首の後遺障害
首(頸部)には「頸椎」という頭を支えている骨があります。この頸椎は、7つの「椎骨」と呼ばれる骨で構成されています。
また椎骨の中には「脊髄」という脳からの指令を全身に伝達する重要な神経が通っています。頸椎を通る脊髄は「頸髄」といいます。
交通事故によって生じる首の後遺障害は、むちうち・捻挫等の神経症状から頸髄損傷のように胸から下が完全に動かなくなってしまうような非常に重篤な後遺障害まで様々なものがあります。
自賠法施行令に定められている首の後遺障害には、捻挫・むちうちや脊髄損傷の「神経系統の機能障害」と、「脊柱の変形及び運動障害」とがあります。
ここでは、これら3つの症状の後遺障害認定基準と等級認定のポイントについて説明します。症状ごとの詳しい後遺障害等級認定の判断基準や検査方法等については、症状別のページをご覧ください。
1.頸椎捻挫(むちうち)
交通事故による怪我の中で最も代表的なのが首のむちうち(頸椎捻挫)です。
自賠法施行令に定められている後遺障害認定基準において、むちうちは「神経系統の機能又は精神障害」という系列に該当します。
なお、むちうちというのは正式な名称ではなく、医師からの主な診断名としては「頸椎捻挫」「頸部挫傷」「外傷性頸部症候群」などと診断がされます。
首のむちうちの後遺障害認定基準
等級 | 後遺障害 |
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第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
首のむちうちの後遺障害認定のポイント
<局部に頑固な神経症状を残すもの>
<局部に神経症状を残すもの>
12級と14級の違いは、説明可能か、証明可能かの違いになります。
被害者の自覚症状が事故を原因とするものであることが「医学的に証明できる」場合は12級に該当し、自覚症状が事故の態様などから「説明できる」範囲に留まる場合は14級が該当し、それ以外の場合、つまりは医学的に説明することも証明することもできない場合が非該当となります。
なお、医学的に証明できる場合というのは、レントゲンやMRI等の画像所見や、ジャクソンテスト・スパーリングテストの神経学的所見等の他覚的所見をもとに障害が判断できる場合をいいます。
2.脊柱の変形及び運動障害
頸椎は脊柱(背骨)の一部分です。
頚椎の圧迫骨折等により、脊柱に変形障害や運動障害が生じた場合は、この認定基準により後遺障害が認められる場合があります。
脊柱の変形及び運動障害の後遺障害認定基準
等級 | 後遺障害 |
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第6級5号 | 脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの |
第8級2号 | 脊柱に運動障害を残すもの |
第11級7号 | 脊柱に変形を残すもの |
脊柱の変形及び運動障害の後遺障害認定のポイント
<変形障害>
なお、脊椎には横突起や棘突起がついていますが、これらの局部的な欠損や変形は変形障害としては考慮されません。あくまで脊柱自体に変形障害が残ることが必要となります。
<運動障害>
3. 脊髄損傷(頚髄損傷)
脊髄を損傷することを脊髄損傷といいます。
その中でも頸髄を損傷することを頸髄損傷といいます。頸髄は、脊髄の中で最も脳に近い部分に位置しています。このため、頸髄損傷は、脊髄損傷の中でも、重篤な後遺障害が生じる場合があります。
脊髄損傷の後遺障害等級認定基準
等級 | 後遺障害 |
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第1級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
第2級1号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
第3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
第3級3号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
第5級2号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に簡易な労務以外の労務に服することができないもの |
第7級4号 | 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、簡易な労務以外の労務に服することができないもの |
第9級10号 | 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
脊髄損傷は、身体的所見及びMRI、CT画像等によって他覚的に裏付けられる麻痺の範囲と程度に則って後遺障害等級が幅広く定められています。
たとえば、片方の足が麻痺している場合には9級から5級が認められる可能性があり、四肢麻痺が認められる場合は、3級以上である可能性が高いです。
等級が幅広く設定されているということは、何等級が認定されるかで、賠償額に大きな差が出てくるということです。自身の症状に見合った適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、早期に資料収集を開始することが重要となります。