再生計画の履行可能性~マイホームだけはあきらめられない~
Aさんのご相談 「私が、個人再生手続を利用すると現在ある借金500万円は、100万円になること、3年で弁済していく場合、2万7778円を弁済していくことになるんですね。 しかし、現在の毎月の給料からすると、2万7778円を確保することが難しいかも知れません。 この場合でも、再生手続を利用できる方法はないでしょうか。破産は避けたいんです。マイホームだけはあきらめられないんです。」 |
民事再生法は、「再生計画が遂行される見込がないとき」には再生計画を認めないとしています。
これを再生計画の履行可能性といいます。
上記Aさんのご相談では、毎月の給料からAさんの家計において、毎月の給料・報酬から必要な生活費を除いた金額(弁済原資といいます)が毎月の弁済額である2万7778円以上確保することができるかどうかを、再生計画の履行可能性の判定の目安とすることになります。
裁判所には、収入と支出から臨時的なものを除いて、経常的な収入から継続的な支出を差し引いた上で、弁済原資の余剰があることを示す必要があります。
弁済原資が毎月の返済していく額に足りない場合は、どうすればよいのでしょうか。
以下では、解決策として1~3を挙げておきました。
(1)家計の状況を見直す
ご相談時の家計の収支をみると、毎月計画的に返済をしていくのが不可能であったり、難しいといった場合でも、家計の状況を見直すだけで、再生計画の履行可能性が確保できる可能性があります。
余分な出費がある場合には、余分な出費を切り詰めることによって、再生計画案の履行に必要な資金を確保することが可能ということもあり得ます。
たとえば、食費や交際費がかかり過ぎている場合や、ご家族のスマートフォンなどの通信利用料金が嵩んでいる場合、食費・交際費を抑える、契約内容を変更するなどして節約するだけで、毎月再生手続を利用した上で支払っていく金額を確保することができる場合も多くあります。
家計の状況を見直した結果、再生計画の履行可能性があるといえれば、再生手続を利用することは可能ということになります。
なお、履行可能性があることを示すために、申立の際には、給与明細、源泉徴収票、確定申告書、課税証明や、直近数か月分の家計の収支を記載した書面(家計簿)を裁判所に提出します。
(2)親族の援助を前提として再生計画を立案する
家計の状況を見直して、生活費を切り詰めても、毎月返済することが不可能であったり、困難である場合、親族の援助を前提に再生計画案を作成して、再生手続の申立をすることは可能でしょうか。
#1:家計が同一の場合
この場合には、通常、生活費は共通ですので、援助ということを考える必要はなく、個人再生手続の申立時に家計収支表により、世帯全体の収入と支出による履行可能性を判断し、弁済が可能であれば、それを前提に再生計画案を作成することになります。
#2:家計が別々の場合
それでは、別々の親族や同居していた家計が別々の場合に、親族からの援助を前提にして、再生計画を作成していくことも場合によっては可能でしょうか。
これは、各裁判所の判断に任せられるところですが、援助をする親族が必要とされる協力をする資力があること、援助をする親族が、必要とされる金額を債務者の世帯に組み入れる見込があることなどの事情を踏まえて再生計画を認可する運用もされています。
具体的に裁判所に提出資料としては、親族の収入額(源泉徴収票)、収入が継続的に得られること(親族の年齢を明らかにする戸籍謄本の写し、勤務先の定年の定めが記載された就業規則等)、必要額を世帯収支に組み入れること(従前の世帯全体の収支に対する親族からの組み入れ額、親族の陳述書)が必要と考えられています。
(3)返済スケジュールを5年に延長する
個人再生を利用して、弁済期間は3年間であることが原則です。
しかし、「特別の事情」がある場合には、個人再生での返済期間を5年間にしてもらえる余地があります。
個人再生での弁済期間を5年間に延長できる場合とは、3年間での返済が困難であるという「特別の事情」がある場合です。
たとえば、安定して将来において継続的な収入が見込まれるものの、子どもの教育費、家族の医療費、住宅ローンの返済を差し引くと、3年では再生手続を利用することによって圧縮された借金を返さないといえる場合などが「特別の事情」の具体例といえるでしょう。
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