差し押さえは解除できるの?3つの解除方法とできないケース
「差押えを解除することはできるのか」
「差押えを回避するにはどうしたらいいのか」
債権者から督促が届き、財産を差し押さえられる危険性がある人の中には、差押えは回避できるのか、もし差し押さえられてしまったら後で解除してもらうことはできるのか、気になっている人もいるのではないでしょうか。
本記事では、財産が差し押さえられたときの注意点や財産の差押えの解除の可否についてご説明します。
1.差し押さえの解除は難しく、受ける前の対処がベスト
債権者が裁判所に申立て、判決などの債務名義を取得すると差押えが実行できる状態になります。
いざ財産の差押えを受けると、差し押さえられた財産を手元に戻すことは難しいと言わざるを得ません。
たとえば、給与の差押えを受けた場合、債権残高に達するまで将来にわたって継続して差押えの効果は継続します。
差押えを行った債権者であれば差押えを解除することはできますが、通常差押えとなるまでに費用と労力をかけているため、債権者が解除に応じることはありません。
そのため、差押えを解除するためには債務の全額を返済するか、差押え行為自体が違法であるという申立てを裁判所に行い、差押えを解除する判決を勝ち取ることしかありません。
差押えが違法であることは現実的ではないため、差押えを受ける前に行動することが重要となります。
2.差し押さえを受けてしまった時の3つの解除方法
差押えは借金を滞納したことで突然行われるわけではなく、裁判所を介しての強制的な手続きであるため、事前に差押えの可能性を察知する機会は複数回あります。
そのため、差押えを受ける前に弁済や債務整理を行うことが最重要となります。
では、そのような手段を採らずに差押えを受けてしまった場合には、どうすればいいでしょうか。
この章では差押えを解除する方法について順にご説明します。
(1)自己破産や個人再生を申し立てる
債権者に給与等を差し押さえられた場合、自己破産や個人再生の申立てを行うことで、差押えを中止してもらえます。
自己破産や個人再生の概要は以下のとおりです。
- 個人再生:借金返済が困難であることを裁判所に認めてもらった上で、借金を債務額に応じた一定の割合で減額して原則3年で返済していく再生計画案の認可決定を受け、再生計画に従って返済することと引き換えに残りの債務を免除してもらう手続。
- 自己破産:現在の財産や収入では借金の返済が困難であると裁判所に認めてもらい、借金の支払義務を免除(「免責」といいます。)してもらう手続。
これらの手続きは、債務超過で、収入によっては返済が不能であることを理由に、裁判所によって債務の減額や免除を公的に認めてもらう手続きです。
これらの手続きにおいては、法律に基づき借金の処遇を決めるため、差押えの効果を中止することができるのです。
ただし、いずれの手続きも、必要書類をそろえた上で裁判所へ申立を行った後にしか差押えは中止できないため、早期迅速な対応が必要となります。
(2)不服申立制度を活用する
借金の存在に不服な場合など債権者から差押えを受ける理由が特にない人は、民事執行法上の不服申立制度を活用できます。
この不服申立制度には、債務者が権利や異議の主張ができる手続で、差押えの理由となった債権そのものについて争う請求異議の訴えという手続きがあります。
これは、例えば、債権者から訴訟を起こされて、債権者の請求を認める判決が出てしまったため、急いで借金を返済したにもかかわらず、差押えがされてしまったような場合に、債権が消滅したとして差押えの排除(債務名義の執行力を排除)をするための訴えです。
また、請求異議の訴えの他にも、差押えの手続に不服のある場合は執行異議又は執行抗告という制度も用意されています。
いずれも専門性の高い手続ですので、弁護士が代理して行うことが一般的です。
(3)差押禁止債権の範囲の変更を申し立てる
「差押禁止債権の範囲の変更」という制度があります。
たとえば、生活保護費や公的年金が支払われる口座が差押えを受けた場合、全く生活が立ち行かなくなってしまうことが考えられます。
このような場合には、裁判所に申立を行うことで、実情を勘案して、差押えの範囲の変更について判断をします。
これにより、債務者の生活状況を考慮して範囲の変更が認められると、差押命令の全部または一部を取り消すことができます。
ただし、一部のみの取り消しとなった場合は差押えは続行します。
差押え自体を解除できるわけでは無いので、根本からの解決を図りたい場合は先述した個人再生や自己破産といった債務整理手続をとるほうがよいでしょう。
3.税金等の租税公課の滞納によって発生した差押えは解除できない
税金等の租税公課は、債務整理を行ったとしても、債務の減免を受けることができません
そのため、差押えを免れることもできません。
ただし、税金の滞納によって差押えが決定した場合でも、強制執行によって生活が著しく制限される恐れがあるときは、差押えの執行が停止される可能性があります。
また、租税公課に関連した差押えにも不服申立制度が設けられています。
税務署長が決定した差押え処分に対して不服がある場合は、差押え決定の通知を受けた日の翌日から3か月以内であれば、国税不服審判所長に対して審査請求が可能です。
国税不服審判所長が税務署長の処分に正当性がない場合は差押えは解除され、処分に正当性があると判断した場合は差押え処分の効果が継続します。
まとめ
差押えの処分を受けることになっても条件が整えば、差押えが解除されることもあります。
しかし、原則としては一度債権者に財産が差押えられてしまうと手元に戻ってこなくなるので、差押えが実行される前に行動に移すことが重要です。
弁護士法人みずきでは借金に関する相談は無料で受け付けておりますので、差押えでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
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