個人再生手続とリース契約

私は、個人再生手続を利用することを考えていますが、いわゆる個人事業主に該当します。

個人事業には、パソコンと業務用のコピー機が必要で、業者から現在はリースしている状況です。

その事業には、パソコンとコピー機が必要で、それがなければ事業を営むことができません。

そのため、再生計画を建てたとしても、収入減がなくなり、借金を返済していくことが困難です。

再生手続を利用したとしても、リースしているものを使用し続けることは可能なのでしょうか。

ファイナンス・リースとは

個人事業を営んでいる場合、事業に必要なOA機器等をリースしている場合があり、事業をそのまま継続していく場合には、そのOA機器等を継続して使用することが必要なことがあります。

リース契約には、様々な種類がありますが、ファイナンス・リース契約というものである場合が多いです。

ファイナンス・リース契約とは、目的物件を事業のために利用しようとするユーザーがリース会社に対して、リースの申込をします。

そして、リース会社は目的物の所有者であるサプライヤーから目的物を購入して、ユーザーに使用させます。

ユーザーの使用の対価として、リース料の支払を受けて、購入資金の回収と一定の利益を上げようとするものです。

その中でも、フルペイアウ方式のファイナンス・リース契約とは、リース会社がリース契約期間中にリース物件の購入費、金利及びその他の経費等を全額回収できるようにリース料金が設定されているものです。

(1)申立すること自体をリース契約の解除事由としている場合の対処法

フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約には、ユーザーが再生手続開始の申立をしたことを契約の解除事由とする特約が定めている場合が多くあります。

その場合、再生手続開始の申立をしたことを理由にリース契約を解除されることになります。

そうすると、契約が解除されてしまうのですから、リース物件を利用することはできなくなってしまうとも考えられます。

もっとも、この問題に関して最高裁判所は「フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約に基づくリース物件がユーザーに引き渡された後に再生手続が開始され、再生手続開始の申立をリース契約の解除事由とする特約に基づいてリース会社がリース契約を解除する旨の意思表示をした場合において、この特約の部分を民事再生手続の趣旨、目的に反するものとして無効と解するのが相当である」と判断しました。

そのため、再生債務者は、リース契約書にユーザーが再生手続開始の申立をしたことがリース契約の解除事由という特約が定められていても、その特約は無効であると主張することができます

(2)リース料金が未払いである場合の対処法

#1:リース料金債権との取り扱い

先ほどの最高裁判例によって、再生手続開始の申立をリース契約の解除事由とする特約の効力を無効と主張することができます。

しかし、フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約に関して、判例は、リース物件はリース料金債権の担保としての意義を有するものとしており、リース料金債権は別除権(再生手続外で担保権が行使できる権利)付きではありますが通常の債権(再生債権)であると考えられています。

通常の債権ということであれば、リース料金については再生計画に基づいて支払をしなければならないということになり、リース料金が未払いの場合は手続と関係なくリース料金を返済することができません。

そのため、再生手続開始時にリース料金が未払いであるといった別の解除事由がある場合には、リース会社はリース契約を解除してリース物件を引き揚げることが可能になり、その結果ユーザーはリース物件を利用できなくなってしまいます。

再生債務者としては、リース物件が他のリース業者から調達できる代替性のあるようなものである場合には、その引き揚げに応じて、新たに他の業者との間でリース契約を結ぶことが考えられます。

他方、リース物件が他のリース業者から調達できるような代替性のあるものではない場合には、これを継続して使用する必要性が高いといえるでしょう。

こういった場合に、リース物件を継続して使用するための方策としては、再生手続の申立をし、手続が開始した後に、リース会社との間で別除権協定を結ぶという方法が考えられます。

#2:別除権協定とは

この別除権協定をリース会社との間で締結すると、残存リース期間の利用権相当額について、特別に再生手続によらずに返済することができるようになります。

その結果、利用権相当額を支払って、ユーザーはリース物件を継続利用することが可能となります。

簡単な具体例をあげると、以下のようになります。

再生債務者は喫茶店経営者でした。

厨房機器等をリースで利用していましたが、返還をしてしまうと、事業の継続が困難となり、その結果再生計画に基づいて債務を返済していうことができなくなってしまうという事情がありました。

そこで、再生債務者は、リース会社との間で、リース会社がリース物件を引き揚げない代わりに、リース物件の利用権相当額を分割して支払うという内容の協定を結びました。

なお、別除権協定の締結について、裁判所の許可は必要とされていませんが、東京地裁では、個人再生委員(申立人の財産や収入の状況等を調査するなどの仕事をする裁判所から選任された弁護士)に、協定締結をする必要性、協定の内容について十分に説明する必要があるとされています。

以上、簡単に個人再生手続におけるリース契約の取り扱いについてご説明いたしました。

具体的な場合にリース契約をどう取り扱うべきかについては、具体的に事情によって異なります。

そのため、個人再生手続の利用を検討されている方は、個人再生手続に詳しい弁護士にお早目にご相談されることをおすすめします。