破産手続開始決定から破産手続終了までの間に破産者がするべきこととは?

破産者は、破産申立後にどのようなことをするべきなのでしょうか。

今回は、破産手続の申立をし、破産手続が終了するまでの間に破産者に課される義務等について説明していくことにします。

1.破産管財人に対する説明義務

破産者には、破産管財人(破産者の財産を管理、調査、換価する業務を行う裁判所から選任された弁護士)に対する説明義務があります。

破産管財人に対して、破産財団に関する情報、その他一切の破産管財業務(財産の管理、調査、換価)のために適切な情報を提供しなければなりません。

その説明義務違反は免責不許可事由に該当し借金が消滅しなくなることもあります。

また、説明を拒んだり、偽りの説明をした場合には刑事上の処罰があることにも注意が必要です。

2.居住制限

申立代理人は、破産者に対し、破産者が破産手続中に住所を変更したり、遠隔地への出張、旅行をする場合には、各裁判所の運用によって異なりますが、破産管財人の同意を得るか、裁判所の許可を得る必要があるとされています。

東京地裁の運用では、破産者が居住地から離れることについては、破産管財人の同意のみで十分であるとされ、個別に裁判所の明示的な許可の決定がされるということはされていません。

破産管財人の同意を得ない転居については、調査への協力をしないことになり、免責不許可事由に該当し借金が消滅しなくなることもありますので、注意する必要があります。

仕事で出張に行くことが多いことが予想される場合には、申立代理人にパスポートを預けるなどの措置をとる必要も場合によってはあるでしょう。

仕事等で破産手続中に出張をすることが予想される場合には、破産管財人との打合せなどで破産管財人に予め説明しておくことで同意や裁判所の許可を得るのがスムーズになるでしょう。

なお、破産者が居住制限に違反し、説明義務を果たさない場合には、裁判所が引致状というものを発し、破産者に強制的に出頭するよう命令が出ることもあります。

3.郵便物の回送・開披

法律上、破産手続中の郵便物の破産者宛の郵便物を破産管財人に送ること(これを「郵便物の回送」といいます。)は任意であるとされていますが、破産者の財産、債権債務関係の実態を把握するために有効であると考えられています。この郵便物の回送によって、新たに債権者が発見されることなどもあります。

そのため、破産手続開始決定後、破産手続が終了するまでの間、破産者宛の郵便物はすべて破産管財人に配達されることになること、および破産管財人に配達された郵便物は、破産管財人が封を開いて(これを「開披」といいます。)、破産者の財産(これを「破産財団」といいます。)に関するものであるかどうかを調査することになります。

この郵便物について、破産者は、破産管財人から説明を求められた場合には、適宜かつ適切な説明をする必要があります。

4.財産状況調査への協力

破産管財人は就職後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手し、破産手続を迅速に進めます。

その際、破産者、その代理人、法人の役員等には破産管財人に対する説明義務だけではなく、破産者はその重要財産を記載した書面を裁判所に提出し、重要財産を開示する義務を負っています。

なお、東京地裁では、申立書に添付する資産目録のほかには重要財産の提出を求める運用はしていませんが、破産財産の散逸を防ぐために、破産手続開始決定前においても、事件の概要や財産の管理状況を管財人に伝えるようにしましょう。

東京地裁では、破産管財人との打合せ補充メモというものを準備しており、それを代理人が作成し、破産管財人に交付することになっています。

その内容としては、預かり金・回収金の状況、受任通知、代表者の現住所、連絡のとれる電話番号、関連破産申立の有無、破産会社の営業状態、従業員の解雇の有無、労働債権の状況、不動産状況、会社の印鑑や帳簿等の保管状況などです。

破産管財人には、破産者の申告に加えて、帳簿書類・決算書の精査、郵便物の点検を行なって、破産者の財産を確認、調査し、売却等をおこなって債権者に配当する財産を増やしていくことになります。

破産者としては、食料品等の特に劣化する可能性が高い在庫等や保管料がかかる動産で早期に売却する必要がある財産等については、積極的にその情報を破産管財人に提供して、売却の協力を行なわなければなりません。

場合によっては、破産申立後、破産開始決定前の間に、早期に売却を行なう必要がある財産がある場合には、破産管財人との打合せを検討してみてもよいでしょう。

5.否認該当可能性行為の申告

破産者は、債権者に受任通知を提出した後においても、それまで個人的に世話になっていた債権者や回収、強硬な債権者などの特定の債権者に対してのみ返済をしてしまうことが少なからずあります。

この返済は、破産法の基本理念である債権者平等に反することから、後に破産管財人から取り消しを受ける可能性がある行為で、これを否認該当可能性のある行為といいます。

このような行為は、破産管財人が財産調査を行なう過程で、発見されるものです。

そのため、破産者は上記のような行為を行なってしまった場合には、正直に申立代理人にその事実を申告しなければなりません。

仮に、特定の債権者に対する担保の提供や債務の返済を行なった場合には、破産手続開始決定が確定した場合に、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金に処せられることがあります。

6.生活

破産者の中には、破産の申立後に、申立前までは資金繰り等で頭の中が一杯であったことから解放され、遊興にふけるかたもでてきます。

債権者は破産により債権を回収できなくなるか、回収できたとしても僅かな金額になります。

しかし、居住地の近くに債権者等がいる場合には、破産の結果、その会社の資金繰りが悪化し、倒産することもあります。そのような状況下で、行動を慎んでいない破産者をさらしてしまうと、感情的なトラブルを招くことにもなりかねません。

破産者の財産状況を報告等する債権者集会では、何も混乱なく終了することが通常ではあります。

しかし、債権者が破産者の生活状況をみて、債権者集会での混乱を無用な混乱を招くことにもなります。

破産者は、破産手続中には、その日常生活においても、法的な義務ではありませんが、行動を慎むようにするべきでしょう。

他方で、繊細な破産者の中には、破産の申立後に、債権者に対する罪悪感から、心身に不調をきたしたりする方もいます。

もちろん、債権者に対して迷惑をかけることになりますのである程度の罪悪感は持つ必要はあるかとは思いますが、破産はあくまでも今後の生活を立て直すことにありますので、前向きに人生をリセットする気持ちで考えるくらいが丁度良いのではないでしょうか。

まとめ

以上、破産手続申立後から終了までに破産者がするべきことについて簡単に説明しました。

実際に、会社や個人の破産をした場合にどうなるかはケースバイケースです。破産を検討されている会社経営者の方や個人の方は、お早目に破産手続に精通した弁護士等の専門家にご相談することをおすすめします。