個人再生手続で借地権付不動産の清算価値はどのように評価される?
個人再生手続とは、債務を通常5分の1に圧縮(債務が500万円の場合は100万円に圧縮します。なお、最大で100万円にしか圧縮できないので、債務が300万円の場合は100万円に圧縮します。)して、それを3年から5年間の間に分割返済する手続です。
もっとも、個人再生を考えるほどに債務があったとしても、個人再生を利用する人(以下、「再生債務者」といいます。)に、土地や建物などの財産がある場合もあります。
この場合、個人再生で債務を5分の1に圧縮した金額よりも、破産をして土地や建物、お金に換えた場合の合計金額(これを「清算価値」といいます。)が大きいのであれば、その清算価値までしか債務を圧縮できません。
これは、個人再生をする場合には、最低限破産をする場合よりも、多くの利益を与えましょうと考えられているからです。
たとえば、500万円の債務があるのであれば100万円に圧縮できる可能性がありますが、破産をした場合に財産を売り払って200万円を債権者に配ることができるのであれば、個人再生の場合も200万円までしか圧縮できませんということです。
今回は、個人再生手続において借地権や使用借権がついている不動産がどのように評価されるのかについて、説明していくことにします。
1.借地権及び使用借権とは
(1)借地権の評価方法
裁判所からは、不動産業者の簡易な査定書を求めてくることが多いでしょう。
借地権をどのように評価するかは不動産業者にとっても非常に難しい問題のようです。
評価方法としては、一般的には路線価図の借地権割合を参考にすることが多いでしょう。
ここで路線価とは、国税庁が発表している道路に面する宅地1平方メートルあたりの評価額をいいます。
この路線価は、相続税や贈与税を算定する目安として用いられています。
これを地図としてまとめたものを路線価図といいますが、これは全国の税務署や国税庁のホームページで閲覧することができます。
不動産業者にお願いをする場合は、単なる路線価図の借地権割合ではなく、その地域の現状を踏まえた査定を反映するように依頼する必要があるでしょう。
例えば、都内の一等地の借地権は流通性が高く、そのため価値が高いものであるといえますが、逆に田舎の広大な土地の場合には、借地権の流通性はなく、そのため価値は低いというようなこともあるからです。
(2)使用借権の評価方法
使用借権は上記のとおり、強力な権利ではありません。
そのため、大きく見積もっても、その価値は底地価格の1割程度と考えられています。
2.建物と土地の所有者が異なるが共同担保となっている場合
(1)担保となっている借地権付不動産の清算価値
担保となっている不動産の清算価値は、不動産の価格から残りの担保に入っている債務の残額を差し引いて算出するのが通常です。
差し引いた結果がマイナスであれば、清算価値は0円です。
たとえば、不動産の価格が2000万円で、その不動産が担保となっている債務が1500万円だとすると、その清算価値は2000万円-1500万円=500万円です。
他方で不動産の価格が2000万円で、その不動産が担保となっている債務が2500万円の場合(いわゆるオーバーローンの場合)は、2000万円-2500万円=-500万円となり、清算価値はこの場合0円と評価されることになります。
(2)共同担保となっている借地権付不動産の清算価値
それでは、建物と土地の所有者が異なりますが、これらの土地建物が共同担保となっている場合、借地権付建物の価格からは担保分としていくらを差し引いて清算価値を算出すべきでしょうか。
たとえば再生債務者である鈴木さんが、佐藤さんの所有している土地を借りて、その土地の上に建物を所有しているケースを想定してください。
鈴木さんは、住宅ローンを組んでおり、その建物についてだけでなく、土地についても住宅ローンについて共同で抵当権を付けているようなときに、どのように建物の清算価値を算出するべきでしょうか。
この場合は、たとえば佐藤さんの土地の価値が300万円(更地の価格は1000万円だとした場合、借地権価格の700万円だとすると、土地の価値は更地価格1000万円-借地権価格700万円=300万円です。)とし、鈴木さんの建物は1000万円(借地権価格は700万円で、建物の価格は300万円だとすると、建物の価格は借地権価格700万円+建物価格300万円=1000万円)だとします。
そして、住宅ローンは1500万円だとします。
この場合、住宅ローン1500万円はすべて鈴木さんが負担すべきものです。
そうすると、建物の清算価値は1000万円-1500万円=-500万円となりマイナスですから、清算価値は0円となります。
まとめ
今回は、個人再生手続で借地権付不動産、使用借権付不動産はどのように評価されるのかについて簡単な事例をあげて説明をしましたが、具体的に不動産の価値をどのように評価すべきであるかは事案によって異なります。
借地権付不動産、使用借権付不動産を所有されている方で、個人再生手続の利用を考えられている方は、お早目に弁護士に相談されることをおすすめいたします。
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