酒類、たばこ取扱業者の破産の特殊性
商品の販売を行なっている会社が破産手続を行う場合、そのままにしておくことで価値の減少のおそれや保管コストの問題があるため、早期に販売(換価)をすることが望ましいです。
その場合、販売(換価)をするために免許が必要なもの等に注意する必要があります。
今回は、販売(換価)をするために免許が必要である業者のうち、酒類及びたばこ取扱業者が破産を行う場合に、その会社の商品をどのように販売(換価)をするべきかについて説明していくことにしましょう。
1.酒類取扱業者
酒類を反復継続的に販売するためには、販売場毎に所轄税務署長による販売業免許が必要とされています。
免許を受けることなく、酒類の販売業を営むと、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることになります。
酒類販売業免許には、卸売業免許と小売業免許があり、卸売業免許は対象とする酒類によって、免許の種類が区分されています。
小売業免許も一般酒類、通信販売等に分かれています。
このように酒類の販売には許可が必要ですので、在庫商品等に種類がある場合には、その販売(換価)に当たって法律違反をしていないかどうか注意する必要があります。
以下では、破産者が酒類販売業免許を有している場合と、酒類販売業免許を有していない場合の2つに分けて、販売(換価)をする方法について説明していくことにします。
(1)破産者が酒類販売業免許を有している場合
#1:破産者が法人の場合
破産者が法人である場合、免許が取消されていない限り、破産者の免許による販売が可能です。
しかし、小売業免許しか有していない場合、他の小売業者に対する販売は卸売になりますので、することができません。
そのため、小売をするか、納入した卸売業者に引き取ってもらうことになるでしょう。
小売を行なった場合、所轄税務署に対して、酒類の販売数量等報告書などの提出をする必要がありますので、所轄税務署に問い合わせをすることが望ましいです。
また、販売(換価)終了後は、免許を利用することがなくなりますので、免許取消の申請を行なうようにしましょう。
#2:破産者が個人の場合
破産者が個人である場合には、免許を有しているのはあくまでその破産者個人です。
そのため、破産者自身が販売(換価)を行なう必要があります。
破産をした後に、破産管財人が選任されたとしても、破産管財人はその免許を用いて、販売を行なうことはできません。
破産手続開始決定後の販売(換価)方法としては、納入業者に返品処理をするか、破産財団から放棄をして、免許を有している破産者に販売(換価)させ、その代金を財団に組み入れる方法があります。
(2)破産者が酒類販売業免許を有していない場合
破産者が飲食店等を経営している場合も、酒類が在庫品として残存していることがあります。
この場合は、酒類販売業免許はありません。
しかし、このような場合には、酒類販売を業としている者と比較して、通常は酒類の数量はそれほど多くはないため、反復継続性の要件を書き、販売業には該当しないことになります。
そのため、通常は販売(換価)に免許は不要と考えることができます。ただ、数量については、取引業者によって異なり一概に少ないとまでは言い切れないです。
その場合、酒類販売の反復継続性の要件をみたし、酒税法に反することもあります。
そのため、販売(換価)をするにあたっては、予め酒税法に反することがないかどうか、所轄税務署に問合せすることをおすすめします。
2.たばこ取扱業者
たばこについては、たばこ事業法により小売販売業を営む場合は、営業所毎に財務大臣の許可を受けなければならないとされています。
これに反する場合の処罰規定も設けられています。
破産者が個人の場合、破産者に対する許可により破産管財人が販売業を営めないことは、酒類と同じです。
さらに、たばこについては、酒類と異なり、破産手続開始決定がたばこ販売許可の取消事由とされています。
これは、法律上裁量的な取消とされてはいるのですが、破産手続開始決定がなされたことが判明すると、ほとんどの場合取消がなされる運用のようです。
そのため個人も法人も、破産手続開始決定後の許可取消により、売却ができなくなる可能性が高いです。
そのため、破産の準備段階で小売をすることが望ましいです。
破産手続開始決定後に販売業の許可が取消された場合には、販売をすることができなくなります。
その場合には、手数料を支払うことにより、返品できる有料返品制度を活用することが考えられます。
具体的には、日本のたばこについては、日本たばこ産業株式会社に返品をすること、まだ配送が完了していない外国たばこについては、配送会社に対して、返品処理との依頼をするなどして対処することを検討します。
まとめ
今回は、酒類及びたばこを取扱う会社が破産をする場合の特殊性について説明しました。
酒類及びたばこを取扱う業者が破産手続を行う場合には、上記の点以外にも問題なる点があります。
早期かつ適切に対処をすることにより、円滑に破産手続を行うことができます。酒類及びたばこを取扱う会社の破産を検討されている経営者の方は、お早めに相談されることをおすすめします。
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