害者側に請求することはできなくなります。

症状固定の診断を受けた時点で、加害者側への賠償請求が可能になりますので、後遺症がある場合には後遺障害部分の損害賠償のために後遺障害等級の認定を受ける手続に進みます。

(2)むちうちの症状と後遺症

交通事故の怪我のなかでも、むちうちは治療を続けても症状が残り、後遺症となることが少なくない怪我です。

また、むちうちは事故の直後は症状の自覚がなく、時間の経過とともに症状が出ていることがわかってくることもあります。

むちうちの後遺症について詳しく知りたい方は、以下の記事もぜひご覧ください。

むちうちの後遺症が数年後も残っていたら?慰謝料や治療費はどうなる

2.交通事故で後遺障害等級が認定される3つの条件

交通事故で後遺障害等級が認定されるケース

交通事故によって怪我を負い、後遺症が残ってしまった場合、後遺症に対する補償を受けるために後遺障害等級認定の申請をすることになります。

後遺症があったとしても、申請をすれば必ず後遺障害等級認定を受けられるとは限りません。

後遺障害等級は等級に応じて認定基準があるため、どの等級にも該当しない「非該当」となるケースもあります。

ここからは、交通事故の怪我で後遺障害等級が認定されるために、最低限必要な条件を三つご紹介します。

(1)症状が回復する可能性がない

医師から「症状固定」と診断され、症状が今後も回復する可能性がないことは後遺障害等級の認定を受ける必須条件です。

また、後遺障害等級認定の申請時には「後遺障害診断書」が必要なので、担当医に作成を依頼する必要があります。

その後遺障害診断書に症状が回復する見込みがないことを記載してもらうことになります。

(2)交通事故との因果関係がある

交通事故の怪我による後遺症に対して後遺障害等級認定を受けるには、症状と交通事故の因果関係を認めてもらう必要があります。

交通事故の直後に病院に行かなかったり、通院を途中でやめたりした場合などは因果関係が認められないこともあります。

また、交通事故から年数が経過するほど因果関係の証明は難しくなるでしょう。

たとえば、事故から5年後でも、継続的に治療やリハビリを行っていて因果関係の証明ができれば認められる可能性はゼロではありません。

(3)医学的に証明できる

後遺障害等級認定を受けるには、医学的かつ客観的に障害が残っていることを証明する必要があります。

MRI、CT、レントゲンなどの画像上で異常所見があることが理想的です。

しかし、むちうちのように本人には自覚症状があるにも関わらず、画像での証明が難しい後遺症もあります。

そういった場合は、神経学的検査による証明を試みることになります。

神経学的検査には、ジャクソンテスト、スパーリングテスト、ラセーグテストといったものがあり、後遺障害等級の認定を受けるには、これらの検査が陽性となっていることが必要になります。

3.交通事故の5年後まで後遺症が残ったときの対処法

交通事故の5年後まで後遺症が残ったときの対処法

後遺症に対する補償を受けるには後遺障害等級認定を受ける必要があります。

もっとも、事故から5年も経過していると、因果関係の証明が難しくなってしまいます。

しかし、事故から時間が経過している場合でも、後遺症に対する補償を受けられる可能性はあります。

そのためには、少なくとも以下のような対処法を実行する必要があるでしょう。

  • 病院で診察を受ける
  • 弁護士に相談する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

(1)病院で診察を受ける

交通事故の後遺症の疑いがあれば、事故から5年経過していても病院で再度診察を受けてください。

繰り返しになりますが、後遺障害等級認定を受ける際には医師が作成した「後遺障害診断書」が必要です。

そのため、診察を受けて事故による後遺症なのかを医師にしっかり診察してもらわなければなりません。

この際、これまで通院歴がない病院ではなく、事故後の治療の際に通院していた病院へ行った方がスムーズに話が進むでしょう。

症状が続いているために長年整骨院へ通っているという方も、後遺症の診断を受けるには整形外科などの医師の診察を受ける必要があります。

整骨院や接骨院では、後遺障害診断書を作成してもらえないので注意してください。

(2)弁護士に相談する

医師に「後遺障害診断書」を作成してもらえたとしても、事故から5年経過していると後遺障害等級認定を受けるのは簡単ではありません。

また、加害者側に後遺障害に対する損害賠償請求をしようと考えていても、過去に示談が成立していると示談書の内容次第で請求ができない場合もあります。

さらに、損害賠償請求権が消滅時効を迎えているケースもあります。

そのような事態に備えるためには、事前に弁護士に相談することをおすすめします。

後遺障害等級の認定を受けられる見込みがあるか、時効が完成していないかどうかなどを確認することができるでしょう。

まとめ

交通事故から5年後でも怪我の後遺症が残ってしまうことはあります。

しかし、事故から期間が空いてしまうと交通事故との因果関係の証明が難しくなるので、後遺障害等級が認定されない可能性があります。

後遺障害等級が認定されれば、加害者側に損害賠償を請求できますが、示談書の内容によっては請求できないこともあるので注意が必要です。

事故から時間が経っても症状が残っており、事故の後遺症かもしれないと気が付いたときは、必ず病院で診察を受けましょう。

さらに、後遺障害等級認定を受けるためにも、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士のサポートを受ければ、金銭面や精神面での不安を解消でき、後遺症の治療に専念できるようになります。

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執筆者 野沢 大樹 弁護士

所属 栃木県弁護士会

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