休業損害とはどういったものなの?加害者が支払ってくれない場合の対処法
1.休業損害とは?
交通事故に遭われてお怪我を負った場合、その状態によってはお仕事をお休みしなければならないことがあります。
また、お仕事ができない状態ではなくとも、病院への通院のために休暇をとったり、遅刻・早退をしたりした結果、収入が減少してしまうこともあります。
この場合、事故による休業が必要かつ相当といえる範囲では、加害者へ休業損害の賠償を請求することができます。
(1)休業損害が認められる期間
よくお電話での相談等で「休業損害はいつまでの期間なら請求できますか」と訊かれることがあります。
しかし、この質問に端的に応えることは、実はものすごく難しいのです。
なぜなら、上でも書いたとおり休業損害は、「当該事故による休業が必要かつ相当といえる範囲」で認められることになるので、事故の内容や怪我の重さ、お仕事の業種などによって様々な結果が生じるからです。
ここが、通院期間である程度基準が決まっている慰謝料と異なるところです。
例えば、足を骨折したような場合、その被害者が、私のようなデスクワークを主な業務としているケースと、工事現場で肉体労働をしているようなケースでは、当然「休業が必要」といえるかに差が出てきます。
一律に「頚椎捻挫なら1ヶ月」とか、「骨折なら3ヶ月」などの基準があるわけではないのです。
単純に、「ちょっとつらいから休んじゃおうかな」という程度の理由では、後々補償されないのでは、などということもあり得なくはありません。
このあたりは、怪我の状態と業務内容をきちんと説明する必要がありますので、弁護士に相談していただいた方がよいでしょう。
(2)休業損害を今すぐほしい場合は、支払ってもらえるのか
収入は、生活をするうえでの糧ですから、これが休業により止まれば、たちまち生活が立ち行かなくなってしまう場合も少なくありません。
この点、加害者が任意保険に加入していれば、多くの場合、「休業損害証明書」という書式を勤務先に作成してもらった上で提出することで、休業損害の内払いを受けることができます。
しかし、この内払いも、延々と支払い続けてもらえるわけではありません。
保険会社としては、「そろそろ仕事に復帰できるのではないか?」「休まなくても何とかなるのではないか」と疑問に思い始めたら、内払いをストップするという手段に出てきます。
これは非常に困りますが、あいにく内払いを強制することは困難であるのが現状です。
法律上は、示談が成立した時や判決が確定した時に、加害者側の支払義務が確定するため、それよりも前に支払いを受けることは、加害者側の協力がないとかなり難しいのです。
そうすると、被害者としては、治療も継続しながら、生活も立て直さなければならないという、大変な苦境に立たされてしまうことになります。
2.加害者が休業損害を支払わない場合の対処法
加害者が休業損害を支払わないというような場合に、被害者側が考えうる手段として、労災保険の休業補償給付と、(国民健康保険を除く)健康保険の傷病手当があります。
これらはどちらも、保険からの給付という形で支給されますので、一定の手続や要件は必要になりますが、要件を備えている限りは安定的な支給が望めます。
(1)労災保険の場合
交通事故が業務中または勤務中に起こった場合には、労災保険の適用があります。
この場合、所轄の労働基準監督署において労働災害(通勤災害)の申請をしたうえで、休業補償給付の支給請求書を提出することで、労災保険から休業補償の支給を受けることができます。
もっとも注意が必要なのは、休業給付を受けることができるのは、療養のために労働することができない日の4日目からであり、支給額は原則として、給付基礎日額の6割となります。
また、別途手続きをとることによって、休業特別支給金として給付基礎日額の2割の支給も受けることができます。
厳密にはいろいろと細かい計算がありますが、欠勤4日目以後には概ね給与の平均日額の80%を受給することができると捉えていればよいでしょう。
(2)健康保険の場合
労災保険が適用されない交通事故については、健康保険の利用が可能です。
そのうち、国民健康保険以外では、傷病手当という給付を受けることが可能です。
この場合、自身の加入している健康保険組合や社会保険事務所に対し、第三者行為による傷病届という書式を提出し、医師の証明書等の所定の書式を提出した上で申請することで、傷病手当金の支給を受けることができます。
もっとも、ここで注意が必要なのは、傷病手当を受けることができるのは、連続して3日以上休業したあとからということです。4日目以後という意味では労災保険と同じですが、傷病手当の
場合には、前3日が連続している必要があります。したがって、飛び石で休んでいる場合には、何日休もうとも要件を充足しないため傷病手当を受けられないことになります。
また、受給を受けられる金額は、労災同様、標準報酬日額の6割となっています。
上記のふたつの制度は、それぞれここに記載した以外の細々とした支給要件もありますが、当面の生活を支える上ではとても重要なものです。
保険会社が、休業補償を打ち切り、しかも治療費も払わなくなった等のケースでは、上記制度の利用も検討に値すると思います。
3.上記の他にできること
このように、各種制度を利用することもできますが、被害者側が使える手段として、裁判所に対する仮払い仮処分申立というものもあります。
これは、裁判所に対して、損害状況等を説明することによって、加害者からの示談金の前払いを強制的に実現する手段です。
仮の手続ということもあり、訴訟に比べて相当短期間に結果が出ますが、準備はかなり大変ですので、ご自身で手続することは困難だと思われます。
また、支払われる金額も、事案によってピンきりだったりはするので、過度な期待はできませんが、被害者側の最終手段として有効な方策といえます。
まとめ
以上のように、示談前に休業を補填するためには様々な制度や手段があります。
このほかにも、ご自身で各種保険に加入されていたり、預貯金を用意しておくことも有用です。
生活が立ち行かずに、目先のお金欲しさに治療も中断して時期尚早に示談をしてしまったという相談も少なからずありますが、示談してしまってからではいかに弁護士が介入したとしても、覆せません。
適切適当な賠償を受けるためには、被害者側に資金体力があることが重要となる事案は、皆さんが思っている以上に多いのです。
「この週末に○万円ないと困る!」
「明日には家賃の支払期限が到来してしまう!」
などの火急の必要性には、いかに弁護士が尽力しても、救済が困難な場合が少なくありません。
お仕事ができず、収入が途絶えてしまっているような方は、切羽詰る前に、転ばぬ先の杖として、弁護士へのご相談をお勧めいたします。
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