フランチャイザー(本部)の事業譲渡

1.本部が事業譲渡をする場合の規制

本部が事業譲渡を行う場合には、加盟店が事業譲渡を行う場合とは異なり、フランチャイズ契約の相手である加盟店の承諾は必要ないとされているケースが多いです。

加盟店の事業譲渡には本部の承諾が必要であり、反対に本部の事業譲渡には加盟店の承諾が必要ではないというアンバランスは、本部と加盟店とのパワーバランスの現れともいえます。

残念ながら加盟店が本部の事業譲渡を防ぐ手段はなかなかないのが現状です。

もっとも、フランチャイズの対象となっている事業を譲渡する場合、買受人は、フランチャイズ・システムを利用して事業価値を高めることを目的として事業を買い取ることが通常のケースでしょうから、事業譲渡によって加盟店が大きな不利益が生じることは多くはないでしょう。

2.事業譲渡の対象とならなかったフランチャイズ契約について

本部の判断で事業譲渡の対象とならなかった場合や、(稀な例ではありますが)契約上本部の事業譲渡について加盟店の同意が必要であるとされており、加盟店が本部の事業譲渡に同意をしなかった場合には、本部と加盟店のフランチャイズ契約によって発生する債権債務関係(ノウハウの提供義務、ロイヤリティの支払い義務等)は引き続き本部と加盟店との間に残ることになります。

※事業譲渡は、譲渡する権利義務関係の取捨選択ができるため、ある加盟店との権利義務関係は譲渡する、別の加盟店との権利関係は譲渡しない、といったことができます。

しかし、事業を譲渡した本部は、譲り渡した相手に対して競業避止義務を負うのが通常ですから、譲り渡した事業と同種の事業は行えなくなります。

したがって、結局のところ、事業を譲渡した本部は、加盟店に対して、フランチャイズ契約に定められた義務を提供できなくなります。

この場合、本部は、加盟店に対して債務を履行できないわけですから、加盟店は、本部に対して、債務不履行による損害賠償を請求することや、フランチャイズ契約を解除することができると考えられます。

他方、加盟店と事業を譲り受けた会社との間では契約関係はありませんから、事業を譲り受けた会社に対して、本部との契約で定められた義務の履行請求をすることは原則として難しいでしょう。

もっとも、事業を譲り受けた会社が、本部の商号等を継続して使用しているような場合には、本部との契約で定められた義務の履行を請求することができる場合があります。