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12級
CRPSについての裁判例【後遺障害12級13号】

事案の概要

幹線道路において、X(原告:39歳男性、調理師)が運転する普通自動車二輪車と、路外から公道上に出てきたY(被告)が運転する普通乗用自動車が出会い頭に衝突した事案。

Xはこれにより、全身打撲・頚椎捻挫・右膝関節血腫・腰椎々間板ヘルニア・右膝挫傷・皮下出血・左手関節挫傷・右膝関節拘縮を負ったため、Yに対して損害賠償請求をした。

右膝等の疼痛、左上肢等のしびれにつき、自賠責保険会社から後遺障害等級14級9号に該当すると判断されていた。

<主な争点>

①公的証明がない基礎収入額
②後遺障害の程度(右膝等の疼痛について)
③過失割合

<主張及び認定>

主張 認定
治療関係費 216万7411円 202万0301円
入院雑費 6万6000円 6万6000円
通院交通費 23万3370円 23万3370円
休業損害 812万5000円 219万9600円
入通院慰謝料 260万0000円 200万0000円
将来治療費 14万5660円 認められない
逸失利益 2746万7211円 1008万3034円
後遺障害慰謝料 830万0000円 420万0000円
過失相殺 ▲5%
損益相殺 ▲382万5124円
弁護士費用 160万0000円
合計 1753万7065円

<判断のポイント>

①公的証明がない基礎収入額

本件では、休業損害額を認定するにあたって、公的な証明書である源泉徴収票がありませんでした。

また、休業損害証明書に記載されていたXの採用日が本件事故の3ヶ月前とされており、それ以前から働いていた旨のXの主張と異なるものであったことから、Y側から、Xの基礎収入の主張は信用できないと反論されていました。

しかし、裁判所は、Xが調理師法による調理師免許を取得していたこと、勤務先からXに対して毎月交付されていた給料支払明細書があることなどから、賃金構造基本統計調査の年齢別平均収入額も考慮したうえ、月額28万2000円の基礎収入を認めました。

なお、休業損害証明書記載の採用日が本件事故の3ヶ月前であったことは、勤務先の意思に基づく作為であったというXの主張に合理性が認められ、勤務先の協力が得られなかったことにXの帰責性は認められないと判断されました。

このように、公的証明がない場合でも、さまざまな事情から基礎収入額を認定することは可能です。

もっとも、この事案ではXが調理師免許を取得していた事情も考慮されており、事案によって認定の仕方は異なると思われます。

基礎収入額が問題となる場合には、どのような仕事に就きどのくらいの収入を得ていたか、なるべく詳しい資料を入手することが大事になります。

② 後遺障害の程度(右膝等の疼痛について)

Xが訴えていた右膝等の疼痛について、裁判所においても、客観的かつ厳格な要件が設定されている自賠法施行令上の後遺障害であるCRPS(複合性局所疼痛症候群)は認められませんでした。

しかしながら、Xが本件事故直後から一貫して強く訴えていた症状であり、日本版CRPS判定指標は満たす旨の専門的知見があることなどを考慮すれば、「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当するとして、後遺障害等級12級13号を認めました。

そもそもCRPSとは、骨折などの外傷や神経損傷の後に疼痛が遷延する症候群のことを言います。

その特徴とされる症状はきわめて多彩であるものの、他覚所見が認められにくいものであり、複数の症状全てに他覚所見を要求する自賠責保険の後遺障害等級認定をクリアするのは厳しいものとなっています。

ところが本件では、厚生労働省の研究班が作成した日本版CRPS判定指標を満たすという資料が出されており、裁判所はこれを基に後遺障害等級12級13号を認定しています。

自賠責保険の後遺障害等級認定が認められなくても、このように裁判で後遺障害が認められ慰謝料の請求が出来る場合もあります。

本件では、Xが事故直後から強く症状を訴えていたという事情も考慮されており、最後まで自分の主張を貫く姿勢も大事であることが分かります。

③過失割合

本件では、Y側から、Xに30%の過失があるとの主張がされていました。

これに対し裁判所は、Yに過失があることを前提に、Xにも、交通状況に応じた速度と方法で運転しなければならない注意義務に反した過失があることは否定できないとして5%の過失相殺を認めました。

擦過痕等から、車両の徐行の有無を認定し、過失を認めたようです。

まとめ

本件のように、Y側から休業損害額で反論があり、自賠責保険の等級認定が認められていないというような場合、何も準備がされていなければ、本来支払われるべき賠償額より相当低い額になるケースもあります。本件でも、示談交渉の時点での賠償額は、裁判所の認定額とは大きく異なっていたでしょう。

事案によって対応すべき点は異なり、1人で判断するのはとても困難です。

また適切な対応をすることによって賠償額が大きく変わることもあります。

交通事故で困ったことがありましたら、1人で抱え込まず弁護士にご相談ください。

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