裁判例
Precedent
事案の概要
Yはスポーツクラブを運営する会社である、Xは、Yの従業員として6つの店舗を統括するエリアマネージャーの地位にあった。
Yは、従業員Xを「管理監督者」として扱っていたため、残業代等の時間外手当を支払っていなかったため、Xは、Yを退職した後、時価がいて宛の支払いを求めて訴訟を提起した。
<判決の概要>
管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものを言い、名称にとらわれることなく勤務の実態に即して判断すべきである。
具体的には、①職務内容が少なくとも、ある部門全体の統括的な立場にあること、②部下に対する労務管理等の決定権等につき、一定の裁量権を有しており、部下に対する人事考課、機密事項に接していること、③管理職手当等特別手当が支給され、待遇において時間外手当が支給されないことを十分に補っていること、④自己の出退勤について自ら決定し得る権限があること、以上の要件を充たすことを要する。
管理監督者は、雇用主と一体となってその権限の一部を行使するために相当程度の裁量権が与えられることからすると、人事考課に関する決定権限は最終決定権限が認められることまでは必要ではない。
Xは、自己の勤務時間について、人事部に勤務状況表を提出するために部下の承認を受ける以外、誰からも管理を受けておらず、遅刻、早退、欠勤によって賃金が控除されたことはないこと等からすると、出勤時間が拘束されていたとはいえない。
Xは管理監督者に該当する。
まとめ
本件は、スポーツクラブの複数店舗の管理を任せられていたエリアマネージャーが「管理監督者」に当たるかどうかについての判断が下された裁判例です。
管理監督者に当たる従業員に対しては労働時間に関する規制がなく、時間外手当等を支払う必要性がなくなります。
本裁判例では、管理監督者に当たるかどうかの一般的な基準のうち、管理監督者性を肯定するための一要素である「人事考課に関する決定権限があること」という基準について、最終的な決定権限までは要しないとしています。
某ファストフード店店長の管理監督者性が争われた裁判例等、管理監督者性が否定されるケースが多い中、本件は管理監督者性が認められた珍しいケースです。