ソフトウェアライセンス契約と著作権法の適用について弁護士が解説

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1.ソフトウェアの使用

ライセンサの許可がないとユーザーが行うことができないことを、ソフトウェアの利用と呼びます。

ソフトウェアの利用は、著作権法の21条から28条に記載される行為をいいます。

ソフトウェアの利用以外の行為は、ソフトウェアの使用として、ユーザーは自由に行うことができます。

ユーザーが自由に行うことができるソフトウェアの使用は、下記のようになります。

ユーザーが自由に行えるソフトウェア

  • ソフトウェアを自己のPC等で実行すること
  • 社内ネットワークにソフトウェアをインストールして、社内の特定少数の端末からアクセスしてソフトウェアを使用すること

ソフトウェアの使用は原則として自由ですが、違法な場合もあります。

プログラムを取得した時点で、違法に複製されたプログラムであると知っていたのであれば、著作権侵害とみなされます(著作権法113条2項)。

2.著作権者の許諾を要するソフトウェアの利用について

著作権者の許諾を要するソフトウェアの利用は、下記の様になります。

著作権者の許諾を要するソフトウェアの利用

  1. 複製(21条):ソフトウェアを他の媒体にコピーすること
  2. 公衆送信(23条):インターネットやLANで多数の人にソフトウェアを提供すること
  3. 翻案(27条):元のソフトウェアをベースにした二次創作物を作成すること
  4. 二次的創作物の利用(28条):翻案により作成されたソフトウェアを利用すること

(1)複製

複製は、既存の著作物に依拠し、その創作的な表現部分の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいいます(知財高裁平成28年4月27日)。

具体的には、

・CD-ROM等の記録媒体にソフトウェアをコピーする場合
・CD-ROM等の記録媒体に記録されているソフトウェアをPC等の記憶装置にインストールすること
・コンパイラやアセンブラ等の言語変換ソフトを使用してソースコードをオブジェクトコードに変換すること(元の内容が同じであれば言語変換したものを作成しても「複製」といえます)
・実行中のプログラムのメモリダンプ(ある瞬間にメモリ上に展開されているプログラムやデータを丸ごと写し取ることです)

が挙げられます。

#1:RAM上のプログラムの蓄積

プログラムを実行する際、ハードディスクにプログラムが記録され、RAM上に一時的に蓄積されることがあります。

このような実行中のメモリダンプについて、「RAM上の蓄積物が将来反復して使用される可能性のある形態の再製物といえない」から、複製にはあたらないとされた裁判例があります(東京地裁平成12年5月16日判決)。

#2:情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度での記録(著作権法47条の8)

実行中のメモリダンプ、キャッシュデータの保存等、RAM上のプログラムの蓄積について、情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要な範囲で、コンピュータの記録媒体にソフトウェアを記録することが認められています(著作権法47条の8)。

そのため、RAM上のプログラムの蓄積が「複製」に当たったとしても、著作権法上違法とはなりません。

(2)公衆送信(著作権法23条)

公衆送信は、公衆によって直接受信されることを目的として無線通信または有線電気通信の送信を行うことをいいます(著作権法2条1項7号の2)。

具体的には、

・インターネットを使用して、ソフトウェアを多くの人に提供すること(自動公衆送信。著作権法2条1項9号の4)
・LANで社内の多数の従業員にプログラムを送信すること
・インターネット上のサーバにソフトウェアを記録して、誰でもダウンロードできるようにすること(送信可能化。著作権法2条1項9号の5イ)

が挙げられます。

(3)翻案(著作権法27条)

翻案は、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想または感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいいます(最高裁平成13年6月28日)。

具体的には、

・プログラム言語の逐語的な変換
・プログラムの移植
・新機能の追加
・既存機能の変更

が挙げられます。

(4)二次的著作物の利用(著作権法28条)

二次的著作物の利用は、翻案により作成されたソフトウェアに関する上記の各行為(複製、公衆送信等)をいいます。

二次的著作物の利用も、著作権者の許可が必要となります。

3.著作権者の許諾が不要なソフトウェアの利用について

著作権法は、著作権者の許諾を得なくてもソフトウェアの利用ができる場合を定めています(権利制限規定)。

著作権者の許諾が不要なソフトウェアの利用は、下記の様になります。

著作権者の許諾が不要なソフトウェア

  1. プログラムの著作物の副生物の所有者による複製等(著作権法47条の3)
  2. 電子計算機における著作物の利用に伴う複製(著作権法47条の8)
  3. リバースエンジニアリングに伴う複製

(1)プログラムの著作物の副生物の所有者による複製等(著作権法47条の3)

プログラムの記録媒体を所有している者は、著作権者の許諾なく、一定の複製・翻案ができます。

バックアップやメモリダンプが、著作権者の許諾なく可能となります。

(2)電子計算機における著作物の利用に伴う複製(著作権法47条の8)

情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要な範囲で、コンピュータの記録媒体にソフトウェアを記録することができます。

実行中のメモリダンプ、キャッシュデータの保存等、RAM上のプログラムの蓄積が、著作権者の許諾なく可能となります。

(3)リバースエンジニアリングに伴う複製

ソースコードの調査・解析等を目的としたリバースエンジニアリングの際に、不可避的に生じるプログラムの複製は、著作権侵害にあたらないため、著作権者の許諾は不要と考えられています。