解決事例
Solution
後遺障害認定申請により、後遺障害等級3級3号の認定を受けた事例(80代 女性)
認定等級と内容
3級3号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
事例の概要と解決に至るまでの流れ
本件では、被害者が横断歩道を横断中に走行してきた車両にはねられ、頭部外傷(脳挫傷)、橈骨遠位部骨折などの怪我を負いました。
被害者のご家族は、被害者が高齢であることから、事故後の相手保険会社との対応に負担がかかることや、後遺症が残ることを心配し、事故から1か月のタイミングで当事務所にご相談にみえました。
当事務所の弁護士は、まずは症状の経過を観察しながら治療に専念してもらいつつ、後遺症が残った場合に備え、ご家族の協力をえて資料の収集を進めました。
被害者は一年以上に及ぶ入通院を継続しましたが、以前に覚えていたことを思い出せない、新しいことを覚えられない、等の症状が残りました。
当事務所にて残存する症状を裏付ける資料を収集し、自賠責保険に後遺障害認定申請を行った結果、高次脳機能障害により「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」に該当するとして、3級3号の認定を受けました。
そして、認定された結果に応じた賠償を得ることで解決へと至りました。
解決のポイント
本件のポイントとなったのは、後遺障害認定申請にあたって、いかにして高次脳機能障害を証明するか、という点です。
高次脳機能障害は、頭を強く打ったり、脳出血を起こしたことにより脳の一部が損傷を受け、それによって脳の働きに支障がおきることにより生じます。
高次脳機能障害が後遺障害として認定されるにあたって重要な要素は、「画像所見」「意識障害」「症状」の3点がありますが、ここでは「症状」についてご紹介します。
高次脳機能障害の症状は、次のようなものがあります。
- 「約束してもすぐ忘れてしまう」「新しいことを覚えられない」などの記憶障害
- 「同時に2つ以上のことができない」「好きなことに興味を示さなくなった」などの注意障害
- 「物事を計画的に遂行することができない」「複雑な作業になると途中でやめてしまう」などの遂行機能障害
- 「すぐに怒ったり大きな声を出す」「場違いな言動をしてしまう」などの社会的行動障害
これらは、本人に自覚症状がないうえに、必ずこの症状が現れる、というはっきりとしたものがありません。
重度でない場合は、気がつかずに発見が遅くなってしまう、もしくはそのまま見過ごされてしまうというケースも少なくありません。
しかしながら、後遺障害認定申請で高次機能障害として適切な等級認定を受けるためには、早期に異変を発見し、適切な資料収集を行い、申請に備えておくことが求められます。
特に症状については、事故前にはできたけれども今はできないという行動について、ご家族の方に記録をつけてもらう必要があります。
被害者の生活状況によっては、症状に気がついてくれる人がいない、記録として残してくれる人がいない、などの事情から高次脳機能障害として等級の認定を受けることが困難になってしまう場合もあります。
そういった事態を避けるためにも、事故前と事故後で被害者の生活状況や振る舞いで変わったところがないか、ご家族や周囲の方がしっかりと注意をはらっておく必要があります。
そして、発見が難しいにもかかわらず、早期に発見し、早期に対策をする必要があるところに、高次脳機能障害で適切な等級の認定を受けることの難しさがあります。
本件の場合は、ご家族の方の対応がとても早かったことから、入念に資料の収集を行うことができました。
ご家族の方は約一年にわたって気がついたことを継続的に記録に残しておられました。
結果、これが全てというわけではありませんが、障害の程度が一人ではほとんど生活を維持できない程であることをしっかりと裏付けることができました。
交通事故によりその人生来のものが永遠に失われてしまう、それはとても哀しいことです。
私たち弁護士は、高次脳機能障害の被害者やそのご家族の方と接するたびに、交通事故の恐ろしさ、失ってしまったものを取り戻せないもどかしさを痛感しています。
そして、事故後の生活を乗り越えるべく支えあうご家族の絆の尊さを目の当たりにします。
私たちはいつもその姿に力をもらいながら、皆様がより一歩でも平穏な生活に近づくことができるよう最善を尽くしています。
頭部外傷後、高次脳機能障害が生じないか不安な方やそのご家族の方、高次能機能障害で後遺障害認定申請をお考えの方、まずは一度当事務所までご相談ください。