裁判例

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フランチャイズ
人材の派遣と偽装請負(平成22年5月28日東京地裁判決)

事案の概要

Yは、保険金の支払いや損害額の調査・評価等と人材派遣を業とする会社である。

Zは、特定の人物を相手とする保険の引き受けを行う事業を営む団体である。

Xは、Yとの間で、発注者をY,受注者をXとし、Zの業務(共済事業)の管理・監督・監修を行うこと(スーパーバイズ)を発注業務とする「業務発注依頼書」を締結した。

Xの法令順守の姿勢に嫌気がさしたZは、Xを職場から排除しようとYに強く迫り、YはXに対して業務発注を中止した。

そこで、XはYに対して、Yの従業員(労働者)であることを前提に、業務発注の中止後の給与の支払いを求めて提訴した。

<判決の概要>

XとYとの間が労働契約か請負契約かは、業務遂行の実態に即して判断されるべきものであり、業務遂行に当たっては就労先の指揮命令に従い、出退勤の管理もされていたという本件の事実関係においては労働契約であったことが明らかである。

労働契約か請負契約かの判断をするに当たり契約関係文書の文言をいたずらに重視すべきものではなく、本件においても業務発注依頼者に「業務発注」、「報酬」等請負契約に用いられる用語が記載されていることを重視すべき事情の存在を認めるに足りる証拠はない。

XとYとの契約関係は期間の定めのない労働契約であって、Yに常時雇用される労働者として、YからZに派遣されていたものと判断する。

Yは、一般労働者派遣事業の許可を得ず、特定労働者派遣事業の届出も行わずに、常時雇用される労働者について労働者派遣事業を行うという罰則の対象となる違法行為を犯していたものと認められる。

まとめ

本件は、形式的には(契約書の名目としては)、他社の業務の管理・監督・監修を行わせるという業務委託契約書を交わしていたものの、業務の実態から、業務委託ではなく労働契約であると判断し、労働者の提供に当たる派遣業を行っていると判断した裁判例です。

フランチャイズ契約においても、加盟店の業務の経営指導、技術指導の名目で本部から加盟店に人材の派遣が行われることが定められ、実際に本部の従業員が加盟店に派遣されている場合でも、派遣されている従業員の業務の実態が、加盟店の指揮命令のもとに加盟店の業務に従事するような場合には、派遣法で定める労働者の派遣に当たると判断される可能性があります。

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