給料が差し押さえられるのはどんな場合?原因や範囲、その後の手続について解説
「給料の差押えはどのような場合にされるのだろう」
「給料全額が差し押さえられてしまうのだろうか」
税金や借金の返済を滞納してしまうと、給料が差し押さえられるかもしれないのではないかと、不安を感じられることと思います。
たとえ給料が差し押さえられることになっても、差押禁止の範囲が定められており、全額が差し押さえられることはありません。
本記事では、給料差押えに至る原因や金額、差押えに至るまでの流れについて解説します。
1.給料が差し押さえられる3つの原因
差押えとは、債権者が債権を回収するために、法律に基づき、債務者による預金や不動産などの財産の処分を禁止することです。
給料の差押えという場合、ボーナス(賞与)や退職金も対象になります。
ここからは、どのような場合に給料が差し押さえられるのかを確認していきましょう。
(1)借金返済を滞納した場合
借金返済の滞納があると、給料差押えの原因となります。
たとえば、銀行や消費者金融からの借入れ、クレジットカード支払などの延滞分です。
債権者が裁判所に訴訟提起や支払督促の申立てをして債務名義を取得した上で、さらに裁判所に給料差押えの申立てをして、これが認められると給料が差し押さえられます。
そのため、支払が遅れた程度ですぐに給料が差し押さえられることはありません。
多少滞りがあったとしても、早めに返済することで差押えを回避できます。
(2)税金を滞納した場合
税金の滞納も給料差押えの原因となります。
税金滞納による差押えは、裁判所の手続がなくても実行できます。
借金滞納と比較すると早い時期に差し押さえられるおそれがあるため、税金の滞納は早めに解消することが望ましいです。
(3)養育費の未払いの場合
離婚の結果、養育費の支払を取り決めたにも関わらず未払いがあった場合、差押えとなることがあります。
公正証書や調停の和解調書の内容をもとに給料が差し押さえられるかもしれません。
もし、何らかの都合で養育費が支払えなくなった場合は離婚相手に事情を説明して猶予を申し出るのがよいでしょう。
2.給料差押えは全額が対象になる?
給料が差押えとなった場合でも、全額が対象となるわけではありません。
生活が立ち行かなくならないよう、差押えの範囲は制限されているのです。
差押えの原因によってそれぞれ差押えができない範囲は異なります。
ここからは、ケースごとにいくらまでが差し押さえられるのかを確認していきましょう。
(1)借金返済を滞納した場合
借金など、一般の債権の回収のために給料の差押えがされる場合、以下のいずれかの金額は差押えの対象となりません(民事執行法152条1項、民事執行法施行令2条)。
- 給料の手取り金額の4分の3
- 手取り金額の4分の3が33万円を超える場合、33万円
たとえば、手取り金額が40万円の場合、差し押さえられる金額は4分の3の30万円を超える部分の10万円です。
一方、手取り金額が45万円の場合、差し押さえられる金額は33万円を超える部分の12万円となります。
(2)税金を滞納した場合
税金を滞納して給料差押えとなった場合でも、給料の内、以下の金額の総額は差押えの対象となりません(国税徴収法76条、国税聴取法施行令34条)。
- 所得税に相当する金額(1000円未満は切上げ)
- 住民税に相当する金額(1000円未満は切上げ)
- 社会保険料に相当する金額(1000円未満は切上げ)
- 滞納者本人につき10万円、滞納者と生計を一にする配偶者その他の親族ごとに4万5000円を加算
- 総支給額から1~4を差し引いた金額の20%(1000円未満は切上げ)
例として、給料が20万円、上記1〜4の総額が15万円だったケースで試算してみましょう。
- 総支給額から1~4を差し引いた金額の20%:(20万円-15万円)×20%=1万円
- 1〜5の総額を差し引いた残額:20万円-(15万円+1万円)=4万円
つまり、差押えの上限金額は4万円です。
もし給与が10万円以下で独身である場合、4の金額を上回ることがないので、差し押さえられる給料はありません。
また、給与が19万円以下で妻と子ども一人と生計を一にしている場合も、給料は差し押さえられません。
所得税や住民税、社会保険料は人によって異なるため、ご自身で計算してみることをおすすめします。
(3)養育費の未払いの場合
養育費の未払いが原因で給料差押えとなった場合、以下の金額は差押えの対象となりません(民事執行法152条1項および3項)。
- 給料の手取り金額の2分の1
- 手取り金額の2分の1が33万円を超える場合、33万円
たとえば、手取り金額が40万円の場合、差し押さえられる金額はその2分の1を超える部分にあたる20万円です。
一方、手取り金額が70万円の場合、差し押さえられる金額は33万円を超える部分の37万円となります。
3.給料差押えの流れ
給料はいきなり差し押さえられるわけではありません。
原因によって流れが異なるので注意しましょう。
それぞれ順番に解説していきます。
(1)借金返済を滞納した場合
借金返済を滞納すると、通常は以下の流れで給料差押えとなります。
- 郵便や電話による督促、一括返済の請求
- 訴訟や支払督促などの法的手続
- 差押えの申立て
- 裁判所からの債権差押命令
返済が遅れてしまうと、まず郵便物や電話、訪問などによる督促が行われます。
これに対応しないままでいると、一括返済を請求されることもあります。
催促が複数回行われても対応しないでいると、債権者は訴訟提起や支払督促の申立てを行います。
訴訟の場合は訴状が、支払督促の場合は支払督促がそれぞれ裁判所から送られてくることになります。
これらの手続に対しても何もしないでいると、判決や仮執行宣言付き支払督促が確定し、債権者による強制執行の申立てが可能な状態になります。
判決等が確定しても支払をしなければ、債権者による差押えの申立てがされ、これが認められると裁判所から債権差押命令が出され、給料が差し押さえられてしまいます。
(2)税金を滞納した場合
税金を滞納した場合、借金等とは違って裁判の手続なしで差押えが可能です。
差押えまでの流れは以下のようになっています。
- 延滞税の発生
- 督促状による催促
- 差押調書の送付
- 差押え
所得税や住民税などの税金の納付期限を1日でも過ぎると滞納したことになります。
その後、納付期限を過ぎてから、国税の場合は50日以内、地方税の場合は20日以内に督促状が送付されます。
督促状の送付を受けたにもかかわらず、支払をしなければ送付の日から10日で差押えが可能となります。
(3)養育費の未払いの場合
裁判所の調停や審判で決まった養育費について未払いがある場合は、以下の流れで給料差押えに至ります。
- 裁判所からの履行勧告
- 強制執行
- 差押え
履行勧告とは、家庭裁判所の調停、審判で決めた養育費支払を履行しない者に対して、履行を勧告するものです。
養育費を請求する側が家庭裁判所に対して履行勧告の申出をすると、裁判所からの勧告が行われます。
勧告されても支払わない場合には、調停調書や審判書を債務名義として差押えの申立てをされることになります。
履行勧告については行われることなく強制執行となるケースもあるため注意しましょう。
まとめ
本記事では、給料が差し押さえられる場面や差押えを受ける範囲、その後の手続の流れなどについて解説しました。
税金や借金、養育費などを滞納すると、給料差押えの原因になります。
給料の全額が差し押さえられるわけではありませんが、生活に支障が出る可能性は否定できません。
借金については債務整理、養育費については事情によって減額調停の申立てによって、滞納を回避することができる可能性があります。
滞納が発生してしまった場合には、専門知識を持った弁護士に相談し、差押えを回避できるようにしましょう。
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