裁判例

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フランチャイズ
ロイヤリティ等の不払請求の可否(平成22年5月27日大阪地裁判決)

事案の概要

弁当宅配事業を中心とするフランチャイズ本部のXは、加盟店Yと営業地域を阪奈道路以南の奈良市全域とするフランチャイズ契約を締結した。

契約条項には、YがXに加盟金及び保証金を支払、毎月総売上高の3%のロイヤリティを支払うこと、YはXの許可なく契約期間中及び契約終了後5年間、同種の事業を行ってはならないことが定められていた。

Yは平成15年9月に営業を開始したが、平成16年5月にはロイヤリティ及び商品等の代金の支払を怠り、その後も未払金額が増加していった。

XとYは、平成18年に2度にわたり、未払金の分割支払とする合意をしたが、Yは、分割返済金、その後のロイヤリティ、商品等の代金等の支払を怠るようになった。XはYの債務不履行を理由にフランチャイズ契約を解除した。

しかし、Yは解除後も営業を続けた。

そこで、Xは、Yに対して、未払いのロイヤリティ等の支払を求めたほか、契約終了後に同種の事業を行ってはいけないという競業禁止特約に基づいて営業の差止めを求めた。

これに対して、Yは、Xが請求しているYの債務は、Xの情報提供義務等の債務不履行が原因で発生したものであるから、XのYに対するロイヤリティ等の支払請求は信義則に反し、権利濫用として許されないと主張して、競業禁止特約の効力、競業禁止違反も争った。

これに対して、Yは、Xが誤った売上予測をYに示し、適切な経営指導がされなかったとして、Xに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をした。

<判決の概要>

(1)Xの情報提供義務、経営指導義務違反があったかについて
フランチャイズ契約締結に向けた交渉の過程において売上予測を提供する場合には、本部は、加盟店に対し、客観的かつ正確な情報を提供すべき信義則上の保護義務を負っているものというべきである。

X代表者の説明内容は、必ず三五、六万円の収入が得られると誤認させるものであったとは認められず、Yが、1か月35.6万円の収入を得ることができていないことはYの経営の仕方に由来するものである。

Xのパンフレットは、実際は行ってもいない売上予測が可能であるかのように認識される可能性を否定できない記載があった。

しかし、Yは、Xに対し、収支予測の調査を依頼したことはないのであるから、本件パンフレットの上記記載がYの本件FC契約を締結する意思決定に何らかの影響を与えたものということはできず、本件において、この記載の存在がXのYに対する情報提供義務違反に当たるということはできない。

Yは、実際上、本件パンフレットに記載された収益シミュレーションどおりの収益を実現することは困難である旨主張する。

しかし、Yは、収益シミュレーションどおりの収益が上がると考えて、本件FC契約を締結したものではない。

したがって、契約締結にあたり、Xに情報提供義務違反はない。

また、XはYに対して、一定の経営指導を行っていたことが認められ、経営指導義務違反もない。

(2)ロイヤリティ等の請求が信義則違反に当たるかについて
Yの信義則違反の主張は、Xの情報提供義務違反、経営指導義務違反の債務不履行を理由としている。

しかし、Xの債務不履行の事実は認められないのであるから、XのYに対するロイヤリティ等の請求が信義則に反するとか権利濫用に当たるということはできない。

(3)競業禁止特約の効力
競業禁止特約は、その制限の程度いかんによっては営業の自由を不当に制限するものとして公序良俗に反して無効になる場合がある。

本件契約における競業禁止特約は、期間、業種の限定があり、本件請求においては同一店舗及び奈良県内と区域が限定されており、違約金音定前もないことを併せ考慮すると、加盟店の営業の自由を不当に制限するものとはいえず、公序良俗に反するものではない。

まとめ

フランチャイズの加盟店の経営が立ち行かなくなったとき、本部はせめて今までのロイヤリティ等を請求したくなるでしょう。

しかし、本部と加盟店は二人三脚で協力し合って経営をしている面もあるため、常にそのような請求をできるとは限りません。

実際、加盟店に対するロイヤリティ等の未払金請求が権利濫用、信義則違反として認められなかったケースもあり(京都地裁平成5年3月30日判決)、本部としては、不採算店舗に不用意にロイヤリティ等の請求をかけることはできません。

本判決では、YがXの情報提供義務違反や指導援助義務違反による債務不履行を主張して、Xのロイヤリティ等の請求、フランチャイズ契約の解除等が信義則違反、権利濫用であると主張しました。

しかし、本判決は、Xの説明やパンフレットの説明の記載内容が実際と異なる点があることを認めながら、Xが実際に誤認をしていないことから、Xに情報提供義務違反等はなかったとしています。

YがXの債務不履行を理由に信義則違反、権利濫用を主張していたのですから、Xの債務不履行が認められない以上、信義則違反、権利濫用もないとされたのは当然といえます。

ただ、本判決は、Xに至らない点もあったものの、たまたまYがXの支援をあてにしていなかったからロイヤリティ等の請求が認められるという結論になった事例です。

Xの行動次第では、ロイヤリティ等の請求が認められないという可能性もありました。

加盟店は、せっかく加盟店を多く持っているのに肝心のロイヤリティが得られないといった事態に陥らないよう、日頃から法的に適切な管理を行っていく必要があります。

加盟店管理のため、法的にどのようなポイントが重要なのかは、フランチャイズの業態、規模にもよりますので、専門家である弁護士にご相談ください。

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