租税債権や社会保険料の取扱いについて
普段何気なく支払っている税金や社会保険料について、会社などの法人が破産する場合にはどうすればよいのか疑問に感じることがあるかもしれません。
以下では、法人が破産した場合の租税債権や社会保険料の取扱いについて説明します。
1.租税等の請求権とは
「租税等の請求権」とは、「国税徴収法又は国税徴収の例によって徴収することのできる請求権」のことをいいます。
国税徴収法によって徴収することのできる請求権の具体例として、所得税、贈与税、相続税があります。
「国税徴収法の例によって徴収することのできる請求権」とは、国税ではないものの、国税の場合と同様に徴収することができる請求権のことをいいます。
具体的には、市町村民税、固定資産税、事業税、自動車税などの地方税があります。
また、国民健康保険の保険料、国民年金の保険料なども、滞納した場合には、国税徴収法の例によって徴収することが可能となり、これらも租税等の請求権に該当します。
2.滞納税金や滞納社会保険料を支払わなければならないのか
(1)原則として支払う必要はない
破産手続開始決定がされることは、会社などの法人の解散事由となっています。
そのため、破産手続開始決定がされるとその会社は解散され、破産手続の終了とともに破産者である会社は消滅することになります。
債務者である破産者が消滅するため、税金や社会保険に関する債権も消滅することになります。
したがって、法人が破産した場合には、原則として、滞納税金や滞納社会保険料を支払う必要はありません。
(2)例外として支払う必要がある場合
前記のとおり、法人が破産した場合には、原則として滞納税金や滞納社会保険料を支払う必要はありません。
しかし、破産会社の財産を個人又は別会社などが所持している場合には、例外的に当該滞納税金等を支払う必要があります。
仮に名義を変更していたとしても、財産隠しに加担しているような場合には、その財産に対して課税されることになると考えられます。
3.租税債権の破産手続上の取扱い
税金や社会保険料など租税等の請求権は、国民全体で負担すべき金銭です。
そのため、公益的な見地から、一般の債権よりも回収の必要性が高いと考えられています。
そこで、破産手続上、租税等の請求権は、多くが財団債権または優先的破産債権として扱われます。
財団債権とは、配当に先立って弁済を受けることができるものをいいます。
具体的には、破産手続開始前の原因に基づいて生じた租税等の請求権のうち、納期限が未到来または納期限から1年を経過していないものや、破産手続開始後の原因に基づいて生じた租税等の請求権のうち、破産財団の管理、換価及び配当に関する費用に該当するものがあげられます。
優先的破産債権とは、一般の破産債権に先立って配当を受けられるものをいいます。
上記財団債権にあたらないものの多くが優先的破産債権となります。
まとめ
今回は、租税債権や社会保険料の取扱いについて説明をしました。
法人破産を検討される場合には、会社の財産状況を早急に調査する必要があります。
早期かつ適切に対処をすることで、円滑に倒産手続を行なうことができます。
滞納税金や滞納社会保険料の処理をどうすればよいのか、あるいは、これから税金や社会保険料の支払いをどうすればよいのかお困りの法人役員の方は、なるべくお早目に弁護士にご相談されることをおすすめします。
関連記事