事業を営んでいる方が破産する場合の4つの注意点

任意整理前に注意するべきこと

1.事業を営んでいる方が破産する場合の利害関係人に対する影響

事業を営んでいる場合には、取引先や事業資金の提供をしている金融機関があることから、多くの業者や会社が関係しています。

また、事業を営んでいる場合には、従業員がいることもあります。

事業を営む者が破産申立をすると、最終的には今までの借金を帳消にし、会社の場合には会社そのものがなくなります。

そのため、取引債権者は事業資金を失い、従業員は路頭に迷うことにもなりかねません。

このように、事業を営むものが破産をする場合には、これらの取引業者、会社、従業員などの利害関係人に多大なる影響を及ぼすことになります。

破産は、財産を債権者に配当する手続ではありますが、利害関係人の利害を適切に調整する手続であるとも法に定められています。

そのため、破産によって利害関係人にどのような影響を及ぼすかという点に注意し、適切な対応をすることが重要です。

以下では、利害関係人にどのような影響を及ぼすかという視点で、事業を営んでいる方が破産申立の前に把握をしておくべき点について説明していくことにします。

2.事業内容の把握

事業を営んでいる方が破産申立をする場合、利害関係人に対してどのような影響を及ぼすかを検討するためには、事業内容を把握する必要があります。

事業内容の把握といっても、単に飲食業をやっていますだとか、建設業をやっていますでは足りません。

事業内容の把握は、的確かつ詳細にする必要があります。

そのため、事業の具体的な内容、事業の流れ、どのような利害関係人がいるか、利害関係人の事業の中での役割などを的確かつ詳細に把握する必要があります。

的確かつ詳細に事業を把握していくことによって、利害関係人への影響が不可避の事業の完全廃止だけでなく、利害関係人に影響の少ないM&Aや事業譲渡などをして事業継続をすることも検討することができます。

また、事業継続が難しかったとしても、作成中の商品を完成することが望ましいのか、または完全に事業を停止するべきかについても把握することができます。

事業を完全に廃止するべきかの判断の際に重要なのは、どれだけ配当にあてられる財産を増やせるかだけでなく、利害関係人への影響や、社会的な混乱を防止するという視点を持つことです。

なお、事業の継続をする場合には、申立前に裁判所と相談をして、破産開始後に破産管財人(破産者の財産管理などをするものとして裁判所から選任された弁護士)が事業継続をすることが可能なように段取りをつけておく必要があります。

3.担保権者、税金などの公租公課の把握と資金の確保

事業の流れを把握する中で、債権者、担保権者、税金などの公租公課の把握は一番重要です。具体的には、取引している金融機関はどこか、抵当権者はいないか、税金や社会保険料などのいわゆる公租公課で滞納しているものはないか、などを詳細に把握しておく必要が有ります。

なぜなら、売掛金などが債権者である金融機関による相殺、担保権者から強制執行、税務署からの滞納処分等により失われる可能性があるからです。

その結果、申立資金(弁護士費用や裁判所に納める予納金)が確保できずに申立が遅れることになったり、事業の継続を検討している場合には事業資金が確保できずに今後の事業継続に支障をきたし、最終的には利害関係人に影響を及ぼすことにもなりかねません。

なお、申立資金及び事業資金の確保をするためには、債権者である金融機関からの預金の移動を確実に行うことや売掛金の入金日を正確に把握することが重要です。

4.従業員への対応

事業を営んでいる方が従業員を雇っている場合には、従業員も重要な利害関係人です。

もちろん、外部に破産をしていることが漏れることによる混乱を避けるために、破産申立の準備は、通常経営陣だけで秘密裏に行うべき作業です。

しかし、従業員の生活になるべく支障をきたさないよう、事業停止後や申立直後に今後の処遇について十分説明できるよう、従業員に対する対応も破産申立の準備と同時並行で検討・準備をする必要が有ります。

また、未払い賃金や未払い退職金が存在する場合には、どのように取り扱うかについても検討・準備することが必要です。

まとめ

このように、事業を営む方が破産をする場合においては、単に資産を売却などして、配当するといった観点だけでなく、個別の事業内容に応じて利害関係人の把握及びその調整をし、社会的混乱を招かないといった視点も大変に重要です。

事業者の方が破産を検討されている場合には、上記の利害関係人に対する影響といた視点も踏まえて、弁護士に相談されることをおすすめします。